あかね噺(ばなし) 4 ジャンプコミックス
原作:末永祐樹
作画:馬上鷹将
出版社:集英社
師匠、阿良川志ぐま(あらかわ しぐま)から前座噺、寿限無縛りでアマチュア落語大会、可楽杯への出場の許しを得た朱音(あかね)。
その予選を言い立てで勝ち抜けた朱音は、本選では自分を消し、客を物語にのめり込ませるスタイルで戦った。
名人。
そう呼ばれる噺家達が達する極地。
だが、朱音の噺は否が応でも審査員長、阿良川一生(あらかわ いっしょう)とは反りの合わない志ぐまの事を思い起こさせた。
登場人物
喧風亭流雲(けんぷうてい りゅううん)
落語連盟の幹部の一人
くせ毛無精ひげおじさん
可楽杯で脚光を浴びた朱音に辛口の感想を漏らす。
椿家正明(つばきや しょうめい)
落語連盟の幹部の一人
黒髪眼鏡の男。
独自の昇進基準を持つ阿良川一門に不満を抱いている。
今昔亭ちょう朝(こんじゃくてい ちょうちょう)
落語連盟の幹部の一人
ツンツン頭に牙口の男。
傍若無人な一生に思うところはあるものの、一生の弟子、魁生(かいせい)の活躍には期待しているようだ。
蘭彩歌うらら(らんさいか うらら)
落語連盟の幹部の一人
ロングヘア、短眉の女性。
阿良川一門の実力があれば、これまでのしきたりを無視して短期間で昇進出来る仕組みに苦言を呈する。
三明亭円相(さんめいてい えんそう)
落語連盟の幹部の一人
四角い禿頭に髭に白目の老人。
一生の力は認めているらしく、不満を口にする正明やうららにやんわりと反論する。
柏家三禄(かしわや みろく)
落語連盟の幹部の一人
角刈り顎髭の鋭い目をした男性。
連盟の会議に出席した志ぐまに、阿良川は暴れすぎだと釘を刺す。
喧風亭雲うん(けんぷうてい うんうん)
朱音が修行することになった定席、弥栄亭(やさかてい)の前座の一人
黒髪刈上げでつぶらな瞳の太っちょ。
見た目通りのんびり穏やかな性格の青年。
今昔亭朝がお(こんじゃくてい あさがお)
弥栄亭の立前座(たてぜんざ:前座を取り仕切るリーダー)
金髪ポンパドール(リーゼントっぽいやつ)にもみあげの青年。
かつて師匠を馬鹿にされたことで暴力沙汰を起こし、いまだ二ツ目に上がれていない。
今昔庵りゑん(こんじゃくあん りえん)
黒髪おかっぱの二ツ目
過去に朝がおが暴力を振るった噺家。
その事をまだ根に持っているらしく、朝がおの下で働く朱音に難癖をつけた。
あらすじ
客に物語の場面を想像させ、自分ではなく噺にのめり込ませた朱音。
そんな彼女の語り口は師匠、志ぐまの噺を色濃く引き継いでいた。
それは同門である一生にも当然気付かれる。
演目を終えた朱音に一生は鋭い視線を向けた。
「ここはお前が来ていい場所じゃないって分かってるよな?」
「……はいっ!!」
一生と朱音のやり取りに困惑する観客たちをよそに、本選を戦ったからしとひかるはその意味に気づいていた。
可楽杯は学生落語選手権。
つまり、出場者はどんなに上手くても素人だ。
そんな素人の大会にプロが出場するたぁ、どういう了見だ。
一生の言葉にはそんな意味が込められていた。
それに気づいたからしとひかるは、いい勝負をしていたと感じていた自分達にくやしさを覚えていた。
素人とプロ、自分たちは最初から朱音の相手にすらなってはいなかったのだ。
そんなからし達の思いをよそに、朱音は優勝の賞品である一生との座談会へと向かっていた。
父親を問答無用で破門にした阿良川一生。
その因縁の相手の向かいに座った朱音は、ずっと聞きたかった破門の理由を一生に尋ねた。
感想
今回は冒頭、本選での朱音の落語、寿限無の下げから始まり、本選出場者、練磨家からし(ねりまや からし)と高良木ひかる(こうらぎ ひかる)と朱音との差、一生との座談会と破門の理由、優勝の祝いとかっぽれ、落語家を廃業した父、志ん太(しんた)の思いとこれから、正式な弟子入りと前座仕事等が描かれました。
その中でも今回は父、志ん太を一生が破門にした理由が印象に残りました。
彼が志ん太を破門にした理由。
それは落語という伝統芸能を絶やさないためでした。
様々な娯楽があふれる現代。
人は自分好みの楽しみに時間を費やし、落語を楽しむ人々の数は確実に減っています。
そんな状況を憂いた一生は、一人前の噺家の証である真打ちに高いハードルを設けました。
芸によって人を引き込み魅了する。
最低限それが出来ない者に真打ちは名乗らせない。
甘さや情でそれを緩めれば、落語は衰退の一途を辿る。
一生はそう考え、客の同情により場を盛り上げた志ん太に不満を抱いたようでした。
朱音はそんな一生の言葉を聞き、改めて父、志ん太の芸が間違っていなかったことを認めさせると宣言します。
一生も望むところと受けて立ち……。
朱音は一生を唸らせる噺家になれるのか。
続きが楽しみです。
まとめ
この巻の終盤、立前座、今昔亭朝がおと因縁のある、今昔庵りゑんが朱音にウザ絡みしました。
次巻ではそのりゑんの鼻を明かすため、朱音が開口一番(高座の一番手、誰が出るかは立前座が決める)で高座に上がるよう。
朱音がどんな演目をやるのか、読むのが今から楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品は週刊少年ジャンプ公式サイトにて第一話が無料でお読みいただけます。