小説 小説長編

白い迷宮

投稿日:2019年4月16日 更新日:

吹雪白い迷宮
著:田中芳樹
イラスト:ふくやまけいこ
講談社文庫

大学生の能登耕平と小学生の来夢が活躍する長編ゴシック・ホラー シリーズ第三弾。

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冒頭部分あらすじ1

年の瀬も迫ったある日、耕平は北アルプスの近くの雪原にいた。
北本の誘いで、彼の友人がこの地に移築したスコットランドの城に招待されたのだ。

迎えに来てくれた来夢の案内で、途中悲惨な事故が過去にあったという湖を通り過ぎ、目的地の城に辿り着いた。
トゥミントール城、かつてスコットランドにあった古城が姿を現した。

城では北本が出迎えてくれた。
この老人は現在、来夢の後見人で、過去二回、耕平と来夢と共に奇怪な事件に立ち会っている。

耕平は北本の勧めで来夢が耕平を部屋に案内した。
来夢は石造りの城に、ガッカリしたようだった。
彼女が想像していた西洋の城は、舞踏会が行われるような明るく美しいものだったのだろう。

部屋は近代化が成されており、一流ホテル並みだった。
荷物を置き、部屋を出て階下へ降りると城の主人、松倉と彼の四人の子供を紹介される。

子供と言っても、全員耕平より年上だった。
松倉はもともと城をホテルとして利用するつもりだったが、日本の建築基準法に阻まれ。断念したらしい。

この城には耕平達や松倉の他にも、ゲストや管理人など二十名近くが宿泊している。
食事を終えて、松倉は耕平の将来について聞いたり、北本に城を博物館にする計画について話したりした。

いい時間になったので、北本は会話を切り上げ、来夢と耕平を連れて部屋に戻ることを松倉に告げた。
部屋に向かう間、松倉の家業の話になった。

松倉家は華道の家元で、門弟の総数が百万人の一大流派だという。
清雅流は政財界にも強い影響力を持っているという事だった。

清雅流という名前は耕平も知っていた。
彼の母が習っていたからだ。
松倉自身はナンバー2で家元は彼の母親だという。

九十歳になる老婆だそうだが、圧倒的な支配力で組織を支配していると北本は語った。

あらすじ2

部屋に向かう途中、来夢の上げた声で、窓に浮かぶ赤い影に耕平と北本は気付いた。

火事かと思ったが、どうもそうではないらしい。
耕平は過去の事件を思い出し、サバイバルキットのナイフを手に窓に近寄る。

窓が開き侵入してきた赤い蛇のような物を、耕平は反射的に切りつけた。
切られたことで、赤い物体は窓の外へ姿を消した。

追おうとする耕平を、男の声が引き留めた。
松倉の三男、光樹だった。
彼は来夢を脅すように幽霊や、バスの事故の霊の話をした。

北本は子供を嚇すなと光樹を窘める。
光樹は話しの流れで出た、耕平が親の相続を放棄した話を聞き、彼に敵意をむき出しにする。

光樹は松倉の家の力で生きており、それを外れた生き方をする耕平に反発心を覚えたのだ。
彼は人間の皮を被った怪物もいると忠告し、その場を後にする。

どうやら彼は時間稼ぎをしていたようだ。
気が付くと赤い影の姿は雪の中に消えていた。

感想

今回は吹雪に閉じ込められた古城が物語の舞台です。
耕平と来夢はそこで、魔術に関する松倉家の秘密と彼女を狙う清雅流の家元、宗家と呼ばれる老婆と対決します。

宗家の孫たちが操る奇怪な生物や、雪の魔物、自動人形と戦いながら、二人は過去に飛び、魔女と出会います。

夏の事件でその身に異次元の生物を宿した耕平と、生まれてすぐにそれを裡に封じられた来夢。
来夢はその力を欲する人々に狙われる事になります。

絶望的な状況でも、二人が明るさを失わないのは、一緒にいればどんな困難にも打ち勝てるという思いがあるからだと感じます。

まとめ

雪、古城、莫大な資産を持った老婆。それに纏わる遺産を巡る骨肉の争い。
これだけ揃えば、何かが起きない筈がないといった状況でしょうか。

吹雪に閉ざされた陸の孤島というシチュエーションは、ミステリーが好きなら無条件でワクワクする状況だと思います。

本作では、冒頭から魔術的な怪物が現れるため、ミステリー要素はあまりありませんが、物語の味付けとして楽しめると思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのBjörn Schremppによる画像です
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