テンジュの国 1 KCデラックス
著:泉一聞
出版社:講談社
十八世紀、チベット。
山間の村で医師見習いと暮らす少年、カン・シバの家に客人として行商人モシ・バオルが訪れます。
彼は嫁入りする娘、モシ・ラティを連れていました。
あらすじ
山間の村で暮らすカン・シバは、医師である父デレク・カンドの下で医師見習いとして暮らしていた。
薬草集めも終わり、村に戻ったカン・シバは村人の一人テンジンが疲労で調子が悪そうなので、体調について尋ね、薬を処方する事にする。
カン・シバとテンジンが話していると、行商人の一行が村人に何か尋ねている。
その行商人の一人は花嫁を背負っていた。
テンジンとカン・シバの結婚の話が出るが、見習いの自分には結婚はまだ先の話に思えた。
テンジンに薬を持っていく事を告げ、カン・シバは家に帰った。
家には先ほどの行商人たちが客として訪れていた。
行商人が連れていた花嫁は、彼の娘で嫁ぎ先に連れて行く途中だったようだ。
娘はモシ・ラティという、カン・シバと同い年ぐらいの、可愛らしい女の子だった。
カン・シバは父のデレク・カンドに、テンジンに渡す五根薬用バターについて尋ねた。
父の話ではバターは他の患者に使ってしまったようだ。
バターは明日作るというカン・シバに父は、疲労ならスープを作ればどうかと提案する。
カン・シバが台所でスープを作っていると、モシ・ラティが手伝いを申し出た。
カン・シバが何か歌いながら、スープを作っているのをモシ・ラティが不思議に思っていると、カン・シバの母ニマ・ドルカルが説明してくれた。
カン・シバが唱えているのは、薬師如来の真言で薬を作っている訳じゃないのに唱えるという。
その言葉にカン・シバは、これも回復を願って作ってますからと答えた。
それを聞いたモシ・ラティは笑みを浮かべた。
スープが出来上がると、丁度テンジンが届けてもらうのは申し訳ないと薬を受け取りに来た。
スープを渡し、花嫁について説明する。
テンジンは、モシ・ラティが異国の人なのに言葉が上手な事に感心した。
彼女は嫁ぎ先が決まってから覚えたと告げる。
言葉を覚えないといけないなんて、大変だなと語るテンジンに、モシ・ラティは、相手の方の話を聞いていたので会うのが楽しみでと満面の笑みを浮かべた。
テンジンとカン・シバは、よっぽどいい相手と結婚するんだろうとその笑顔を見て思った。
テンジンを見送っていると、モシ・ラティがテンジンの顔色が悪い事を心配する。
カン・シバは食事を取りながら、父に今からバターを作っていいか尋ねる。
デレク・カンドはテンジンがそんなに悪いのかと尋ねるが、そうじゃないけどと言葉を濁す。
カン・シバは人々に笑顔で過ごして欲しいだけだった。
デレク・カンドはそんなカン・シバの頭を撫で、無理はするなよと笑顔で言った。
五根バターを作るには、焦げないように付きっ切りで作業する必要がある。
カン・シバが作業していると、モシ・ラティが起き出してきた。
起こしてしまったかと尋ねると、昼間、父の背中で運ばれている時眠ったからと笑顔を見せた。
彼女と話しながら、カン・シバはバターを煮詰める。
水分が残っていると、効力が出ないし、煮詰めすぎると効能が飛んでしまう。
何度も確認しながらカン・シバは作業を進めた。
煮詰める作業が終わり、後は冷やして丸めるだけになったので、カン・シバは仮眠を取る事にした。
モシ・ラティにその事を告げ、彼女にも休むように言う。
カン・シバが光を感じ、寝過ごしたと慌てて起きると、丁度日の出直前だった。
部屋にはモシ・ラティがいて、バターを丸めてくれていた。
バターは粒がそろっており、綺麗に出来ていた。
彼女に礼を言い、カン・シバも作業に加わる。
日も登り、テンジンの家で薬を渡すととても感謝してくれた。
カン・シバが家に戻ると、行商人の一行はすでに出発していた。
モシ・ラティにもきちんと礼を、言いたかったと思っていると、彼女は母を手伝い食事の準備をしていた。
行商人が忘れて行ったと慌てるカン・シバにデレク・カンドが彼女を預かる事になったと告げる。
式の日取りの関係で、連れ回す訳にもいかないから、預ける事にしたそうだ。
花嫁を預かるなんて大丈夫かと、気にするカン・シバにデレク・カンドは大丈夫だろと軽く答えた。
続けて、お前と結婚するんだからとデレク・カンドは言った。
感想
十八世紀のチベットの生活が、丁寧に描かれている作品です。
テンジンとモシ・ラティの様子も気になりますが、当時の薬や食文化、生活の様子が優しいタッチで描かれています。
まとめ
初々しい二人の様子を見ていると、ニヤついてしまいます。
この作品はpixivコミックにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。