へんなものみっけ! 8 ビッグコミックス
著:早良朋
出版社:小学館
今回は事務局長、財前(ざいぜん)の友人荒波(あらなみ)の他、清棲(きよす)たちの調査に協力してくれている漁師の貴明(たかあき)等、人の死について考えさせられました。
余り知られていない博物館の裏側を描いた作品です。
登場人物紹介
荒波蒼(あらなみ あお)
事務局長、財前の大学の同期
大学時代はダイビングが趣味で財前と共に沖縄旅行を行ったりもしたが、現在は病で病床についている。
ラーメン屋のおじさん
神社の娘、銀子の実家、奏山稲荷の前に屋台を出している。
銀子はその屋台のラーメンに救われてきたようだ。
首輪仁(しゅわ じん)
奏山水族館の飼育員兼学芸員兼研究者
白髪の壮年男性。
仕事柄、観察グセがあり、疲れた人を見るとビタミン剤を調合して手渡してくれる。
博物館の研究員、鳴門(なると)の前任者は親友で、その縁で鳴門とも親しくしている。
水上こはる(みずかみ こはる)
水族館の飼育員、引退する首輪の後任
茶髪ポニテの若い女性。
自分の興味のある事以外に時間を割きたくないタイプ。
貴明(たかあき)
北海道、釧路で漁師をしている男性
白髪頭の老人。
体の調子が良くないらしく、清棲達の調査協力を大学からの友人である祐介(ゆうすけ)に引き継ごうとするが……。
祐介(ゆうすけ)
貴明の大学時代からの友人
白髪交じりの黒髪の老人。
彼も釧路で昆布の養殖をしている。
最近、いろいろと自分に投げる貴明に苛立ちを見せる。
山里万里(やまざと まり)
成績優秀な小学生
黒髪おさげの女の子。
模試で一位を取ったりと成績はとても優秀で、勉強にも自分から取り組む等しているが、彼女自身は努力しているつもりはなく、焦りたくないから習慣づけているだけのようだ。
塾帰りに見たさくらの花の落ち方に興味を抱く。
織部誠(おりべ まこと)
絵本作家、四季百花(しき ももか)の編集担当
オールバックで眼鏡の青年。
絵本の企画のため、四季と共に様々なフィールドワークを行っている。
四季百花(しき ももか)
興味を持った題材を調べ、それを絵本にする作家
たれ目の年配女性。
今回はハリオアマツバメに興味を持ち、その生態について知りたいと博物館を訪れた。
各話あらすじ
第63話 星を背負う魚
奏山水族館でジンベイザメが公開される事となった。
その話題で盛り上がる一同に、昼休みは終わりだと釘を刺した事務局長の財前。
そんな彼を訪ねて大学時代の友人、荒波の妹が博物館を訪れる。
荒波はダイビングが趣味で、大学時代は財前と共に沖縄までジンベイザメを見にいったほどだ。
妹の話ではその荒波は現在、病を患いダイビングが出来ない体になったという。
妹は彼を元気づけようと荒波を水族館へ誘ったが、彼は行く気はないらしい。
彼女は大学時代、共に沖縄に旅行した財前ならそんな荒波を連れだせるのではないかと考えたのだった。
第64話 生き物からの贈り物
寒さの堪える夜、博物館の帰り道、透(とおる)は奏山稲荷の前で屋台を出しているラーメン屋を見つける。
企画展の調べモノで遅くなった事もあり、透の腹は盛大に鳴った。
そんなわけでバイクを止めて屋台の暖簾を潜った透は、そこで神社の娘、銀子と出会う。
銀子はラーメン屋の常連らしく、彼女いわく、何度もこの味に助けられてきたそうだ。
オーソドックスなラーメンに舌鼓を打ち、店を後にした透に隣を歩いていた銀子が問いかける。
彼女の問いかけ、それは年上の男性へのプレゼントについてだった。
第65~66話 海の守り人(前後編)
水族館へ博物館の海洋生物研究者、鳴門と共に寄贈品を受け取りに来た透。
彼はそこで飼育員である首輪を紹介される。
首輪は鳴門の前任者と親友であり、その縁で鳴門とも長く研究者として付き合いがある人物だった。
その首輪ももうすぐ引退。
そこで後任として水族館の飼育員、水上を紹介されるのだが、博物館とのパイプ役をやって欲しいという首輪の言葉に、彼女はめんどくさと眉を寄せたのだった。
第67~68話 立つ鳥(前後編)
北海道、釧路の近海、布袋島でのオオセグロカモメの数の調査。
釧路湿原の猛禽保護センターの獣医、大地と博物館の鳥類・哺乳類研究者、清棲(きよす)は学生時代から地元漁師の貴明の協力で、個体数の調査を行っていた。
近年は人手不足で調査が行えていなかった。
その間にカモメの数は激減したようで……。
今回の調査はその激減の理由を調べるという側面も持っていた。
しかし、その調査に協力してくれていた貴明は体調が芳しくなく、船を出すのは今回が最後にして欲しいと清棲達に告げる。
その代わりに友人の祐介を紹介すると、彼の家へと向かうが祐介は貴明の頼みに苛立ちを見せ……。
第69話 水中に夢中
透の企画展に向けて寄贈された品々。
その中には扱いの困るモノも含まれていた。
例えば海中から見つかったという、割れた陶器のかけら。
どうしたものかと頭を抱える透に民俗学の研究者アメリは引き上げられた物によって判明した、様々な成果を伝える。
第70話 未来の花
中学受験のため、学習塾に通う小学生、山里万里。
勉強を習慣づけ模試でも一位を取るなど、順調な彼女には最近気になる事があった。
それは塾帰りの道で見かけた桜の花。
普通、さくらは花びらを散らすもの。
しかし、万里がみた桜は花の形のまま、地面に落ちていた。
今はそんな事に時間を割いている場合ではない。
そう思いつつも、どうしても桜の事が気になり、万里は睡眠不足になってしまうのだった。
第71話 科学と詩(前編)
その日、博物館には絵本作家の四季百花と編集者の織部誠が訪れていた。
四季は興味を持った対象をフィールドワークして調べ、それを作品に落とし込むタイプの作家だ。
その担当である織部も、四季に感化されたのか熱心に彼女の取材へと同行していた。
今回は四季が北海道旅行で見かけ惚れ込んだ、ハリオアマツバメについて聞きたいと博物館を訪れたのだった。
感想
今回は冒頭、事務局長、財前の友人、荒波のエピソードと、釧路の漁師、貴明のお話が印象に残りました。
財前の友人、荒波は恐らく末期がん。
貴明も余命一年らしく、命の終わりが見えているようでした。
若いころはいずれ死ぬとしても、それは遠い未来の話だと感じていました。
ただ、年を重ね周囲で知人の訃報を聞くようになると、存外それは身近なモノなのだと感じるようになりました。
いつか終わるとして、自分が何を残せたのだろうか。
その時が来ても悔いのないように毎日を生きよう。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
今回のラスト、絵本作家の四季と織部は清棲のハリオアマツバメの調査に同行を申し出て……。
マイナーな鳥の絵本の出版に懐疑的な織部の会社社長。
織部は彼を納得させられるのか。
後編が早く読みたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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