庭先案内 1 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
作品は一話目の幻燈機等、同じ人物が登場する作品もありますが、基本一話完結で描かれています。
何度か登場する人物
幻燈機じいさん
バイクに乗りアジアの各地を旅している老人
不思議な幻燈機で幻の海を見せる事が出来る。
おねえちゃん
大学の美術科に通う女性
沈着冷静、曼荼羅好き
いもうと
おねえちゃんの妹
高校生、ピュア、よく食べる
各話あらすじ
幻燈機
山奥の村にバイクに乗った老人がやってくる。
村の大人たちは老人の事を知っているようで、彼を歓迎する。
夜、小川の近くに村人が集まると、老人は幻燈機を取り出した。
老人が機械を操作すると、目の前に幻の海が現れた。
夏休みの時計
夏休みも終盤に差し掛かったある日、両親は旅行の行き先の話で盛り上がっている。
少女は二人の話で出てきた、昔行ったという沖縄の事を思い出そうと、両親が出かけた静かな家で一人昼寝を始める。
目覚めると、死んだはずの祖母が彼女を看病してくれていた。
メッセージ
目覚ましで飛び起きた妹は、姉の部屋に駆け込んだ。
最近彼女は、書いた覚えのないメッセージに悩んでいた。
今日はティッシュの箱に「びわ」と書き込まれている。
不安になった彼女は、姉に心理学的にどうなのか、大学で聞いて来て欲しいと頼んだ。
大学から帰った姉は、妹から距離を取りながら、彼女の行動について性的欲求の昂りと話した。
アングラ
引っ越しの準備をしている少女。
彼女は父の部屋の座椅子の下に、ポッカリと穴が開いているのを見つける。
なんで穴がと驚く彼女は床に吸い込まれ、気が付くとスナックの様な場所にいた。
幻燈機2
旅を続ける老人は、川が干上がってしまった村を訪れる。
彼は川が干上がった理由を探る為、村の少年と共に上流を目指した。
虹の泉温泉峡
田舎のさびれた温泉町だった町は、一年程前からお湯につかると、髪が七色に変化する不思議の湯としてにぎわっていた。
少女は変わる理由を探して、温泉を調べに来た男と町を巡る。
It’sa small workd
眠りから覚めた少女は、見知らぬ場所にいた。
玩具の様な家具の並ぶ部屋、そこで出会った人たちに案内されているうち、彼女は飼い犬の「エダマメ」と出会う。
誰もいない海
失恋のショックから立ち直る為、姉と一緒に誰もいない秋の海に来た妹。
くらげが打ち上げられた浜辺で、そのくらげに怯えていると、座っていた姉の下から海の家が現れた。
遠方より来る
普段はアメリカで暮らしている少女は、父に連れられ日本の祖父母の家を訪れた。
町を案内され、コンビニの中で暖簾をくぐると、そこは何故かエレベータの中、そして扉が開いた先には一軒の駄菓子屋があった。
店主らしき老婆に手招きされ、少女は店に入る。
その値段の安さに彼女は思わず叫んだ。
「どうしたってんでえ、このねだんは!!」
旗の向こう
東京の下町、細工師の男は最近、目に違和感を覚えていた。
父親は老眼だと言うが、彼には過去の自分の姿が見えていた。
感想
ノスタルジックな思い出の様な作品です。
もう会う事が出来ない人、場所などが須藤さんのほんわかしたタッチで描かれます。
幽霊や怪異といっても怖くはなく、不思議というのがピッタリの世界観です。
上に書いた幻燈機の老人と、大学生と高校生の姉妹は今後も度々登場します。
老人の話は少し切ない話が多いです。
逆に姉妹の話は、純粋な妹とその反応を楽しむ姉という感じのコメディ色の強い作品となっています。
最後にこの巻で好きなセリフ
「失恋の痛みは秋の高波にほかしたら治んねん。ほれ、ほかしてき」
まとめ
須藤さんの描く人物は、出て来る人々(人以外も)が全て可愛らしく、読んでいると知らない間に笑みを浮かべてしまいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。