異世界猫と不機嫌な魔女 1 ビックコミックス
著:柏葉ヒロ
出版社:小学館
聖暦一二〇六年、グリフォード王国。
そのはずれにある町、ダルメイアから更に外れた戻らずの森で、一人の老女が大樹をリフォームした家に暮らしていた。
人々から魔女と忌み嫌われるその老女の家には一匹の巨大な猫がいて……。
登場人物
ジャンヌ
戻らずの森、奥深くで一人暮らす老女
元は異世界から勇者を召喚し、その勇者と共に魔王を倒した強大な魔力を持つ魔導士だった。
しかし、現在はその魔力も封じられ魔法薬を売って細々と暮らしている。
ナァ
ジャンヌが召喚した異世界から転移(転生?)したぶち猫
ジャンヌ達が小さいのか、ナァが転生の影響で巨大化したのか、ともかく体の大きさは馬車ほどもある。
行動は完全に猫。
モフモフで柔らかい。
元の世界ではトラタと呼ばれ可愛がられていた。
勇者
ジャンヌが異世界から召喚した黒髪の青年
五十年前、ジャンヌと共に世界を旅し、魔王を打倒した。
彼はその旅のあと、ジャンヌと一緒に暮らすつもりだったようだが、なぜかグリフォード王国の王女と婚約し、ジャンヌは魔力を封じられ戻らずの森で一人過ごす事となった。
あらすじ
トラックに轢かれ気づけば老女ジャンヌの目の前にいた猫のナァ。
愛想のないジャンヌが用意してくれる餌が口に合わなかったりするが、ともかくとしてナァはしばらくジャンヌの家で過ごす事に決めた。
その日の食事を終えた後、ジャンヌはナァを伴い地下室へと向かった。
そこはナァが召喚された部屋だった。
床に書かれた魔法陣の上には召喚の衝撃で魔導書らしき本が無数に散らばっている。
「さっさと片づけるよ」
ジャンヌはナァに本をかき集めてくれと頼む。
しかし、基本ただの猫であるナァが仕事をするはずもない。
「これ。何をボサッと寝てるんだい。守護獣は主人(マスター)の命に従い、忠実に働くものだろう」
“マダム、それは犬ですよ”
「まったく……空は飛べない。炎は吐けない。おまけにやる気もないときたもんだ」
文句が多くて愚痴っぽくて、いつもすこぶる機嫌が悪い。
そんなジャンヌの様子に、もう出て行ってしまおうかとも思う。
だが、ナァには時折ジャンヌが見せる遠い視線が気になった。
以前、自分を可愛がってくれた老女はトラタ(ナァ)をなでると幸せな気持ちになると言っていた。
その事を思い出したナァはジャンヌの前に頭を突き出した。
「……なに? なんの真似だい」
意味が分からないジャンヌに、ナァは頭をズイズイと寄せる。
そんなナァの頭にジャンヌは左手を翳した。
「服に毛がつくから、離れとくれ」
冷たく言い放たれたジャンヌの言葉に、ナァは自分は間違ったようだと、がっくりと肩を落とすのだった。
感想
強力な魔力を宿すがゆえ、家族に疎まれ国にその身を売られた少女、ジャンヌ。
やがて成長した彼女は異世界から勇者を召喚、守護獣であるドラゴンとともに勇者を助け、魔王討伐を果たします。
しかし、その魔力の強大さは平和な世界に厄災をもたらすと力を封じられ、辺境の戻らずの森で余生を過ごすこととなりました。
そんなジャンヌが賊に襲われ苦し紛れで召喚したのが、異世界(日本)でトラックに轢かれた猫、ナァ(トラタ)でした。
戻らずの森に住み不愛想で陰気な雰囲気のジャンヌは、町人から魔女と呼ばれ忌み嫌われていました。
その為か、彼女は人との交流を諦めているようでした。
そんなジャンヌにお構いなく、ナァは自由に心のままに行動し彼女に寄り添い……。
大切な人を亡くしたナァと大切な人と人生を生きれなかったジャンヌ。
寄り添う一人と一匹の様子がとても暖かかったです。
まとめ
この巻の終盤、ナァが騎士団を撃退した事で次回はジャンヌの下に刺客が送り込まれる模様。
血生臭い雰囲気のその刺客が何を成すのか。
次巻も楽しみです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。