メダリスト 7 アフタヌーンKC
作:つるまいかだ
出版社:講談社
二回転アクセル、オイラー、三回転サルコウ。
最後のジャンプをコンビネーションにし全日本ノービスA予選中部ブロック大会での優勝を決めたいのり。
そのことで全日本選手権への切符を手に入れたいのりだったが、選手権で戦うことになる狼嵜光(かみさき ひかる)に勝つためにはサルコウよりも難易度の高い三回転ジャンプ、フリップとルッツが必須だった。
コーチの司(つかさ)はいのりに三回転ジャンプの感覚を覚えさせるため、ジャンプ専門のコーチを呼び……。
登場人物
魚淵翔(うおぶち かける)
ジャンプ指導を専門にしているコーチ
32歳とは思えない童顔の青年。
選手を吊り上げるハーネスを使い、ジャンプの感覚を選手たちに伝える。
日本のクラブのジャンプのレベルを底上げしようと、フリーで日本中を飛び回っている。
ライリー・フォックス
スターフォックスFSCのコーチ
金髪碧眼で可憐な雰囲気の美女。
女子シングルオリンピックメダリスト。
現在は日本でクラブを立ち上げ、後進の指導に当たっている。
私生活ではカップラーメンに舌鼓を打ったり、元フィギュアスケート選手の芸能人、白鳥ジュナに歓声を上げたりしている。
胡荒亜子(こあら あこ)
スターフォックスFSC所属の12歳女子
お団子ゆるふわショートの女の子。
ノービス大会、東京ブロック第一位。
小雀白花(こすずめ きよか)
やまびこFSC所属の11歳女子
オカッパヘアピンでつやつやほっぺの女の子。
ノービス大会、北海道・東北ブロック第二位。
亜昼美玖(あひる みく)
十勝町レイクFSC所属の女子
黒髪まとめ髪の女の子。
ノービス大会、北海道・東北ブロック第一位。
シード選手ではないにも関わらず、点数ランキングで二位になった今大会の注目選手。
地元のスケートリンクの閉鎖により、大会を機にスケートを辞める事を決めている。
鴨川洸平(かもがわ こうへい)
十勝町レイクFSCヘッドコーチ
黒髪の青年。
元アイスダンス選手で司のクラブメイトで先輩。
現在は美玖のコーチとして彼女のプログラム等を決めている。
演技には完成度を求め、賭けには出ないスタイル。
白鳥珠那(しらとり じゅな)
元フィギュアスケート選手、芸能人
金髪で陽気な青年。
現在は芸能人としてCMに出演している他、美玖の振付師として十勝町レイクFSCにもかかわっている。
彼も司のクラブメイトで先輩。
あらすじ
ジャンプ専門の先生、魚淵翔。
彼の指導方法は竿の先のハーネスで選手を吊り上げ、ジャンプの感覚を学ばせるというものだった。
日本では一人のコーチがスケーティングからジャンプまで教えるが、海外ではそれぞれ専門のコーチがいるのが普通だ。
コーチの負担の大きさを考え、魚淵はジャンプ専門のコーチとして、フリーで日本中を回っている。
そんな彼の指導でクラブの選手たちは次々とジャンプのコツを掴んでいった。
いのりもその例に漏れず、その日の内に練習を始めたばかりの三回転フリップ、そして三回転ルッツを跳べるようになった。
選手たちにジャンプの感覚を学ばせた魚淵が去ったクラブでは、子供たちは彼の再訪を心待ちにしていた。
ハーネスという補助ありのジャンプは、彼らにとっても楽しい経験だったようだ。
そこで司は個人的にハーネスを買い求め、魚淵の動きを真似て選手たちにジャンプを指導することにした。
並走が基本の元アイスダンス選手だったこと、そして他人の動きを観察しフィードバック出来る司の能力で、彼は危なげなく選手たちを跳ばす事が出来た。
ただ、他の選手と違い、いのりのジャンプは幅が大きくその事に難しさを感じていた。
そんな不安を感じていた司は、いのりへの指導の際、氷につま先を取られる。
いのりに竿が当たるのを避けるため、司は竿を手放すことなく、そのままリンクに激突。肋骨を骨折するケガを負った。
そんな司を見たいのりは、気が付けば高回転のジャンプが跳べなくなっていた。
感想
今回は全日本選手権へ向けての武器、新たな三回転ジャンプ獲得のためのハーネスを使った訓練から始まり、司のケガといのりのイップス、再び跳べるようになるため魚淵のいる新潟へ、おしゃべりと車中泊、三回転と四回転、美玖との出会いと司の元クラブメイトたち等が描かれました。
今回はその中でも迫る全日本選手権へ向けて、三回転ジャンプではなく、四回転サルコウを選んだいのりが印象に残りました。
彼女はこれまでも自分が出来る最高の演技によって、勝利を掴んできたように思います。
それは薄氷を踏むように、賭けの部分が大きかった印象を受けます。
今回もいのりは難易度は高いですが、得意としているサルコウの四回転を自分で選択しました。
一方で司の元クラブメイトの洸平が教える注目選手、美玖はコーチの洸平にプログラムの内容を任せました。
選択肢を提示はしても、どれを選ぶかはいのりに任せる司。
方や演技の完成度にこだわり、美玖がどんなジャンプを行うか決定する洸平。
どちらのチームも信頼関係から成り立っていると感じましたが、自主性を重んじ、いのりの選択を重視する司と、美玖の実力を見極め失敗の少ない方法を選ぶ洸平が形もやり方も対照的なように感じました。
どちらのやり方が正解とかはないのでしょうが、個人的にはいのりの意思を尊重しそれを全力で後押しする司のやり方に好感を覚えました。
まとめ
この巻のラスト、いよいよ全日本選手権が始まりました。
いのりは実戦でも四回転サルコウを跳べるのか。
憧れのライバル、光はどんな滑りを見せるのか。
次巻も読むのが楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて第一話が無料でお読み頂けます。
作者のつるまいかださんのTwitterはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。