ふしぎの国のバード 6 ビームコミックス
作:佐々大河
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
実在したイギリス人女流旅行家、イザベラ・バードの旅の様子を描いた冒険旅行記、第6弾。
第25話 院内 あらすじ
自分とマリーズの契約についてバードに話したイトは、その事が気になり眠れぬ夜を過ごしていた。
次の日イトに今日の日程について話すバードは、いつもと変わらず溌剌としていた。
彼女の態度に戸惑いを覚えながら、雨の中、羽州街道を進む。
そんな中、イトは寝不足から足を滑らせ、腕を負傷してしまう。
バードに治療を受けながら、バードは自身の想いを語った。
イトの考えは分かった、だから秋田についたらもう一度話し合いましょうと彼女は言う。
続けて、どうせ秋田までは一緒に行くのだし、それまでは楽しく旅をしましょうと話した。
イトの怪我で行程に遅れが出たバードは、中間地点の院内で宿を取る事にした。
そこで膝行車と呼ばれる車椅子に乗る男と出会う。
男はバードの問いに英語で答えた。
泊まる宿が同じだったので、そこで話を聞くと、彼は小林と名乗り西洋医で先ほどは膝行車の使い方を、脚気の患者に教えていたそうだ。
宿の食事は麦飯だった。
麦飯に嫌悪を示すイトに、小林はこの町では脚気が流行っているから研究の為、麦飯を食べる事でどうなるか協力してもらっていると話した。
脚気が流行っていると聞いて、イトはバードに出立を促す。
しかし、脚気は西洋では存在せず、どんなものなのか分からない。
イトは伝染病だというが、彼も横浜の西洋医に話を聞いただけらしい。
そこでバードは、小林に説明を求めた。
彼の説明では、西洋には脚気が無い為、西洋医学では原因は分からないと話した。
続けてバードの問いに答え、日本の治療法、漢方についても説明する。
それは麦飯を食べる事、小林は大都市だけでなく、地方でも脚気が流行り出した時期と、白米を地方でも食べる様になった時期が同時である事に注目し、町の人に協力してもらって、麦飯を食べることをお願いしていたようだ。
あらすじ2
イトは西洋医が漢方の知識を持っている事に、疑問を投げかける。
その答えは彼の部屋で聞けた。
彼は古びたメスを取り出し語る。
元々小林は、漢方医の弟子だった。
彼の師匠は西洋医学を忌み嫌っていた。
それが高じて、弟子たちを引き連れ西洋医の下に治療法を見せろと押しかけた。
そこで見た外科手術の素晴らしさに感銘を受け、師匠は弟子たちを破門し、自身は西洋医学に転向した。
小林も同じく西洋医学の素晴らしさを感じ、それを学んだが脚気等の西洋に無い病気に対処する為、日本独自の医学も研究してきたのだという。
小林は西洋の文化を受け入れつつ、この国独自の知識も組み込むことが、真の近代化だと考えているとバードに語った。
バードは小林の考えに感動し、彼と意気投合。
この国独自の病気等について質問を重ねた。
イトは楽しそうなバードの様子に、苛立ちを覚え部屋を後にする。
イトが縁側で煙管をふかしていると、二人の会話が聞こえてくる。
会話の流れで、バードはどれだけイトが自分の旅の助けになっているかを語った。
「私にとっては、イトに出会えたことが、この旅で一番の幸運です」
その言葉は縁側のイトにもしっかり届いていた。
感想
脚気については、現在はビタミン欠乏症だと判明していますが、当時は原因が分からず、恐れられていた病気だったようです。
江戸時代には江戸等の大都市でしかなかった病気ですが、これは江戸では白米食が一般的だった事が原因です。
地方から江戸に出てきた者にとって、白米は非常に美味だったのでしょう。
しかし、当時の食事は漬物やみそ汁等で、後はご飯で腹を満たす事が主流だったようでビタミンが不足しがちでした。
また地方は玄米や麦飯が主流だった為、ビタミンが不足する事が無かったようです。
さらに西洋で脚気が無いのは、パンが主食だった事が主な理由です。
小林のような人たちの地道な研究が、少しずつ世界を進歩させてきたのだと感じます。
まとめ
今回は医師小林の話の他、火事、紙漉き、亡くなった人を送る際の作法等について描かれました。
特に火事については、木造建築が主流の日本では、燃えるのが当たり前のような感覚だった様に感じました。
火災以外にも地震や台風など、現在も被害をもたらす自然現象の中で、壊れたら再度建てればいいという考え方が生まれたのかもと、考えてしまいました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。