あおのたつき 7 ゼノンコミックスBD
著:安達智
出版社:コアミックス
新吉原京町二丁目、羅生門河岸の角、九郎助稲荷のその奥。
浮世と冥土の境となる場所に冥土の花街があるという。
今日もそこに道に迷った亡者が一人。
登場人物
文七(ぶんしち)
日本橋の地本問屋「耕書堂」の手代
顔を無くしのっぺらぼうだったが、楽丸の術で自分で描いた似顔絵を当座の顔とした。
酔っ払い川に落ち、薄神鎮守堂を訪れる。
地本とは江戸で出版された大衆本。
絵師として才能はあるが、偏屈で自分の描きたいものしか描かない創次郎を世に出せなかった事を悔やんでいる。
創次郎(そうじろう)
売れない絵師
ざんばら髪で暗い目をした男。
絵師としての技量は高いが、生首やしゃれこうべ等、いわゆるスプラッターな絵を主に描くため、人気はまるでない。
自分の絵が認められない事に憤りを抱き、世間を憎んでいる。
あらすじ
妹のおコウに会いたい一心で吉原から逃げ出そうとした花魁、濃紫(こむらさき:あお)。
しかし彼女が脱走に使おうと考えていた水路は、既に修繕がなされていた。
店から逃げた事がバレ、吉原の裏路地に身を潜めた濃紫を見つけたのは、客の一人権八(ごんぱち)だった。
権八は濃紫から脱走を企てた理由を聞き、コウの居場所を探ってやろうと彼女に持ち掛けた。
その言葉に濃紫は何でもするから頼むと、彼の提案に飛びついた。
その後、濃紫の足抜けは権八との駆け落ちが目的だった事になり、部屋持ちに格下げになったものの、命までは取られずに済んだ。
また一からやっていこう。
権八がコウを探し出してくれれば、あの子が自分に会いに来ることだって出来るはずだ。
そんな希望を胸に、濃紫は気に入らない客の相手をしながら、権八が店にやってくるのを待った。
そしてようやく、待ちに待った権八が廓を訪れた。
コウの居場所を尋ねる濃紫を権八は臥所に押し倒した。
「なんでも言うことを聞くと言ったな?」
そう言うと権八は紙包みをスッと差し出した。
余興がしたい。
権八が差し出したのは曼荼羅華(まんだらけ:朝鮮朝顔)の粉末だった。
「こいつを女に飲ませると、言うことをよく聞くもんでなぁ」
そう言った権八の顔には欲望にまみれた笑みが浮かんでいた。
感想
今回は濃紫(あお)の死の経緯から始まり、長かった修験編の終わり、今で言う出版社、地本問屋の手代、文七と売れない絵師、創次郎のお話等が描かれました。
その中でも今回はあおの死の原因を作った権八が印象に残りました。
廓はどこまで行っても化かし合い。
濃紫に薬を使った権八も、そんな廓の雰囲気に毒されていたように感じました。
廓の女に真は無く、自分に靡かない濃紫を自分のものにしたいと権八は考えたようでした。
しかし、濃紫が真実想うのは妹のコウだけ。
薬を使い他者の心を自分に向けさせても、虚しいだけ。
支配欲を暴走させた権八を見ていて、そんな事を思いました。
まとめ
この巻で修験編は終わり、あおと楽丸は再び亡者を導く仕事を続ける事になりました。
どこかの私娼に売られたらしいあおの妹のコウ。
彼女とあおが再会出来る日は来るのか。
あおの死の原因を作った権八はどうなったのか。
色々、気になります。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。