19番目のカルテ 徳重晃の問診 7 ゼノンコミックス
著:富士屋カツヒト
医療原案:川下剛史
出版社:コアコミックス
専門の科と患者を繋ぐ医師、総合診療医の活躍を描いた作品、第七巻。
今回は趣味の散歩の途中、徳重が見つけた熱中症を起こしていた青年、岡崎のエピソードからスタートします。
登場人物
岡崎拓(おかざき たく)
黒髪短髪の青年
炎天下の公園で熱中症を起こしていた。
徳重に助けられ病院で処置を受けたが、無気力な彼の様子に徳重は気がかりを覚え……。
岡崎サク(おかざき さく)
岡崎の弟、生まれたばかりの赤ん坊
先天性異常症候群という生まれつき心臓、肺、消化器など複数の臓器に異常がある状態で生まれた。
何度も手術を受け命をつないだが、彼の治療費の工面などで岡崎の両親は諍いが絶えなかった。
仕事の忙しい両親に変わり、弟の面倒は年の離れた岡崎が見ていたが……。
志賀(しが)
黒髪ニット帽の三十代男性
強い腰の痛みを訴え魚虎総合病院を訪れる。
痛みを訴えた腰には特に異常は見られなかったが、彼を診察した滝野(たきの)は違和感を覚え……。
西城(さいじょう)
魚虎総合病院の消化器外科の医師
五十代ながらも若々しくパワフルで陽気な男。
大人しくハングリーさがない若手に不満を抱いている。
あらすじ
徳重が散歩の途中、炎天下の公園で出会った青年、岡崎。
熱中症を起こしていた彼を病院へ連れて行き、治療を受けさせた徳重は意識が戻った岡崎に話を聞いた。
体の状態を説明している間も、岡崎は受け答えはするもののまだ十代だというのに彼から活気は感じられなかった。
そういう人柄という事で済ませるには、その様子は徳重には不自然に感じられた。
その後、徳重が立て替えたタクシー代の話から、岡崎が公園で読んでいた本、高卒認定試験の参考書の件で、受験の話へと流れていく。
自分のために努力している事は素晴らしい。
そういった徳重に岡崎はそんな事やっても……何も取り戻せないのにとぼんやりと答えた。
彼は病気の弟の為に、ずっと頑張り続けていた。
しかし、弟が死んで、それから解放された時、心の底からホッとしていた。
同時にそんな自分をひどい奴だとも感じていた。
そんな岡崎の身の上を聞いた徳重は、やはり彼は何かしらの病に苦しめられていると確信。
岡崎に話を聞かせて欲しいと通院を願うのだった。
感想
今回は忙しい両親に代わり先天性異常症候群の弟の面倒をみていた青年、岡崎のエピソードから始まり、総合診療医として徳重がいない状態での診察を行った滝野、徳重と消化器外科の西城等が描かれました。
今回はその中でも、弟の世話から解放され気力を失った青年、岡崎のエピソードが印象に残りました。
彼は体が弱く、すぐに体調を崩す赤ちゃんな弟の面倒を自分を犠牲にしてみていました。
ただ、岡崎はそんな弟を疎ましく思っていたわけではなく、小さな弟を大切で可愛い存在として扱っていました。
そんな弟が死んだとき、彼は心の底からホッとしたと徳重に語ります。
治療費で生活費が圧迫され揉める両親。
岡崎自身も弟の世話で高校を続ける事が出来ませんでした。
また、そのすぐ後に母親が家を出ていき……。
弟を憎んでもおかしくない状況の中で、彼は誰も恨む事なく、現実を受け入れているように感じました。
その後、弟は死に岡崎は全ての事に気力を失いました。
彼の病名はバーンアウト(燃え尽き症候群)。
今まで必死でやってきた事が突然なくなり、生きる気力さえも失う症状。
作中、徳重と話す事で少しずつ明るくなる岡崎の顔が、読んでいてグッと来ました。
まとめ
次回は老老介護がテーマのようです。
現実でも問題となっているテーマに徳重がどんな答えを示すのか。
次巻も読むのが楽しみです。
この作品はゼノン編集部で一部無料でお読みいただけます。
作者の富士屋カツヒトさんのツイッターはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。