天幕のジャードゥーガル 2 ボニータコミックス
著:トマトスープ
出版社:秋田書店
13世紀、イラン東部で暮らしていた奴隷の少女、シタラはモンゴル軍の襲撃を受け捕虜となり、帝国本拠地へと連行される。
その後、チンギス・カンの四男、トルイの第一皇后、ソルコクタニの侍女となったシタラは元主の名、ファーティマを名乗り、モンゴルへの復讐を心に誓いながら、帝国で過ごす事となった。
登場人物
ドレゲネ
モンゴル帝国の第三皇子、オゴタイの第六皇后
黒髪で激しい気性の女性。
元はアルタイ山脈近く住むナイマン族の娘。
同盟関係にあるメルキト族の族長の一人、ダイル・ウスンに輿入れしたがモンゴル帝国の侵攻で夫を亡くし、彼女はオゴタイの第六夫人として帝国へ下る事となった。
皇后となった今でも穏やかな暮らしを奪った帝国を憎んでいる。
チャガタイ
モンゴル帝国の第二皇子
しかめ眉の真面目な男。
皇帝となったオゴタイを盛り立て、帝国の更なる繁栄を後押しする。
ダイル・ウスン
メルキト族の族長の一人
ドレゲネが最初に嫁いだ夫。
彼女とは親子ほど年が離れている。
ドレゲネを妻としたのは、拡大するモンゴル帝国に対抗するため、周辺部族とのつながりを強化する意味があったようだ。
別れの際、動物の腹の中出来る嵐を呼ぶとされるジャダ石を餞別として渡される。
クラン
ダイルの娘
ドレゲネにとっては義理の娘となる少女。
強大な帝国からメルキトの血を守るため、彼女は皇帝チンギス・カンに捧げられる事となった。
クルトガン
メルキト族、ウドイト氏族長の末子
弓の名手(メルゲン)の民という意味であるメルキト族の名通り、弓の扱いに長ける少年。
モンゴル軍に負け、殺される事に怯えていた。
テムゲ
チンギス・カンの弟
東方の宿敵、金国を攻める事を望む。
ボラクチン
オゴタイの第一皇后
黒髪で病弱な女性。
賢く聡明ではあるが、その病弱さから表立って動く事は出来ない。
ソルコクタニと同じく、強すぎるトルイ家を危惧している。
モゲ
オゴタイの皇后の一人
まとめ髪に額飾りの女性。
聡明なボラクチンに従い、王家の分断を画策する者たちへの警戒に当たる。
あらすじ
モンゴル帝国を一代で強大な軍事国家にした男、チンギス・カン。
彼の死により、帝国は彼の息子の一人、第三皇子のオゴタイが継ぐ事となった。
穏やかで人を融和させる資質を持ったオゴタイが後を継ぐ事。
それはカンの遺言であったし、他の皇子もオゴタイを支える事に不満はない様子だった。
しかし、末子が遺産を引き継ぐモンゴルでは多くの兵は第四皇子のトルイが相続する事となり、皇帝であるオゴタイよりも遥かに大きな力を家臣が持つというねじれが生まれていた。
そんな状況を危惧したトルイの第一皇后、ソルコクタニは侍女のファーティマ(シタラ)に密偵として第二皇子、チャガタイの宮廷に潜り込むよう命じる。
しかしファーティマが偶然、ヤギの腹から出て来たベゾアール石(ジャダ石)を持っていた事で潜入は失敗。
彼女は石を探していた皇帝の第六皇后、ドレゲネの前に引き立てられる事になり……。
感想
今回はモンゴル帝国の初代皇帝、チンギス・カンの崩御により新たに皇帝となった第三皇子オゴタイ・カアンの誕生と、その事でねじれたモンゴル帝国、帝国に恨みを持つ皇后、ドレゲネの過去とシタラとの出会い、オゴタイの第一皇后、ボラクチンの危惧などが描かれました。
この巻では共にモンゴル帝国の滅亡を望むシタラとドレゲネの出会いが印象に残りました。
周囲を取り込み拡大するモンゴル帝国。
皇帝を頂点としてその版図を広げていますが、民となった者たちは帝国に国を滅ぼされた人も多くいて、シタラやドレゲネのような復讐心を抱いている者も当然存在していたはずです。
そんな人たちを民として受け入れる帝国の器が大きかったのか。
それとも警戒心が無かったのか。
巨大な軍事力を持つトルイと、力ではなく皇帝という立場でモンゴルを導くのオゴタイ。
ねじれを孕み、シタラやドレゲネのような獅子身中の虫も抱えた帝国が今後、どうなって行くのか。
続きが楽しみです。
まとめ
次巻ではトルイの提案した金国包囲戦が描かれるのでしょうか。
オゴタイとトルイの亀裂を目論むシタラ。
彼女がどんな策略を巡らせるのか。
次回も読むのが楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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