ゲート・デーモンの仮面
安田均 編
山本弘 他
イラスト 未弥純他
富士見ファンタジア文庫
テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」の世界フォーセリアを舞台にした短編集、第九作目。
今回の短編集はリプレイ第二部等の、人気キャラクター達の物語です。
この短編集には3作が収録されています。
各話のあらすじや感想など
悲しみの賢者 白井英
男女二人で入国審査を受けていた。
男の名はシリンズ、女はディーナと名乗った、男の方の具合がかなり悪そうだ。
彼らは少し休んで行けという門番の言葉を断り、宿に向かった。
彼らに続き入国審査をパスしたアーヴェル達は、門番の勧めた宿に部屋を取った。
夜も更け部屋で寛いでいたアーヴェル達だったが、マティアラが階下の物音に気付く。
物取りかと一階を調べた彼らが見たのは、先ほど関所で苦しんでいたシリンズだった。
シリンズは中庭の池で、苦しそうに持っていた短剣を洗っていた。
短剣にはどす黒い液体が塗られている。
恐らく毒であろうそれを全て洗い流すと、彼は意識を失った。
シリンズを調べると、何らかの魔法がかけられている。
サレムが言うには、おそらくクエスト(使命)の魔法だという。
短剣を使い誰かを殺すよう命じられており、それに反する行動をとると苦痛に苛まれるというものだ。
アーヴェル達は連れの女性ディーナに状況を説明し、彼を神殿に連れていき魔法の解呪を行うよう頼んだ。
数日後、アーヴェル達はシリンズが国の重鎮であるロンドバーグ司祭の暗殺に失敗し、見せしめとして亡骸が路上に曝されているのを発見する。
彼らは真相を知るべく、シリンズの兄でプリシスで軍師をしているファルメスの館を訪れるのだった。
感想
長編小説、「自由人の嘆き」のメインキャラクターであるアーヴェル達の後日談です。
騎士であるアーヴェルは王から、道を整備するため技術が記されたパルマーの手記の入手を命じられます。
オランとしては、プリシスとロードリルの戦争に介入するにしても、道がなければ、最高戦力である戦車部隊を投入できません。
街道を整備して戦車部隊を投入する、そのための手記入手でした。
しかしアーヴェルは人々の交流のために書かれた手記が、戦争に使われることを嫌い、自分たちが奪って逃げたように見せかけ、オランから脱出しました。
自分が下した決断がどういう結果を生むのか、戦争の行方を知るため、アーヴェル達はプリシスを訪れたのです。
物語は悲しい結末になってしまいました。
ファルメスはルキアルの模倣ではなく、彼自身のやり方を模索するべきだったのでしょう。
決断 清松みゆき
あらすじ
戦士のプライア、魔術師のリスト、盗賊のアルラ、神官戦士のティードの四人は野盗に攫われた娘の奪還を、娘の父親である商人から依頼される。
彼らは探索の末、野盗のアジトを見つけ出し、娘を救うため、乗り込むのだった。
感想
長編小説「混沌の夜明け」主人公プライアの過去のお話です。
物語の中でプライアは混沌の地、探索の隊長として様々な決断を下さねばならない立場にあります。
この短編では、彼がかつて冒険者グループのリーダーとして下した決断について語られます。
その時は最良だと思って人は行動しますが、後になって考えてみればこうしたほうが良かったということは多いでしょう。
作中で語られるように、何も決断せずにいるよりは行動し、たとえそれが失敗だったとしても次の策を打つ。
そうして行くしかないのかもしれません。
ゲート・デーモンの仮面 山本弘
あらすじ
アレクラスト大陸西部の未開の地、ゴブリンロード虎縞のコムンガはリザードマンに襲撃を受けていた。
コムンガたちは懸命に戦うが、部隊は大きな損害を受けてしまう。
オーガの参入で何とか逃げ延びたが、主に命じられた食料集めは失敗してしまった。
拠点に帰ったコムンガは主である「偉大なる支配者」に事態を説明していた。
今回の作戦失敗は、リザードマンによるゲリラ戦法によるもので、指揮をとっていたシアという人間の娘の存在が大きい。
シアの名を聞いた支配者は、その名に心当たりがあるようだったが、コムンガには説明せず、別の任務を与えるのだった。
感想
リプレイ集第二部のキャラクター、シアが登場します。
物語としては第二部のプロローグのような形になっています。
特筆すべきは本来、雑魚として扱われるゴブリンを主役においた点でしょう。
彼らの考え方や仲間への感情等、あまり描かれることがない部分が語られ、新鮮にかんじました。
まとめ
今回の作品集は長編小説やリプレイで活躍するキャラクター達をテーマに書かれています。
キャラの設定等、補則はあるのですが、やはり元の作品を読んでからの方が、より楽しめるでしょう。