アルテ 10 ゼノンコミックス
著:大久保圭
出版社:徳間書店
貴族の娘アルテが画家であるレオの弟子として画家を目指す物語。
フィレンツェをジュリオ・デ・メディチの代理として統治しているシルヴィオ・パッセリーニ枢機卿から、スペイン貴族イレーネの肖像画を依頼されたアルテ。
彼女が滞在していたのは、かつてアルテが暮らしていた屋敷でした。
冒頭あらすじ
かつて暮らした家を懐かしく感じながら、アルテはイレーネと対面した。
イレーネはアルテがこの家で暮らしていたと知ると、大事に使わせてもらうと彼女に告げた。
アルテはイレーネの気遣いに彼女に対して好感をもった。
その日は挨拶だけのつもりだったが持ってきた絵の道具を見て、イレーネはアルテの絵が見られると楽しみにしていたのにと話す。
アルテは彼女に希望があれば、この場で何か描いてお見せしますと話し、イレーネのリクエストしたリスの絵を描いて渡した。
イレーネはアルテの絵を手に取り顔をほころばせた。
その後、仕事の報告に訪れたシルヴィオの屋敷で、アルテはイレーネについて事細かに様子を聞かれた。
彼女の正体が分からぬままアルテは仕事を続けた。
そして自分の納得いくものが出来たと、肖像画の下書きをイレーネに見てもらう。
彼女はアルテの好きに進めて言いと口にした。
アルテは、下書きの中で気に入ったものを尋ねたが、彼女は特に気に入ったものはなかったと笑顔で答えた。
どれもいい絵だと思うイレーネはそう言ったが、アルテの絵は彼女の興味を引くことが出来なかったのだ。
自身の精一杯の絵が何の関心も引けなかった事、その事が悔しくてアルテは涙を浮かべて工房へ向かった。
感想
アルテはイレーネの仕事を続ける内に、自分が彼女について何も知らない事に気付きます。
彼女がどんな人間で何を求めているのか。
アルテは今までの自分の仕事を振り返り、まずは彼女を知る事から始めます。
アルテとイレーネの会話を読んでいて、籠の鳥という言葉が浮かんできました。
平穏な暮らしではあるものの、館からは出られず、新しい発見や驚きの無い単調な毎日。
彼女の言葉からはそんな思いが感じられます。
まとめ
今回は平民には平民の、貴族には貴族の悩みがある。
イレーネの言葉には、飢える事のない贅沢な暮らしを送っていても満たされないものもあるという事を感じます。
この巻ではイレーネに好きな人がいるか尋ねられたアルテが、照れも何もなく自然な表情で「います」と答えたシーンが印象に残りました。
お読みいただき、ありがとうございました。