海が走るエンドロール 4 ボニータ・コミックス
著:たらちねジョン
出版社:秋田書店
売れるものは売れ。
そんなsora(そら)の言葉もあり、芸能事務所に所属した海(かい)。
このまま、芸能人になってしまうのでは。
うみ子はそう思い、不安になるが久しぶりに会った海に映画を撮る事をあきらめた様子は微塵もなかった。
その事に元気をもらいつつ、うみ子は教授から打診されたPFF(ぴえフィルムフェスティバル)に向けてのシナリオ作りを始め……。
登場人物
海の父
眼鏡の男性
彼が浮気をしていた場面を海は目撃し、それ以来、海は父親の言葉を素直に受け入れられなくなった。
海の母
黒髪セミロングの女性
彼女は夫の浮気に気付いており、映画監督を目指し芸能事務所に入った海に説教する夫の言葉を遮り、海を応援すると宣言。
その後、夫に話し合いを持ちかけた。
あらすじ
ぴえフィルムフェスティバルに出す作品の脚本。
その脚本を大学の後輩でインフルエンサーのsoraに見られたうみ子。
脚本を読んだ彼の感想は、自分のファンが抱くアイドルとの恋愛の妄想に近いというものだった。
海のファンがの子が書いた妄想みたい。
soraの言葉に確かにそういう部分はあったと、うみ子は練り直しを考えた。
現在の脚本は海を主軸にした場面の継ぎ接ぎで、確かに妄想……。
うみ子は海が撮りたいという気持ちの根底にある感情が何なのか、考え始める。
そんな日々の中、夫の一周忌がやってくる。
親戚たちとの法要も終わり、一息吐いたうみ子の携帯に海から連絡が入る。
海は脚本の仮組みが出来たので読んでほしいのと、質問があるようだ。
うみ子が、今は夫の墓のある高尾山にいると返事を返すと、海は高尾山まで出向き、うみ子の夫の墓にお参りをしてくれた。
海と並び墓に手を合わせながら、うみ子は心の中で報告する。
最近は映画を撮るために色んな事を多角的に見ようと思っている事。
そのために、夫の嫌だったところ、許せなかったこと、与えられた痛みについて考えているのだが……。
この世を去り、残っていくのはいい思い出ばかり……。
まだ一年なのに。
そんな事を考えていたうみ子に、海は質問を投げかける。
「旦那さんに生き返ってほしいですか?」
「は……」
一瞬、たじろいだうみ子だったが、夫が生きていたら、映画を撮っていなかったかもしれないと話し、だからといって、死んでくれてよかったなんて思わないと続けた。
自分の立ち位置は夫の存在が決めていた部分が大きい。
自分もそこに収まるのが楽だった。
話すうち、うみ子の中に自分が撮りたいものが浮かび上がる。
夫の存在が作った自分と、彼がいなくなり映画を撮る事を選択した自分。
乖離しすぎていることを描きたい。
その一週間後、うみ子は書き直した脚本をsoraに見せていた。
感想
今回は冒頭、ぴえフィルムフェスティバルへ向けたうみ子の脚本のエピソードから始まり、海の映画撮影と監督として必要なもの、SNSで広がる海の噂と両親との話し合い、両親への期待に苦しむ海と俯瞰する強さ、今年度のぴえフィルムフェスティバルと倒れたうみ子等が描かれました。
その中でも今回は父親の浮気を知り、それを隠そうとした海と物事を俯瞰する事で客観的に見る映画製作者の強さについてが印象に残りました。
海は父親が書斎で浮気している場面を目撃し、その事で家庭が壊れるのを恐れ、家族から距離を取っていました。
ただ、そんな状況でも海は両親に認められたいと思っていて、そんな自分を子供っぽいとも感じていました。
人は自分の周囲で起きる様々な事に対し、基本、主観的に物事を見ているように思います。
そしてその事で視野狭窄を起こし、暗く辛い未来しか思い描けなくなる人も少なくないんじゃないかとも感じます。
しかし、うみ子のいう俯瞰する視点で見れば、多くの事柄はそれほど思いつめる出来事ではないように感じます。
自分にとっては一大事に感じられても、客観的にみればそう大層なものではない。
うみ子は海が感じている怒りや悲しみ、喜びも海を形作る魅力の一つだと作中、話していました。
どんな出来事も未来につながっていて、全てが自分の糧になる。
エピソードを読んでいて、そんな事を考えました。
まとめ
この巻のラスト、これまでの無理がたたったのか、うみ子はぴえフィルムフェスティバルの会場で倒れてしまいます。
気持ち的には燃えていても、年齢的な衰えは確実にあり……。
うみ子がどうなるのか、次巻が気になります。
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この作品は秋田書店オフィシャルサイトにて第一話が無料でお読み頂けます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。