ダンピアのおいしい冒険 4
著:トマトスープ
出版社:イースト・プレス
クックから船を引き継ぎディライト号の船長となったデーヴィス。
彼はリマへむかう事を決め、自分と来るか太平洋を超え東インドへ向かうというスワン船長の船に乗るか船員達に決断を促した。
世界の事が知りたいダンピアは、デーヴィスと別れスワン船長のシグネット号に乗る事を決め……
登場人物
ジョサイア・ティート
シグネット号の航海士
ラージャの事を怪しいとスワン船長に訴えるが……。
ジョン・サッカー
シグネット号の船員
黒髪の青年。
得意のダンスでミンダナオの女性達と打ち解ける。
ジョン・フィッツジェラルド
シグネット号の船員
アイルランド人。
食糧不足とマラリアの流行を受けてスワン船長に上陸を提案する。
ラージャ・ラウト
ミンダナオの王弟
ミンダナオを支配するイスラム教徒の王族の一人。
太平洋を渡りミンダナオに辿り着いたダンピア達をもてなすが……。
ジェオリー
ラージャの家の奴隷
浅黒い肌に入れ墨の青年。
ダンピアにサゴ(サゴヤシから取れるデンプンを使ったパン)を振舞う。
現地人ではなく、ミンダナオ王が戦争で捕らえた異民族のようだ。
ジョン・リード
ダンピアと共にスワン船長の船に乗った海賊
バンダナもみあげの男。
船には同じ名前でブリストル出身のジョン・リードがいる。
ミンダナオから動かないスワン船長に不満を持つ。
あらすじ
ダンピアの乗ったシグネット号はアメリカ大陸を北上、その際、スワン船長は略奪により収穫を得ようとしていたが、街が内陸に作られていた為、何も得られないままの航海が続いていた。
そんな中、ダンピアはマラリアに倒れる。
その後もスペイン兵の存在や不案内な土地という事も手伝い、シグネット号は深刻な食料不足に陥った。
食料の不足に加え、ダンピア他、マラリアに倒れた船員達の存在。
船員達はスワン船長に付近のインディアンを捕らえ案内させようと提案する。
渋るスワン船長だったが、生き延びる為に取れる手段は他になく、リングローズも川をさかのぼり集落を探す事を提案した。
その後、小舟で川を遡上した一行は原住民と遭遇、一人の足を銃で撃ち捕らえ彼の村へと案内させた。
住民を脅し食料を手に入れたシグネット号の面々。
何とか危機を脱したが、村はスペインから海賊の存在を聞かされていて……。
感想
今回はスワン船長率いるシグネット号での航海から始まり、ダンピア、マラリアに倒れる、食料不足と略奪、街の襲撃とリングローズの死、ダンピアの快方と悲しみ、南洋(太平洋横断)、再びの食料不足と不穏な空気、グアム到着、ミンダナオでの生活と陰謀、船長交代とプロ・コンドールへの旅等が描かれました。
今回はその中でもシグネット号の船長スワンが印象に残りました。
彼はクックやデーヴィスとは違い、勇猛果敢な戦士では無く、元は交易船の船長でした。
その為か略奪行為に積極的ではなく、穏便な選択を作中していました。
私掠船の船長になったのも交易が上手く行かず、船員から私掠船への鞍替えを望まれた結果でした。
そんな彼にとって、裏はありましたがミンダナオで王弟のラージャのもてなしによる穏やかな生活は心休まる日々だったようです。
他者から奪い戦う事が常の海賊生活。
それに疲れたスワン船長の気持ちも分かるような気がしました。
まとめ
この巻のラスト、海賊の暮らしに嫌気がさした船医、コピンジャーが船から脱走します。
シグネット号の乗組員は彼をどうするのか。次巻も楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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