違国日記 10 フィールコミックス
著:ヤマシタトモコ
出版社:祥伝社
朝(あさ)が高校二年の晩秋。
彼女はやりたい事が浮かばず、進路について悩みあぐねていた。
話を聞きたい人はすでに亡く、周りの友人はやりたい事を見つけている。
自分だけが何もない。
その空虚さを共有出来たかもしれない父はもういない。
永遠に答えが聞けない事が朝を打ちのめしていた。
登場人物
社会科教師
ゆるふわパーマの男性教師
自己肯定感の低い朝に基本的人権について語る。
あらすじ
やりたい事があるよな、ないよな。
そんな鼻歌が出る程に、朝の中にはこれがしたいという物が何も浮かばなかった。
そんな朝の姿を見ながら、槙生(まきお)は中等部の時、初めて公表する事になった作品。
演劇部の脚本の事を思い出す。
学生時代、そのころも槙生は物語を書く事に没頭し、そんな槙生に姉の実里(みのり)は小言を口にした。
少し物が作れるからってまともに生きていけるわけがない。
しかし、やがて槙生は賞を取り小説家として物語を書き生きて行く事になった。
子供のころから文字にのめりこみ、他人が近くにいようがいまいが寂しいと感じない槙生。
彼女は自分たちとは違うのだ。
彼女の書いた小説を手に取り、母親のそんな言葉を聞いた実里はその時、槙生が自分に無い物を持っているのだと気づいた。
感想
今回はやりたい事が思い浮かばず進路に悩む朝と平行して、学生時代の槙生と実里の過去、空っぽだと自分で言う朝とそれに憤る友人のカンちゃん、そして流れていく時間が描かれました。
今回はその中でも自己肯定感の低い朝に友人のカンちゃんが声を荒げ、その声を聞いて顔を出した社会科教師のお話が印象に残りました。
彼が話したのは基本的人権について。
人は自分の存在について何かにつけて意味を求めます。
社会に対する役割であったりとか、家族や友人の中での立場等。
常にここにいていい理由を探しているように感じます。
しかし、基本的人権では、人はただ存在しているだけで価値があるとしているようです。
自分と同じ人間は世界中のどこにも存在せず、その人は唯一無二の存在であると思います。
例えば、クローンで複製したとしても肉体的には同一でも、同じ時間を生きる事、同じ場面を経験する事は絶対に出来ないはずです。
似た思考や行動規範の人物はいても、完全に同一の個体は存在しえない。
そう考えれば、一人一人が人類と種の財産であり、大切な存在でただ生きているだけで価値があるとも感じます。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
この巻のラスト、朝は高校三年生となり、物語の第一話へと繋がりました。
やりたい事が見つからない朝。
彼女がどんな未来を選ぶのか、早く次巻が読みたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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