青野くんに触りたいから死にたい 10 アフタヌーンKC
著:椎名うみ
出版社:講談社
学園祭の演劇、ロミオとジュリエット。
その舞台上演の最中、青野(あおの)を悪霊だと考える内田(うちだ)は夫婦岩の涙の儀式を行い、青野の魂を鎮めようとしていた。
その儀式で捧げるのは優里(ゆうり)の予定だった。
しかし、青野は劇場内にいた観客の中で答えを間違った者たちの名を呼び、彼らの命を奪った。
慌てる内田に青野はすでに優里は自分の物だと告げた。
登場人物
青野瞳(あおの ひとみ)
青野の母親、故人
黒髪ロングの気の弱い女性。
夫、康一(こういち)の死後、シングルマザーとして青野と弟の鉄平(てっぺい)を薬局で働きながら育てていた。
康一のいない寂しさ、日々のストレスから甘えん坊で泣き虫な鉄平に辛く当たる事もしばしば。
同僚の野崎(のざき)に迫られ肉体関係を持つが、瞳は彼に対して恋愛感情があったわけではないようだ。
野崎(のざき)
瞳の同僚
センター分けで顎鬚の男。
押しに弱い瞳に迫り、肉体関係を持つ。
既婚者であり、妻は出産を控えている。
その妻に瞳との関係がバレた事で、瞳は勤めていた薬局を辞め引っ越しする事になった。
嫌い。
あらすじ
内田が画策した夫婦石の涙の儀式の再現による、青野の魂の鎮静化。
それは場を同じくするいう条件を満たしていなかった事で破綻した。
青野は観劇していた客を三回間違えたと手にかけた。
そんな青野を止めようと、優里はロミオ役の藤本に抱き着き、彼の物になっちゃおうかなぁと告げ、やめてほしい? やめたら何くれる?と取引を持ち掛けた。
しかし、青野が答えを口にする前に演者たちが優里を抱え上げ、セットのバルコニーから落とそうとする。
内田の計画では優里が死ぬ事で儀式は完成するはずだった。
だが青野は優里を傷つけるなと、演者たちにもその力を振るった。
優里を抱え上げたロミオとジュリエット役の生徒たちは、顔を隠していた布を血に染め次々と倒れた。
会場が混乱に陥る中、優里たちに招かれ劇を見ていた学童の小学生の一人、希美(のぞみ)は曾祖母の霊から内田から儀式を引き継ぐよう告げられた。
「お前が儀式を導くんだ」
曾祖母の声が響くと、不安を感じていた希美の顔から感情が消えた。
感想
今回は冒頭、内田が計画した演劇中の夫婦石の涙の儀式の再現から始まり、青野の力で混乱する会場、希美による儀式の引き継ぎと継続、青野が死んだ場所と優里が追体験した青野の母、瞳の記憶等が描かれました。
今回はその中でも、これまでも何度か登場した青野の母親、瞳の過去が印象に残りました。
瞳は亡き夫、康一の事を深く愛しており、発言を聞く限りかなり依存していたようです。
また、精神的に自立しているとは言えず、育児と仕事のストレスでかなり追い詰められていたようでした。
夫婦二人でも子育ては大変です。
シングルマザーとして二人の子供を育てる。
瞳は頼る親族もいないようで、作中、子供の様に泣く場面も多々ありました。
幼い青野はそんな瞳を気遣い、寄り添っていました。
自殺したという瞳。
事故だと思われていた青野の死もどうやら自殺であり、彼も母と同じ場所で命を絶ったようでした。
それが瞳の霊によるものなのか。
康一亡きあと、頼れる者は幼いながらも気遣いの出来る息子の青野しかいなかった様子の瞳。
死者となっても瞳は青野を求めたのでは。
作中の瞳を見ていてそんな事を思いました。
まとめ
この巻の後半、優里は青野の母、瞳として生前の彼女の暮らしを追体験していきます。
その辛い記憶を知った優里がどうなるのか。
次巻も楽しみです。
この作品はpixivコミックにて一部無料で読む事が可能です。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。