赤ずきんの狼弟子 3 講談社コミックス
著:茂木清香
出版社:講談社
獣人、人間、狩人、三種の人が住む世界で、本来狩る側と狩られる側の二人が師弟になる物語。
ブルーノの街で起きた失踪事件。
それは狩人の女性、メルキャンディが起こしたものでした。
彼女は娘を亡くしており、人間が子供を捨てる事に憤り、事件を起こしたのでした。
事件を解決したウルとマニは、二人の家である嘆きの大樹に帰ってきました。
第11話 若芽は月に向かって登っていく あらすじ1
家に戻った二人、マニがなにか言っている。
ウルは何とか読み取ろうとし、それがただいまであることを突き止める。
正解である事に喜び、マニは続けて何か言った。
おそらくおかえりであろうそれに、ウルはお前もおかえりとかえした。
この言葉をいうのも久しぶりだとウルは思う。
長く一人で生きてきたウルは、そんな挨拶をする事も久しくなかった。
家を走り回るマニの襟首をつかみ、一緒に風呂に入る。
風呂から上がったマニは、ウルの狼の毛皮もお風呂に入る?と毛皮を湯船につける。
乱暴に扱うなとウルに叱られたが、マニは毛皮の中身がどこに行ったか気になった。
食事の支度を手伝い、準備が出来たあとウルにそのことを尋ねるが、マニの言葉を聞き取れないウルにそれを伝える事は難しい。
そこに伝書鳩が手紙を届けにきた。
手紙はブリュンヒルデからで、ブルーノの依頼について解決してくれた事に対する感謝と、こちらに到着するのが遅れる旨が記されていた。
わざわざ知らせて来るとは、律儀な奴だとウルはマニに手紙を手渡す。
手紙を見ながらマニはある事を閃く。
マニはウルに手紙を見せながら、文字を教えて欲しいと訴える。
言葉ではなく文字でか、しかし…と言いながら、ウルは万が一ということもあるとマニに文字を書いて見せる。
彼は二人の名前を書いて、書いてみろとマニにペンを渡した。
マニはペンを手に、ウルとおはなし出来ると喜ぶが、書かれた文字はマニには酷く歪んで見えた。
目をこするマニに、ウルはやはり駄目か声をかける。
獣人は優れた身体能力と引き換えに、文字を識別できないのだとウルは話した。
しょげるマニにウルは、種族毎に得手不得手があるのは当たり前だと慰めた。
そして本が読みたいなら、俺が読んでやる。不得手なものを無理して会得する必要はないと話した。
マニはそう言うウルを見上げ、ウルに聞きたいことたくさん、ウルとおはなししたいと呟いた。
あらすじ2
食事が終わると、食器を片付けているマニに、ウルは特訓するぞと声をかける。
彼は、ブルーノでマニが、与えた弓矢を使わなかった事を危惧し、彼女が敵に対し矢を入れるように、訓練しようと思い至ったのだ。
これを見ろとウルは狼のぬいぐるみを取り出した。
アンナの店で特注で作ったらしい、可愛いぬいぐるみにマニは尻尾を振って喜ぶ。
ウルはそれをおもむろに切り株にのせ、手にした弓で射抜いた。
マニは驚きひどい事しないでと、ウルをぽこぽこと殴るが、彼はマニが何に怒っているのか分からず、特訓用に強い布で作ってあるから、繰り返し使えると解説する。
そういう事じゃないと首を振るマニに、ウルは人体の構造が分かるように、中身も再現してあると、ぬいぐるみのファスナーを開け、布製の臓器を取り出した。
悲鳴を上げて耳を押さえるマニに、特訓は中止しないとウルは話す。
彼は、マニの優しさは長所だが、生き延びるためにはそれだけではだめだと、ぬいぐるみの代わりに俺を射てと自分が切り株に座った。
矢は止められるから安心しろとウルはマニに話す。
彼は他者を好んで害する為ではなく、守りたいものが出来た時、ためらわず動けるようになって欲しいと、この特訓をするのだと語った。
たとえ、狩るものがどんなものであったとしても…。
だからと話すウルに、矢が射られる。
マニはウルを真っすぐ見て矢を放っていた。
その矢を右手でつかみ取り、その調子だとウルは笑みを浮かべた。
三時間後、厳しい特訓に息を荒げるマニを連れ、大樹の上に向かう。
遅れ気味なマニに、人狼の能力はその程度かと発破をかけると、彼女はムッとしてウルを追い抜き、大樹を上り始めた。
その調子だと声かけながら、以前は崖の高さに怯えていたのにとウルは思う。
マニの後ろ姿を見ながら、お前はどんどん成長していくなとウルは感じるのだった。
大樹の上で、巨大な猛禽ヴェルズにマニを紹介しながら、二人は空を見た。
丁度夕陽が沈む時間だった。
“太陽の女神が黒いドレスと身に纏う”この辺りでは日没の事をそう表すとマニ教えながら、ウルとマニは夕陽を眺めた。
太陽が沈めばとウルは、マニに後ろを見るよう促す。
振り返ったマニの目には、巨大な月が写っていた。
マニはその大きさに目を真ん丸に見開いている。
気象条件が重なると、月が近く見えるのだとマニに教え、マニという名も月をという意味だとウルは彼女に話した。
マニは月を見ながらうずうずする自分を抑えられず、深呼吸して深く息を吸い込んだ。
ウルは空気が震えた気がした。
マニの遠吠えは大樹を揺らし、休んでいた鳥達を飛び立たせた。
マニは振り返り、ウルに強くて立派な弟子になるから、ずっと一緒にいてねと話した。
振り返ったマニを見てウルは思う、彼女が一人前になったら離れなければと、強い獣人程、狩人にとっては魅力的な獲物になる。
狩人としての本能が、マニを獲物と認識する前に別れなければ。
俺達の関係は永遠ではない―。
家に戻ったウルは姿の見えないマニを探していた。
部屋で見つけたマニは、スケッチブックに何かを大量に書いて書き疲れ、ペンを手にしたまま眠っていた。
書かれたものが自分の名前だと気付いたウルは、練習するなら自分の名前からだろうにと、マニを抱き上げベッドに運ぶ。
毛皮を手渡し、それを抱きしめるマニを見つめ、もっとゆっくり大人になっていいんだぞと彼は呟いた。
翌朝、目覚めたマニはウルを起こそうと彼の肩を叩く。
その手がいつもとは違っていた。
マニは完全に獣の姿になっていた。
今回の見どころ
・マニの宝物
獣になったマニはスプーンを上手く使えず、それをウルは使う必要が無くなっただけだと諭します。
しかし、マニにとってスプーンの使い方も、弓の使い方も、人間の街に行ったことも、ウルがくれた大切な宝物でした。
涙を浮かべてそう訴えるマニがとても愛おしく感じます。
・狩人の誓い
ウルは狩人の本能により、マニを狩ってしまいそうになる自分を抑え切れず、マニから離れる事を決断します。
しかし、マニはウルを一人にしないと彼の後を追い、一緒に居たいと彼の手を取ります。
ウルはマニの覚悟を知り、自分が再び暴走したら、その時はお前が自分を狩れとマニに告げます。
その言葉に頷いたマニに、彼は二つ名を与え、狩人の誓いを立てさせました。
マニの誓いはウルには聞こえていませんが、どんなことになってもウルの側にずっといて、彼を守れる強い狩人になるというものでした。
ずっと一緒にいてくださいと宣言するマニの、ウルに対するマニの強く想いが感じられるエピソードでした。
※上記はあくまで私見です。
まとめ
雑誌連載が終了してしまうのが、とても残念な作品です。
幸い続きは同人誌で読めるようですので、引き続き購読したいと思います。
この作品は雑誌連載としては三巻で終了です。
以降は同人誌として発表されるそうですので、気になる方は下記のリンクから、茂木清香さんのツイッターをチェックしてみてください。
茂木清香さんのツイッターはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。