ブルージャイアントエクスプローラー 8 ビッグコミックススペシャル
作:石塚真一
出版社:小学館
後に世界的なサックスプレイヤーとして名を馳せる、宮本大の軌跡を描いた作品。
そのアメリカ編。
黒人の巨漢ドラマー、ゾッドをメンバーに引き入れ、ホンダと交換で手に入れたダッジの箱バンでジャズ生誕の地、ニューオーリンズへ辿り着いた大たち。
そのニューオーリンズで大はレジェンドプレーヤーでアメリカでもトップグループの一つ、ピアノのデレク・マーティンが中心のカルテットのライブにゲスト出演する事となり……。
登場人物
デレク・マーティン
髭にハットの黒人ピアニスト
彼のプロデューサーが大達三人のライブを見て、勢いのある大に目星を付けた事で、デレクのカルテットのライブにゲスト出演が決まった。
アメリカでもトップグループの一つという事で、演奏は洗練されとてもおしゃれ。
彼はソロの時間はどんなに客が盛り上がっていても守るように大に告げるが……。
デレクのカルテットメンバー
ギター、ベース、ドラムの三人、全員黒人男性
ソロの時間を破った大に表面上は注意しつつも、内心では面白がっていた。
ジョー・ハーティング
マイアミ在住のベーシスト
ゾッドの知り合いの白人ベーシスト。
アルコール依存症で常に酒を飲んでいる。
ベースに寄りかかるような独特のスタイルだが、客の欲しい音を一瞬で見抜き酔わせる天才肌のプレーヤー。
あらすじ
ニューオーリンズのレジェンドプレーヤー、ペイトンの手引きで大達はジャズの街で多くのライブを行う事が出来た。
その演奏は大物プロデューサーの目にも止まり、大はジャズ界のトップグループの一つ、ピアニストのデレクのカルテットのライブにゲストとして出演する事が決まった。
デレクのジャズはスタイリッシュでお洒落。
演奏のスタイルは、それぞれのソロがどんなに受けても持ち時間は厳守、アンコールも予定した一曲のみというものだった。
大はこれまで全員での演奏はもちろん、ソロの部分にも全力を注いできた。
客が求めているなら、それに応え全てを出し切るスタイルでやってきたのだ。
そんな大は当然、デレクに食い下がるが彼が首を縦に振る事はなかった。
そしてライブが始まり、ゲストの大も最初は彼らの音に合わせ大人しくしていた。
やがて大のソロが回って来た。
始めは予定通り吹いていた大だったが、おもむろにシャツのボタンを外すと、デレクとの約束を破り、これまで続けて来た彼のやり方、持っている全てを吐き出すような音を鳴り響かせた。
感想
今回はニューオーリンズでのピアニスト、デレクのライブにゲスト出演するエピソードから始まり、ニューオーリンズの人々との別れ、フロリダ最大の都市、マイアミへ、マイアミを楽しむアントニオといつも通りな大、受けない大のサックス、アル中ベーシスト、ジョーとの出会い、自身に変化を求める大とシェリルとの再会等が描かれました。
その中でも今回はマイアミで受けない事に悩む大と天才肌のベーシスト、ジョーの出会いが印象に残りました。
大はこれまで客が求める音ではなく、自身が一番いいと思う全力の音で演奏をしてきました。
大の勢いのある演奏は客を魅了し、感動を与えてきましたが、マイアミではそのストイックな演奏は受け入れられないようでした。
作中、アントニオが言うように大の音楽は周囲に同調するものではなく、これが自分の音だと提示するものというのが大きい様に思います。
アントニオは客の反応を見て演奏を変え、それに対応し、新たにバンドに加わったジョーも瞬時に客の要望を見抜き、演奏に反映していました。
これまで強い音に拘り、自分を曲げる事の無かった大。
大をして天才だと言わしめたジョーとの出会いが、彼にどんな変化をもたらすのか。
続きが楽しみです。
まとめ
この巻の終盤、大はオレゴンで出会った女性、シェリルと再会しました。
彼女との食事を楽しんだ大は、車を流しながらジョーに勝つために変わる事を決めた事、変わる事とは自分にとって足すことだとシェリルに語ります。
大の言う足す事というのが、どんな意味なのか。
それで変化する彼の演奏とは。
足された大の音がどうなるのか、読むのが楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。