小説 小説短編

ホーンテッド・キャンパス 秋の猫は緋の色

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猫ホーンテッド・キャンパス 秋の猫は緋の色
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

大学を舞台にしたオカルトミステリー第十五弾。

君に吊り合う男になれたら、言いたいことがある。
森司君がこよみちゃんに夏の終わりにそう言って、季節は秋、雪大は文化祭の時期になっています。

彼らはお互い想い合いながら、もう一歩踏み込めず、しかし少しずつ進展しているようです。

各話のあらすじや感想など

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おしゃべりな傷口

冒頭部分 あらすじ
人面瘡なんていうのはオカルトに入るんでしょうか?
オカ研を訪れた法学部二年の須賀原柊介はそう切り出した。

彼の話によると、同じ学部で恋人でもある、城内琴子の体に人面瘡が出来たというのだ。
夏休み明けから大学に来なくなった彼女を心配し、部屋を訪ねると憔悴した顔の彼女が、自分は頭がおかしくなったと口にした。

話しを詳しく聞いてみると、脇腹に合った痣が口をきき、彼女を罵るのだという。
彼女が見せてくれた脇腹には、確かに人の顔にみえる瘤が浮き上がり、口らしき場所からは吐息のようなものを吐いていた。

彼の話を聞い部長の黒沼は、人面瘡にまつわる話をいくつか柊介に話し、取り敢えず琴子に会って、直接話を聞きたいと彼に告げた。

感想
人面瘡にまつわる話は、創作でも多く作られていて、作中で部長が上げたブラックジャックのエピソードは、読んだことがあります。

三つの点があれば、人は顔と認識するシミュラクラ現象の事もあるので、おそらくは腫瘍の形が顔の様に見えたというのが、もとではないかなと思います。

ですが、これだけ沢山作品があるというのは、別人格に寄生されるというのが、人にとって大きな恐怖であることに他ならないからだとも感じます。

赤猫が走る

冒頭部分 あらすじ
森司が部室のドアを開けると、彼の視界は赤で埋め尽くされた。
雪大祭実行委員会、彼らはこよみにミスコンへの出場を頼みに来たようだ。

こよみが即座に拒否し、部長も本人の意思がと、実行委員長の平賀に柔らかい口調で話した。
部長は平賀に、学祭をハロウィンと絡めてやるなら、ミスコンより仮装の方が女子受けするとアイディアを語る。

平賀も乗り気になり、仮装の方に気が向いたようだ。
ハロウィンのお化けの流れで、平賀は妖しの猫と火事の噂を口にした。
部長は知っているらしく放火現場に必ず猫があらわれるってやつと答えた。

平賀は化け猫や、死んだ猫の祟りではと話すが、こよみはその猫を知っており、亡くなったのは事実のようだが、それを放火と関係あるように話したり、化け猫呼ばわりするのはどうかと平賀に言う。
彼女は大の猫好きで、悪く言われたことに怒りを感じたようだ。

平賀達がこよみの静かな怒りに怯え、部室を逃げ出した後、疲れた顔の泉水が部室に入って来た。
引っ越しのバイトが忙しく、それに研究発表が重なり、そこに学祭の準備まで手伝わされそうになったので、逃げてきたと泉水は話した。

森司は部の近況を聞く泉水に、彼が居なくて不安だったと正直に告げた。
視るだけなら森司も鈴木もいるが、腕力という点では泉水の不在は大きかった。
彼が居るだけで安心感が違う。

持ち上げてくれたところ悪いがと、泉水は切り出した。
後輩の頼みを、学祭の手伝いを逃げる交換条件として引き受けたらしい。

「ペットの猫の幽霊に会いたいらしい、尻尾だけが虎縞の、鉢割れの黒猫」

彼が話した猫の特徴は、先ほどこよみが亡くなったと語った猫と一致していた。

感想
猫にまつわる怪異の話は多く、部長が上げた化け猫や猫又などの妖怪じみた話など多岐にわたります。
気まぐれで、気配を隠すのが上手い所が、不気味さを人に感じさせるのでしょうか。

化け猫が油を舐める話などは、昔灯りに用いた油が、魚から取ったものだったことから(植物性の物は高価で、貧しい人は安価な魚の油を使ったと何かで読んだ覚えがあります。)、それを舐めた猫を見て、昔の人が怪談に取り込んだのではと考えます。

片足だけの恋人

冒頭部分 あらすじ
御前七時前に、携帯の緊急地震速報が北斗を覚醒させた。
趣味のアウトドアの道具の置き場と、活動資金のため借りた、格安の一戸建ては、その安さに見合った築五十年以上のボロ家だ。

耐震設計などされておらず、いろんなところがボロボロだ。
北斗が崩れませんようにと、祈っている間に揺れは収まった。
テレビの情報では、北斗が住む町は震度三だった。

破損個所が無いか家を見回っていると、座敷の床板が割れている。
割れ目からシロアリとか入ってこないよなと、亀裂を覗き込むと、下に何かある。
板を剥がすと跳ね上げ式の戸があらわれた。

好奇心に駆られ、はめられていた南京錠を壊し、戸を開けた。
階段が地下に伸びている。
彼は玄関からブーツを出し、それを履いてLEDランタン片手に階段を降りた。

三メートル四方の空間に、格子が備えられている。
所謂、座敷牢という奴だ。
牢の中にある何かに、北斗の心臓が早鐘を打つが、よく見るとビニール袋だった。

牢に鍵はかかっておらず、袋の中には女物の靴が入れてあった。
靴は全部で七足で、使用済みのようだ。
おかしな点は、それが全て片方しかない事だった。

前の住人の趣味かなと軽く考え、靴は金属部分を外し、燃えるごみとして出す事にした。

その日は雨の強い夜だった。北斗はコーヒーを飲みながら、仕事人をテレビで楽しんでいた。
ふと気配を感じ振り返る。当然誰もいない。ビビってんのかなと独り言を口にする。
朝の出来事はかなりショッキングだった。それが影響しているのか。

だが北斗自身、違うと分かっていた。
なぜなら今も誰かに見られている視線を感じるからだ。
彼は恐怖を振り払うべく、わざと独り言を口にする。

呑んで忘れようと、冷蔵庫から缶酎ハイを取り出し、呷る。
いつもは一本だが、今日は二本開けて酔いに任せて眠ろうと思った。

ふと、北斗は目をさます。掛け布団の上で眠ってしまったようだ。
時刻は午前二時半、酔っぱらって寝た時は朝まで起きない筈なのだが、なぜこんな時間に目覚めたのか。

窓の外は土砂降りのようだ。
不意に気づく、この家はボロ家で雨が降ればその音で、他の音は聞こえなくなるほど響く。
なのになぜ階段を上り下りする足音が、こんなにはっきり聞こえるのか。

足音は止まず、北斗の耳に声が聞こえた。
ない…ない、ない、どこだ…どこだ。

それが複数の足音と声だと気付いた時、彼は悲鳴を上げていた。

感想
座敷牢に片方だけの靴。
冒頭を読んだ時に浮かんだのは、シリアルキラーの存在でした。
連続殺人鬼で有名なものは海外の人物が多く感じますが、日本にも存在し、昔は座敷牢にそういった人物を閉じ込めることもあったのではと想像してしまいます。

現在の日本では、あまり地下室の存在する家は無いと思いますが、明治以前は、財産を補完する倉庫として穴倉を持つ家もあったようです。

今回の見どころ

・森司君とこよみちゃん
ゆっくりと進む二人の仲ですが、今回はどちらもかなり積極的だったように感じました。(今までに比べればですが。)

・森司君のこってりカレー
いつかこよみちゃんを夕食に誘い、作った料理を振舞おうと考えている彼ですが、努力が実を結び料理の腕が上がっているようです。
彼の作ったカレーは文章だけで、とても美味しそうに感じました。

※上記はあくまで私見です。

まとめ

今回は表題作の猫のお話がとても良かったです。
三話目の鈴木の女装が、イラストで見てみたいと思ってしました。

学祭も終わり、次は冬の話でしょうか。
今から読むのが楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのMabelAmberによる画像です。

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