きみは謎解きのマシェリ 2 アクションコミックス
著:糸なつみ
出版社:双葉社
大学教授、黒澤(くろさわ)の家の家政婦から、電話詐欺の調査を依頼された美津子(みつこ)と蒴(さく)。
二人は刑事の新堂(しんどう)が残した情報から、オカヤス貴金属に探りを入れた。
そこで電話詐欺グループのボス、蛭子(えびす)から黒幕の存在を知らされる。
蛭子の言葉が罠だと知りつつ、黒幕、ゲシュペンシュテルに会うため、指定された化学工場へ向かった美津子たちは、蛭子達に襲われ……。
登場人物
ゲシュペンシュテル/亜蘭(あらん)
電話詐欺を行っていた者たちの頭目
養護施設で育った少年。
他者と上手くコミュニケーションは取れないが、その頭脳は天才的であらゆる知識をスポンジのように吸収する。
施設を逃げ出し犯罪者の蛭子(えびす)にアイデアを提供していた。
蛭子(えびす)
電話詐欺グループのリーダー的存在
七三眼鏡で口ひげ金歯の男。
美津子たちに黒幕の存在を匂わせ、深夜の化学工場におびき寄せる。
安田(やすだ)
吉田百貨店の男性従業員
上司の榊にパワハラを受けダウン気味。
赤城(あかぎ)
吉田百貨店の従業員
穏やかな雰囲気の男性。
お疲れモードの安田の事を気遣う。
榊(さかき)
吉田百貨店の四階担当
クリスマス商戦に命をかけているらしく、安田を厳しく叱責する。
蒴の父
吉田百貨店社長
丁寧な物腰の男性。
再婚相手の連れ子だった蒴にも家族として接している。
人哉(ひとや)
吉田百貨店の跡取りで蒴の異母兄
幼い頃、巨大な屋敷に怯えた蒴を優しく迎える。
ヨーロッパ視察で列車事故に巻き込まれ、記憶喪失になったようだ。
廣瀬(ひろせ)
吉田家の執事
白髪口ひげの老人。
記憶を失った人哉を跡継ぎとする事に難色を示す。
様々なバイトを渡り歩く蒴の事もよく思っていないようだ。
あらすじ
蛭子達に襲われ、縛り上げられた美津子が目を覚ますと、そこは化学工場近くの線路のようだった。
近づく貨物列車のライトの中、蛭子と話す小柄な人影が浮かび上がる。
蛭子が言っていたゲシュペンシュテル。
その正体はまだ幼い少年だった。
その事に美津子が驚いている間に、一緒に縛られていた蒴は隠し持ったナイフでロープを切断。
二人は間一髪、列車に轢かれる事を免れた。
そんな二人に少年を伴った蛭子が銃を向ける。
その蛭子に対し、蒴も懐から取り出した銃を向け返した。
そのことに驚く美津子、そして蒴に何者かがライトを向ける。
現れたのは警官隊を引き連れた刑事、新堂だった。
とりあえず、事情聴取の為、美津子たちを確保しようとする新堂に、美津子は黒幕のゲシュペンシュテルはあっちだと指を向けた。
しかし、もうそこには少年も蛭子も存在してはいなかった。
感想
今回は電話詐欺グループとその犯罪に関わった少年、亜蘭のエピソードから始まり、蒴の実家が経営する百貨店の内部事情、蒴の家族と兄、人哉の記憶喪失などが描かれました。
今回はその中でも美津子の相棒、大学生の蒴とその家庭についてが印象に残りました。
いつも笑顔で軽い印象の蒴。
しかし、彼は母の死後、再婚相手の連れ子という立場から、優しい兄の人哉を立てるため、自ら進んで様々なアルバイトを渡り歩く不良少年というイメージを作り上げたようでした。
血の繋がりのない事で、居場所がなく不安定な気持ちを抱えていた蒴。
彼は彼なりに必死で吉田家の中で自分の立ち位置を模索していたのだろうなと思いました。
そんな蒴に美津子は覆い隠さず自分には全て打ち明けろと迫ります。
再婚相手の連れ子、大手百貨店の御曹司、遊び歩いている放蕩息子。
様々な肩書を飛び越えて、美津子は色眼鏡で見ることなく、本当の蒴に寄り添ったのだとエピソードを読んでいて感じました。
まとめ
人は生きるうえで様々な仮面を被って、本心を覆い隠している生き物だと思います。
美津子は今回、そんなペルソナで隠された蒴の仮面を剥がし、嘘のない本当の蒴でいいと話しました。
心のままの自分を認め、受け入れてくれる存在。
家族と言いながら、どこか彼らの事を信じきれなかった蒴にとって、美津子の言葉は救いのように感じたのではないでしょうか。
次巻では記憶喪失となった人哉の秘密が描かれる模様。
彼が何を願い、どう考えていたのか。
真相が楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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