ハードボイルドマタタビビバップ 1 イブニングKC
著:フジモトシゲキ
出版社:講談社
人別帳から外されひと所にとどまる事の許されない無宿人。
そんな無宿人の一人、小菅の伊太郎(こすげのいたろう)は行くあての無い放浪の旅の空の下、旅先で出会う食事を何よりの楽しみにしていた。
そんなある日、伊太郎はヤクザの抗争に巻き込まれ妻と子供を亡くした男に絡まれ……。
登場人物
小菅の伊太郎(こすげのいたろう)
さすらいの無宿人
しきたりを重んじる無口な股旅。
美味いものに目がない食いしん坊な男。
弥助(やすけ)
ヤクザの諍いに巻き込まれ妻と子を亡くした百姓
流れ者の伊太郎にその怒りをぶつける。
深木平十郎(みき へいじゅうろう)
羽州浪人
黒髪無精ひげの侍。
摺針峠の百姓から依頼を受け伊太郎に刃を向ける。
北辰一刀流の使い手。
父の仇を探し各地を巡っていた。
うたかた九助(うたかたきゅうすけ)
凄腕の壺振り
額に九の入れ墨を入れたジト目の男。
弥助の女房と子供を殺した真犯人を探す平十郎は、賭場で出会った九助にその情報を求めた。
彼が賭場飯として作る鉄火巻きは絶品らしい。
首抜けの富蔵(くびぬけのとみぞう)
妓楼を根城にする情報屋
元々は首代と呼ばれる客が起こした刃傷沙汰の責任を引き受ける立場だったが、現在は妓楼の遊女を虜にしそこから得た情報を金に換える情報屋として暮らしている。
平十郎と伊太郎は九助から教えられ彼の下を訪ねるが……。
うらなり仙吉(うらなりせんきち)
武佐宿、助五郎一家の子分
顔に傷のある細見の男。
富蔵の情報では弥助の女房と子供を斬ったのは仙吉らしいが……。
阪東栗之丞(ばんどう くりのじょう)
関東取締役出役(八州取締役・八州廻り)
蛇の様な瞳と二股に分かれた舌を持つ幕府の役人。
八州廻りは江戸におけるFBI的な存在で、阪東は凄まじい検挙率を誇った。
その一方で拷問によって自白を引き出し、多くの冤罪を生み出した。
サディスト。
あらすじ
人別帳(現在でいう戸籍)から名前を消され、一所にとどまる事を許されない無宿人の一人、小菅の伊太郎。
彼は摺針峠の百姓のガス抜きのため、浪人、深木平十郎から命を狙われる。
百姓たちも伊太郎が弥助の女房、子供の死に関わっていないとは分かっていた。
二人を殺したのは地元のヤクザである事は察しがついている。
しかしヤクザに喧嘩を仕掛ければ、どんな報復があるか分からない。
仇が分かっているのに、仇を討つ事も出来ない。
そんな不満を晴らすため、この地に何の縁も所縁もない伊太郎に矛先が向いたのだ。
羽州浪人、深木平十郎。
そう名乗った侍は私怨はないと言いながら刀を抜いた。
平十郎の刃がゆらりと揺れる。
鶺鴒の尾。
切っ先を鳥の尾のごとく揺らし、起こり(初動)を消す構え。
それを基本とするなら、平十郎の使うのは江戸三大流派の一つ、北辰一刀流だろう。
「悪ィがお前さんに生命を狙われる謂れはねぇ……」
伊太郎はそう言って背を向けたが、平十郎はその背に向けて刃を放った。
感想
無宿人という死んだところで誰にも顧みられる事のない存在。
そんな無宿人である伊太郎が、百姓たちの行き場のない怒りの矛先となり、百姓に雇われた浪人、平十郎に命を狙われるシーンから物語はスタートします。
その後、伊太郎は平十郎の剣をしのぎ、彼の喉元に切っ先を突きつけ勝利。
二人は事の起こりとなった百姓、弥助の妻と子供を殺した者について探り始めるのですが……。
物語は弥助の家族を殺害した真犯人を探し、ツボ振りの九助、情報屋の富蔵とたどりながら犯人へと向かいます。
とまぁ、物語の展開はそんな感じなのですが、主人公の伊太郎がとにかく食いしん坊なので場面場面で江戸時代の美味しい食べ物が登場し、時代劇版、孤独のグルメ的になるのが楽しかったです。
まとめ
基本、真面目なんだけど要所要所でコミカルなシーンが挟まれるのに、クスリとした笑いを誘われました。
物語的には、どうも面倒な相手に目を付けられた伊太郎と平十郎。
二人は無事、生き延びる事が出来るのか。
次はどんな美味しいものが登場するのか。
次回も読むのが楽しみです。
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