クマ撃ちの女 10 BUNCHコミックス
作:安島薮太
出版社:新潮社
シカ猟のレクチャーをチアキに頼んだ大学生の中野(なかの)。
彼女の頼みを聞き入れ、チアキは中野を伴い雪の山へと足を踏み入れる。
シカを探しアザラシの皮を張ったゾンメルスキーで雪道を進むが、その道中、中野の問題点にチアキは次々とダメ出しをして……。
登場人物
宮下(みやした)
シカ狙いの女猟師
黒髪ロングで細目の女性。
半矢のシカを追ってチアキたちの前に現れる。
シカ猟に特化しているようで、クマ狙いのチアキよりも猟果は豊富なようだ。
あらすじ
経験の少ない中野と共に山に入ったチアキは、自身が狩猟で得たノウハウを自分なりの言葉で教えていく。
その中には中野が持ってきたおにぎり等、カズキの事を思い出す場面も多々あった。
チアキは中野が望んでいるシカ猟は専門ではなかったが、それでも自分がシカならどうするか、冷え込む朝にどこで寒さをしのぐか等、お金になるシカ狙いのハンターたちの事も含め伝えていく。
そうこうしているうち、時刻は昼を過ぎた頃。
チアキは木立の中、うずくまる二頭のシカを見つけた。
中野に黙るように伝え、シカを指さす。
しかし、慣れない中野にはシカの姿は視認出来ない。
ジェスチャーでこの先に二頭いる事を中野に伝えるが、彼女にはどこにシカがいるのか、まったくわからないようだった。
その事に少し苛立ちながら、チアキはシカの注意を引くため近くの枝をおもむろに折った。
その音でシカが立ち上がった事で、ようやく中野にもシカの姿が視認出来た。
だが、中野は感心するだけで一向に銃を構えようとしない。
「撃って!」
「あ……!」
チアキの言葉で目的を思い出した中野は、慌てて銃を構え引き金を引いた。
だが弾丸はシカの上の枝を弾いた。
発砲音と弾けた枝に驚き、シカは駆け出す。
「すいませんっ……!」
中野の射撃に眉を顰めつつ、チアキは息を吸い込む。
「ちょっと待って!!」
森に響いたチアキの声に、シカたちは思わず立ち止まりこちらに視線を向けた。
「えっ!?」
「え!」
「え」
「撃てよ!!」
「あっ! ああっ!!」
シカを指さし声を上げたチアキの言葉で、中野は慌てて引き金を引いた。
感想
今回は狩猟初心者の大学生、中野を伴ったシカ撃ちのレクチャーから始まり、違法の射撃訓練、中野の射撃の問題点、ホワイトアウト、宮下との出会い、中野の目的とチアキへの不満、雪崩等が描かれました。
その中でも今回は中野の射撃が当たらない理由、フリンチング(発砲の衝撃を体が怖がり、無意識に体が反応する現象)についてが印象に残りました。
中野は射撃場でガンレストを使い射撃訓練を行っていました。
ガンレストに固定する事で、銃からの反動はほとんどなく、重心がブレる事もありません。
しかし、山に入り獲物を撃つなら、チャンスを逃がさずどんな体勢でも撃てるように訓練する必要があります。
立射、動的射撃、膝撃ち。
発砲の衝撃は大きく、銃の重さも手伝って照準はブレて止まる事はない。
作中、チアキの仕業でカラの銃を撃ち、派手に前方にこけた中野を見て、発砲の衝撃って凄いんだなぁと改めて感じました。
まとめ
今回のラスト、チアキたちは雪崩から逃げるヒグマと共に雪に飲まれる事になりました。
決裂した子弟関係も含め、二人がどうなるのか。
続きが楽しみです。
こちらの作品はくらげバンチにて一部無料で閲覧いただけます。
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お読みいただき、ありがとうございました。