夜光雲のサリッサ 1 リュウコミックススペシャル
原作:松田未来
作画:※Kome
出版社:徳間書店
天翔体と呼ばれる高高度に生息する生物と戦う、特殊な才能を持った少女の物語。
人々を守るため自身も忌み嫌う能力、存在を消せる力を使い高校生の隠忍は、パートナーのダンクと共に極超音速で空を駆けます。
あらすじ
高校生の隠忍は特異な才能を持っていた。
幼い頃から、両親でさえ彼女の存在を忘れる事があった。
それは成長に伴い力を増し、今では誰も彼女の存在に気付かないレベルにまでなっていた。
力が強くなるに連れ髪は白くなり、忍にはそれが自分がこの世界に必要とされていない事の証に思えた。
ある日、彼女は黒服の集団に拉致される。
どこかに向かうティルトローター機の中で、最初に声を掛けてきた女性から、自分たちが国家の枠組みを超えた組織で、政府と内閣の正式な書類と、判を押された親権放棄の同意書を提示された。
親からも見えなくなったと絶望に打ちひしがれる忍は、されるがままに与圧服を着せられ戦闘機に乗せられた。
同乗している戦闘機の、パイロットの声がヘルメットに響く。
彼は一度逃げた忍を見つけたのは自分で、これから成層圏の上まで彼女を連れて行くと話した。
忍は声の主には、自分の姿が見えていたのだと驚きを感じる。
危険だが自分を信じて欲しい、貴女の安全を最優先に万全を尽くすと声は告げた。
その事で忍はもしかして自分に気を遣っていると気付く。
離陸許可が下り、それを受けてパイロットはスロットルレバーを押し込んだ。
エンジンが唸りを上げ機体が急速に加速する。
その後機体は、ほぼ垂直に加速上昇を続ける。
体にかかるGに忍の体が悲鳴を上げ彼女は意識を失った。
次に目覚めた時、機体は高度三万八千メートルを飛んでいた。
機体上空に雲が光っている。
パイロットは夜光雲(ノクティルセント)だと忍に教え、この惑星で一番高い雲だと続けた。
青く光る雲を見上げ忍がキレイと感動していると、パイロットはあの雲の向こうから奴らは来ると告げた。
パイロットは機体を加速させると、忍には伏木二尉の指示を守ってと告げた。
忍を連れてきた女性、伏木二尉は席に座って私はいないと念じ続けて欲しいと言った。
自分が居なくなる事が何の役に立つのかと声を上げる忍にパイロットは言う。
貴女の「才能」が人を救うんです。
彼は続ける。
下には乗客三百人を乗せた旅客機が飛んでいる。
自分の任務は奴が旅客機に接触するのを防ぐ事。
その為には貴女が必要なんです。
忍は今まで自分はいらないと思っていた。
そんな自分が初めて誰かに必要とされた。
「…やってみます。」
パイロットはありがとうと返した。
機体は天翔体をロックしたが、向こうがこちらを認識した状態ではミサイルは躱されてしまう。
私はここに居ない。
そう念じた忍の能力は機体を包み込み、天翔体の感覚器から完全に見えなくなった。
それを確認したパイロットは天翔体の上空に回り込みミサイルを発射。
天翔体が気付いた時にはミサイルは間近に迫り天翔体は炎に包まれた。
作戦は成功し旅客機も緊急着陸した事をパイロットは告げた。
「貴女があの人達を助けたんですよ!」
自分が人を助けた事に忍は自分がそんな事が出来るなんてと驚きを感じる。
その後、地上に下りた忍はパイロットに顔を見せて欲しいと頼んだ。
自分は今まで世界中から「お前はいらない」と言われた気がしていた。
だが、パイロットは忍を見つけ守ってくれた。
彼に忍は救われた気がしていた。
必要とされ自分はここに居ていいんだと、生まれて初めてそう思えた。
顔を見てちゃんとお礼が言いたいと言う忍に、禁じられているのですがとパイロットはヘルメット脱ぎ、顔を見せた。
彼に顔は人のそれでは無かった。
感想
忍の能力は透明化では無く、相手の意識に作用し存在の認識を消す事です。
分かりやすく説明するなら、ドラえもんの石ころ帽子に近い感じだと思います。(石ころ帽子:殆どの人は道端の石に注目しない、つまりその人にとっては石は存在していないという現象を利用した秘密道具)
「才能(インゲニウム)」と呼ばれる能力を持った者は、忍の他にも存在し、千里眼や未来予知、空間転移や発火能力など様々です。
中でも忍のパートナー、パイロットのダンクは特殊で、彼は人から生まれましたが人からかけ離れた姿をしています。
その外殻は九ミリ弾を弾き、爪は強化ガラスを切り裂き、腕力は車を持ち上げられる程です。
彼もまた、人として誰かに必要とされる事はないと思い生きてきました。
その経緯を知ると、忍とダンクの出会いがより深い物に感じられます。
まとめ
天翔体の感覚器官は非常に高性能で、従来のステルス機などは意味を成しません。
そんな中で、忍の能力はメタルギアに置けるステルス迷彩並みの力を発揮します。
この作品は一度ハマれば、何度も読み返したくなる物だと思います。
設定が練り込まれ、巻末の設定資料を読まないと理解できない部分も多い作品ですが、空戦物が好きなら面白いと思う方も多いと思います。
この作品はCOMICリュウでも一部閲覧可能です。
原作者の松田未来さんのTwitterはこちら。
漫画担当の※KomeさんのTwitterはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。