自作小説

花旅ラジオ 第八話 「沖合の島へ」

投稿日:2019年4月28日 更新日:

食事を終えた二人は、翌日に備え早目に休む事にした。
ルクはタマに空いている部屋をどこでも使っていいと告げたが、タマが二人で寝ると暖かいからというので、同じベッドで横になった。

タマは布団に飛び乗ると、ベストを脱ぎ、早々に丸くなって寝息を立て始めた。
ルクも丸まったタマの横で、彼の背中を撫でている内にいつの間にか眠っていた。

翌朝は食堂で軽めの食事を済ませた後、バギーで海を目指した。
街が沈んだため、海岸線は変わってしまったが、堤防が残っていた砂浜近くにバギーを止め、ボートを波打ち際で展開した。

ボタンを押すとモーターが回り、空気を取り込んで、ボートは大人が十人程乗れる大きさになる。
ルクはボートが流されないように、砂浜に打ち込んだ杭にロープで固定した。

「すっげーな!!あっという間にでっかくなったぞ!!」
「空気を取り込んで、膨らむんです。畳む時もこのボタンを押せばいいだけです。」
「へぇ、なあなあ、これもバギーと一緒で速いのか?」

「最高速度は時速百キロ以上は出るみたいです。」
「そうか!楽しみだな。」
「落ちると危ないので、そんなに速くは動かしませんよ。」

ルクの答えにタマは残念そうにちぇっと口を尖らせた。

「まあいいや。ルクさっさと準備して行こうぜ。」
「はい。」

二人はボートに、トレーラーの荷物を積み込み、砂浜に固定していた杭を外す。
オールで浜から離れ、船外機を海中に降ろした。
この船外機は電動で、海水を吸い込みウォータージェットで推進力を得る仕組みだ。

「タマさん、何かに掴まってください。」
「おう。」

船首に座ったタマが、船縁上部のロープを掴んだのを確認してから、ルクは船を発進させた。
天気は快晴で、波も穏やかだった。
ルクはこれならと船を加速させることにした。

「タマさん、飛ばしますよ!」
「おう、行けルク!!」

タマの返事を受けて、ルクはスロットルレバーを操作し、速度を上げた。
ボートは加速し、波を受けて海面を跳ねる。
その度二人は、歓声と笑い声を上げた。

ボートの横に海面から魚が飛び、出し宙を舞っていた。
キラキラと光り反射するヒレを広げ、海の上を滑空する魚を見てタマが驚きの声を上げる。

「ルク!見たか!?魚が飛んでたぞ!!」
「トビウオですね。初めて見ました。」
「綺麗だな。……美味いのかな?」

「美味しいらしいですよ。」
「そうか…、食ってみたいけど、綺麗だからいいや。」
「…そうですね。」

そんな事を話しながら一時間程船を走らせると、目的の島が姿を現した。
ルクは速度を緩め、慎重に船を島に寄せた。

今のところ、島の周りに船影は見えない。
タマが見たという船は、この島から来たのではないのだろうか?
ルクは地図を確認し、港を避けて島の北側にあるビーチから上陸する事にした。

「タマさん、砂浜から上陸します。上陸したらボートを畳んで隠しましょう。」
「分かった。」

ビーチには誰もいなかった。
街と同様に、緑に浸食され朽果てた建物が軒を連ねている。
観光地としてにぎわっていたようだから、建物は観光客用の宿泊施設だったのかもしれない。

ルクはセンサーで周囲を探った。
一キロ圏内には、人間やバステトの反応は無い。
鳥やうさぎ等は生息しているようだが、猪などの大型の獣は確認できなかった。

「周囲に人間やバステトはいないようです。ここはお母さまの故郷ではないかもしれません。」
「ここはまだ端っこだろ。島の中心に行ってみようぜ。なんかいるかもしれないぜ。」
「そうですね。」

二人は荷物を下ろし、ボートを畳んで波に攫われない様、比較的、緑の浸食の建物の中に隠した。
装備を入れたリュックを背負い、ルクはアサルトライフル、タマはハンドガンを手に島の中心をめざし、緑の生い茂る街に足を踏み入れた。

 

島の港に程近い地下の薄暗い部屋で、数名の男が計器を睨んでいる。
計器を見ていた男が、後ろの一人に話しかける。

「先ほど捉えた船影は、北側のビーチに上陸したようです。」
「何者だ。目視で確認した隊員の報告によると、一人は人間。もう一匹はおそらくバステトだという事です。」
「九年前の逃亡した奴の生き残りか。」
「どうでしょうか?逃げ出した者が、わざわざ戻ってくるとも思えませんが…。」

疑問を呈した男に、後ろの男は口元をゆがめて答えた。

「まあいいさ。どのみち働いてもらう事に変わりは無いのだから。捕獲部隊を向かわせろ。なるべく傷つけるなよ。貴重な労働力だ。」
「了解。」

計器を操作していた男は、無線で連絡を取り、男の指示を部隊に伝えた。

「発電機の調子はどうだ?」
「あまりよくありません。タービンがそろそろ限界が近いです。」
「猫を使って修理させろ。人よりは長く耐えられるだろう。」
「大佐、シェルターを放棄して別に移った方がよくはありませんか?」

男の言葉に大佐と呼ばれた男は、顔をゆがめ怒りをあらわにした。

「そんな事はお前に言われるまでも無く分かっている!!お前は言われた事をやっていればよいのだ!!」
「すみません!!」
「船が動けばこんな島とはおさらばだ。船の兵装を使って、我々はこの星を自由に出来るのだ。それまで我慢しろ。」
「はい、大佐。」

大佐は満足したように、笑みを浮かべ、モニターに映し出された船に視線を落とした。
そこには一隻の宇宙船が映し出されていた。

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