赤ずきんの狼弟子 1 講談社コミックス
著:茂木清香
出版社:講談社
獣人、人間、狩人、三種の人が住む世界で、本来狩る側と狩られる側の二人が師弟になる物語。
第1話 それは、ある満月の夜 あらすじ1
人間を襲う獣人が、手下も含め全て全滅している。
状況を話す兵士の先には、狼の毛皮を被った男が独り立っていた。
男は赤ずきんと呼ばれていた。
命乞いをする獣人を彼は容赦なく射殺した。
狩人である彼には、獲物である獣人の声は聞こえない。
聞かないのではなく、聞こえないのだ。
差し出された袋いっぱいの金の中から、一掴みだけ取ってその場を後にする。
無欲な彼の行動を人間たちは、狩りが出来ればいい「狩人」という種族の性だと話した。
それでも、狩人の中でも極端に不愛想である彼を、赤ずきんの由来、血の様な赤い髪が理由ではと噂した。
「赤毛は不吉」古くから伝わる言い伝えだ。
赤ずきんは壁に張られた手配書に、狩った証として返り血でしるしをつける。
ずらりと並んだ手配書は、全て赤く染められた。
街の住人が、殺人を犯していた獣人を狩ってくれた礼を赤ずきんに述べるが、彼はそれを嫌悪のこもった目で拒絶した。
彼は狩人の中でも特に人嫌いとして知られていた。
赤ずきんは森の奥の「嘆きの大樹(ブラッド・ツリー)」と呼ばれる、彼が狩った獲物の血で、染められた木に住んでいる。
そこには人間も獣人も近づかない。
森の中、住処への道の途中で、赤ずきんは何かの気配に気付く。
襲い掛かって来た小さな影は、石に躓いて転び、獣に吠えられてあたふたしている。
獣人の子供にしては鈍臭いと思いつつ、子供に声をかけ、矢を射る。
矢は子供の顔の横を通り過ぎ、吠えていた獣に命中した。
さて、と一声口にして、赤ずきんは子供をつかみ上げた。
頭の上にある耳の形から、なんの獣人か推測する。
狐?猫?涙目でこちらを見るその姿に、彼はある獣人の姿を思い浮かべる。
まさか、人狼…そう口にする赤ずきんの言葉に重なるように、少女の腹が盛大に鳴った。
顔を赤らめる少女は、腹の音はお前かと問いかける赤ずきんに、羞恥のためか小さな拳を振るう。
お前、俺を襲って食おうとしたな?図星だったか、顔色を変える少女に、赤ずきんは目を見開いてこう言う。
「俺に牙をむいた者を、無傷で帰すわけにはいかん」
彼は少女の首を掴み締め上げながら、生きたければ足掻け、出来なければ今ここで死ねと少女に語った。
赤ずきんはお前の生を俺に示せ!!と首にかかった手に力を籠める。
少女の牙は赤ずきんの指をわずかに傷付け、彼は反動で首から手を離した。
意識を失った少女が、生きている事を確認し抱え上げる。
もとより彼は少女を殺すつもりは無く、少し脅かして説教するつもりだった。
抱いた少女を見て、赤ずきんは似てるなと呟いた。
少女は、母親を探していた。
おいていかないで…ひとりにしないで…
むかえに来てくれないのは悪い子だから?
マニ、ちゃんとひとりで狩りして、一人前になったら
そしたら、そしたら…
マニはベッドの中で涙と共に目を覚ました。
窓から光が差し込んでいる。
彼女はここがどこか分からぬまま、窓から外を見た。
巨大な木の上に家がある。ここはその一室だ。
訳が分からず混乱するマニに、誰かが声を掛ける。
かけた人物が、自分が襲った狩人だと知り、声にならない悲鳴を上げる。
丁度いい、メシにするかと口にする狩人の言葉に、マニは自分が料理される事を想像し慌てふためく。
引きずられ、連れてこられた先で、泡塗れにされ、洗われる。
狩人は汚れたマニの服や、ベッドのシーツもまとめて洗うかと思案し、全て洗い干し終わると、マニと共に風呂に浸かった。
風呂から上がり、マニに服を着せ食事の支度を手伝わせる。
マニはへとへとになりながら手伝った。
テーブルに並ぶ料理は、キラキラと光を放っているようにマニには見えた。
手づかみで食べようとするマニを止め、狩人はスプーンの使い方をマニに教えた。
なれない手つきで口運んだ料理は、とても美味で興奮してそれを狩人に話すが、彼にその言葉は届いていないようだった。
懸命に食事が美味しかったと伝えようとするが、伝わらずマニは彼の言葉に従い、片付けを手伝った。
手伝いながら、食事の礼や美味しかった事、狩人の事を尋ねるが、彼が返事をする事は無かった。
おしっこをしたくなったマニは、ベッドの準備をしながらそれを彼に言うが、伝わらず耐え切れなくなり漏らしてしまう。
赤ずきんは、トイレに行きたいならそう言えとマニを叱るが、泣きながら何かを言うマニを見て、自分は獣人の声が聞こえないのだったと思い至った。
マニはずっと伝えようとしていたのだ。
狩人はその本能により、獣人の言葉は聞こえない。
聞こえてしまえば、情が生まれその刃が鈍ってしまうから。
彼は隣で眠る獣人の少女を見て、本来なら許されないことだと感じながら、それでもこうして、また出会ってしまったのだからと、自分のすべきことを思った。
あらすじ2
深夜、目を覚ましたマニは、狩人に頭をさげ、礼を言って彼の家をでた。
月の輝く夜の下、巨木にそって作られた階段をゆっくり下っていく。
途中足を滑らせ、転がり落ちた先で毛深い何かにぶつかる。
それは、人を喰らっていた巨大な牛の獣人だった。
獣人はマニを握り上げ、人狼だと気付くと親の事を聞いた。
答えないマニに、大方狩人にやられたんだろうと獣人は笑う。
親がいないなら、狩りも出来ず、飢え死にするだけだと決めつける獣人に、マニは一人前になる、そしたらママも迎えに来てくれると、獣人の手に噛みついた。
獣人は痛みにマニを木に叩きつけ、そんなに喰われたいなら、今すぐ食ってやるとマニに近寄る。
その獣人を赤ずきんは、手にした武器で殴りつけた。
獣人は木をへし折りながら、飛んでいく。
赤ずきんはマニに、食事の礼もないとはと、イラついた様子で話した。
マニはちゃんと言ったと、怯えて耳を押さえながら答える。
赤ずきんは、このまま行かせようと思ったが、ここまで弱いとはとマニの弱さに呆れ、今のままでは一人で生きていくなど出来ないと話した。
彼は、脅威でない者を狩るのは、狩人としての品性に欠ける、そこでだと続けた。
「お前、俺の弟子になれ」
呆気にとられるマニに、赤ずきんは俺より狩りが上手い奴はいないと語り、自分の弟子になることのメリットを話した。
そのうえで、弟子になるか、みじめに死ぬか選べとマニに問う。
だが、まだ死ぬこともないだろうと彼はマニの頬に優しく手をやり言った。
「悪い事は言わん、俺にしておけ、マニ」
マニは彼の肩に乗った狼の毛皮に手をやり、おもむろに頷いた。
いい子だ。赤ずきんは笑みを浮かべそう口にした。
師弟の絆を交わした二人に、牛の獣人が襲い掛かる。
赤ずきんは、落ち着いた様子で、マニよく見ておけと話し、これが狩りだと放った矢は、一撃のもとに牛の獣人を爆散させた。
マニはその様子に、すごいすごいと興奮している。
そんな彼女に視線を向け、まだ名乗っていなかったなと赤ずきんは言った。
「通称『赤ずきん』ウル、お前の師匠の名前だ。覚えておけ」
そして赤ずきんと狼弟子、二人の絆と別れの物語は始まった。
今回の見どころ
・マニ
とにかく人狼の少女、マニの仕草が可愛いです。
素直で一生懸命、健気な彼女に癒されます。
・ウルのやさしさ
不器用でぶっきらぼうなウルの、分かりづらい優しさが、言葉の通じない二人をつなげていきます。
※上記はあくまで私見です。
まとめ
この作品は雑誌連載としては三巻で終了です。
以降は同人誌として発表されるそうですので、気になる方は下記のリンクから、茂木清香さんのツイッターをチェックしてみてください。
茂木清香さんのツイッターはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。