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河畔の街のセリーヌ 第二巻 登場人物・あらすじ・感想

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モンマルトル
河畔の街のセリーヌ 2
 BLADEコミックス
著:日之下あかめ
出版社:マッグガーデン

19世紀、フランスはパリ。

故郷からパリに出て来た十四歳の少女、セリーヌはパリで出会った老紳士ルネの依頼で彼の紹介する様々な仕事を体験、その体験の報告を求められる。

その依頼の一環でセリーヌはアランという青年の仕事を手伝う事になるのだが……。

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登場人物

アラン
黒髪の青年
あらゆる契約の書類を作成する公証人。
セリーヌはルネに何も告げられず、彼の下へと送り込まれた。

エリック
白髪口髭の裕福な老紳士
嫁に出した四姉妹の上、三人は相続する遺産の事でいつもいがみ合っている。
アランに遺書の作成を依頼した。

クラリス
エリックの末娘
三人の姉とは違い、シスターになった彼女は穏やかで敬虔な女性。

ロラン
エリックの飼っている犬
アランの言葉もよく聞く、賢いワンコ。

ジゼル
パリ城壁の外、急激に発展するモンマルトルに住む少女
赤毛の女の子。
セリーヌが働く事になった野外ダンスホールの給仕、マリの娘。
家族ぐるみの付き合いの残るモンマルトルでは、彼女は多くの住民たちに可愛がられているようだ。
12歳になったら、工場で働く事が決まっている。
しかし彼女はキラキラとしたパリの街に憧れてもいるようだ。

オーギュスタン
膝の悪いルネの主治医
赤毛で髭のおじさん。
叔母であり教師役でもあったシャルロットに効果の無い薬を渡した、村の医師たちの件で、セリーヌは医者という職業に苦手意識を持っていた。
そんな村の医師たちとは違い、オーギュスタンは不安を感じる患者達に笑みを見せ安心させ、持てる技術を使い治療を続けている。

トマ
黒髪の女好きの青年
セリーヌがルネに紹介された書店、ピエールの店に入り浸っているらしく、頼まれた仕事を終え哲学書を読んでいたセリーヌに興味を持ち、彼女にデートの誘いをかける。

あらすじ

ルネから紹介されたアラン。
結局、ルネから彼の職業について聞けなかったが、その後、アランと共に訪れた富豪、エリックとの会話で彼が公証人である事が分かった。

公証人とは全ての契約において、文書の作成を担う職業。
今回はエリックの遺書について、特に郊外にあるエリックが愛した館の相続についてだった。

エリックの兄弟はすでに亡く、従兄弟も全員亡くなっている。
このまま行けば、シスターになった末娘を除いた三姉妹の誰かに館を渡す事になるだろう。

アランがエリックの家を訪れた時、あの三人は遺産を巡り口汚く言い争っていた。

「あの三名のどなたかにお渡しになるか、ご希望はあるのですか?」
「……」

無言で目を閉じたエリックの様子に、セリーヌにも渡したくないのだと察せられた。
その後、エリックはアランに意見を求めたが自分の仕事は助言をする事ではないと、エリックとの契約を口にし回答を避けた。

エリック自身、契約に忠実なアランだから信頼したのだが。
ともかくとして、不動産の査定は必要だ。
アランは館の検証をエリックに求め、セリーヌ、それにエリックの頼みで飼い犬のロランと共に彼の屋敷へと向かう事となった。

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感想

今回は公証人アランと館の相続のエピソードから始まり、パリ北部、モンマルトルの少女ジゼル、セリーヌの過去と医師オーギュスタン、休日と見せびらかし(ブルジョワ)馬車散策、女好きのトマ等が描かれました。

その中でもセリーヌの先生、シャルロットに効果のない薬を渡していた医師と薬剤師、そしてパリで出会った医師、オーギュスタンのエピソードが印象に残りました。

19世紀、フランスでも江戸時代の日本と同じく、免許医と呼ばれる簡単に資格を取得出来る能力の低い医師がいたようです。

江戸時代は医者だと名乗れば、何の知識が無くても成れたようですので、それよりはましですが、現代のように高度な教育と実習を受けなければ医師免許が得られないのに比べれば、ずいぶんとハードルが低いように感じました。

セリーヌの叔母、シャルロットは恐らくそんな免許医にカモにされ、結局亡くなったようです。

そんな経緯もあり、セリーヌは医師に対して苦手意識を抱いていました。
しかし、彼女がパリで出会った医師、オーギュスタンは患者を救う事に力を注ぐ立派な医師で……。

このブログでも何度か書いていますが、エピソードを読んでいてやはり職業や人種、性別、国などで人をカテゴライズする事は無意味だなと感じました。

結局人は職業、人種、男女、国の違いは関係なく、尊敬出来るかどうかは個々人のひととなりではないでしょうか。

目の前の事に真摯に向き合い、誠実さを持ち取り組む。
相手によって態度を変える事無く、誰にでも平等に接する。
理不尽や不正に対して憤り、怒り慰める。

どんな職業であっても、そんな風に生きている人は尊敬出来るし、逆の場合はどんなに社会的地位が高くても尊敬に値しない。

患者に向き合い、心身ともに癒そうとするオーギュスタンの行動を見ていて、そんな事を思いました。

まとめ

今回のラスト、女好きのトマにデートを申し込まれたセリーヌ。
トマが興味を持ったのはセリーヌが古代ギリシアの哲学者、エピクテトスの本を読んでいたからで、彼の女好きの食指が動いたというわけではなさそうですが……。

トマとのデートがどうなるのか。
次回も楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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※イメージはPixabayのedmondlafotoによる画像です。
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