宝石商のメイド 3 MFC
作:やませちか
出版社:KADOKAWA/MFC
メイドが宝石を売る店「ローシュタイン」
大通りから外れた新参のその店に自分にふさわしい宝石との出会いを求め、客達は訪れる。
登場人物
レオン・ヴァーハルト
新聞記者
左目の下に傷を持つ金髪の青年。
店主、アルフレッドの友人。
元は貴族だったが父親の不正を告発し、実家から絶縁された。
その一件で新聞社に勤める事となる。
ヨハン・シュミット
宝石研磨士
金髪髭の壮年男性。
シャーリク王国の王族、カーミェニ家に仕えたファベルの工房の研磨士。
シャーリク王国は現在、政情が不安定で工房も閉鎖。
働いていた職人たちも国を出て、他国へと散ってしまった。
工房時代、世界最大のダイヤモンドを磨く等、高い技術を持つがエリヤの国に移住した現在は宝石の仕事を拒否している。
紅茶好き。
ジェームス・ヴァレンタイン
国際ジュエリー協会会長
眼光の鋭い口ひげのおじさん。
年に一度開催される宝石業界の人々を集めた夜会を主催している。
その夜会に今年はエリヤを招待し……。
余興好き。
あらすじ
その日、宝石店「ローシュタイン」を訪れたのは金髪で左目の下に傷のある男だった。
男はフライハイトタイムズ社の記者、レオン・ヴァーハルトと名乗り、ローシュタインへ取材を申し込んだ。
ローシュタインのメイド、エリヤはその申し出を丁重にお断りした。
店主のアルフレッドの目的は有名になり儲ける事ではなく、石を本当に必要としている人に届ける事だ。
エリヤの返答を聞いたレオンは宝石商なのに儲けたくないとは、店主は相当な変わり者なのだろうと肩を竦めた。
「変わり者の店主で悪かったな」
レオンの声を聞きつけたアルフレッドが仏頂面で店に顔をだすと、レオンは久しぶりだなと笑みを浮かべた。
新聞記者、レオン・ヴァーハルトは店主アルフレッドの友人だったのだ。
その後、レオンは珍しいメイドの宝石商、エリヤに取材を申し込み、恥ずかしいからと断られたりしながら、宝石関係のネタについてアルフレッドに尋ねる。
「なんかいいネタないのかよ、例えば今話題の『ラウラ夫人の首飾り事件』についてとかよ」
夫人が窓辺に置いた一瞬の隙に消えたネックレス。
そのネックレスは貴重なスピネルを用いたジュエリー名鑑にも載る逸品だ。
盗まれたアクセサリーは、宝石を外され再研磨(リカット)されて売られる事が多い。
また、再研磨されなくても刻印のない石は証明が難しい。
特徴が一致しても、同じような石がないとは言えないからだ。
少なくともローシュタインで最近エリヤが買った石に、似たモノはなかった。
そんなエリヤたちの話を聞いて、レオンは礼を言い、新たなネタ探し行くと店を去った。
感想
今回は、冒頭、新聞記者レオンの来訪とラウラ夫人の首飾りのエピソードから始まり、偏屈な研磨士と紅茶、エリヤと夜会と余興好きな会長、メイドとお祭り等が描かれました。
その中でもレオンと首飾りのエピソードが印象に残りました。
作中、エリヤは所在不明になった首飾りを偶然発見します。
首飾りには懸賞金が懸けられていましたが、エリヤは名乗る事無く、警官に落とし物として届け出ました。
彼女の望みはお金や名誉ではなく、これまでと同じく、穏やかな暮らしを続ける事。
もし名前を出し懸賞金を受け取れば、注目を浴び静かに暮らしていけなくなる。
店を訪れる客と宝石の話をして、午後はゆっくりとお茶を楽しむ。
そんなエリヤの日々を見ていると、確かにお金には代えがたい豊かさがあるな。
エピソードを読んでいてそんなことを思いました。
まとめ
今回、エリヤは宝石業界の夜会に出席し、主催者である国際ジュエリー協会会長ジェームスの出した問題(宝石の鑑定)に全問正解しました。
その事でエリヤは参加していた招待客の他、夜会に呼ばれていた新聞社の人間からも注目を浴びる事になり……。
穏やかな生活を望むエリヤ。
夜会の一件で彼女の暮らしがどう変わるのか。
次巻も読むのが楽しみです。
こちらの作品はコミックウォーカーでも一部無料で閲覧頂けます。
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お読みいただき、ありがとうございました。