アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 8 ゼノンコミックス
著:荒井ママレ
医療原案:富野浩充
出版社:コアコミックス
ナカノドラッグの薬剤師、小野塚(おのづか)から、笹の葉薬局の金平(かねひら)が小学校の学校薬剤師であり、見学が可能である事を聞いた葵(あおい)。
薬剤師がただ薬を渡すだけでなく、医師の様に頼るべき相手だと子供達に啓蒙したい葵は是非お願いしたいと小野塚に頼み……。
登場人物
金平(かねひら)
笹の葉薬局の薬剤師
法律で学校に置く事を義務付けられた学校薬剤師を兼務している女性。
学校薬剤師は常駐している訳ではなく、定期的に学校に赴き環境の調査を行っている。
水城燈真(みずき とうま)
金平が学校薬剤師を務める学校の生徒
黒髪の少年。
血が止まりづらく、よく鼻血が出たりあざが出来やすい体質。
燈真の父
くせ毛の男性
主夫として家事全般を担当し燈真の事を気遣っている。
スイーツ等も手作りしている。
燈真の母
黒髪ショートの女性。
広告業界で会社を立ち上げ忙しく飛び回っている。
仕事が忙しい事で燈真を余り構えない事を心苦しく感じている。
ファジャル
総合病院に入院中の少年
インドネシア人の男の子。
気管支喘息の大発作で入院した。
イスラム教徒である為、豚に由来する薬剤、消毒用のアルコール等も使用不可。
サリ
ファジャルの姉
黒縁眼鏡の女の子。
日本語が話せる。
ファジャルの母
なにやら病を抱えている様子。
日本語はあまり話せない。
ファジャルの父
黒髪眼鏡で髯の男性。
イスラム教の断食(ラダマーン)について、子供や病気のある者は免除される事から、ファジャルには今やる必要は無いと考えていたが、ファジャル自身はやりたいようだ。
あらすじ
学校薬剤師、金平の説明ではキツイ、プール検査やダニ検査、給食室等は暑くなり始める時期に行う為、今年は終わってしまったそうだ。
今日は校舎内の水道の水質検査と教室内の照度検査、空気検査を行う予定で、金平は葵には空気検査をやってもらうつもりらしい。
教室に入り二酸化炭素測定器を使い、濃度を測定。
その間に金平は教室の照度を調べ記録した。
測定が終わったあと、金平は二酸化炭素が人に及ぼす影響について生徒達に説明し、休み時間ごとに換気する様に生徒に促した。
教室の検査を終えた金平と葵は今度は水道の水質検査に向かう。
金平の話は分かりやすく、子供達に効果がありそうだった。
葵自身は子供たちに薬剤師の存在を身近に感じて貰える、学校薬剤師に興味はあったが、人手不足の総合病院では兼務は難しそうだった。
その事で落ち込む葵に金平は学校薬剤師に拘らなくても、手洗いうがい教室や高学年向きの薬物乱用、飲酒・喫煙などの出前授業を行う方法を提示し、総合病院なら他職種との合同も可能かもとアドバイスを行った。
葵達がそんな話をしていると、休み時間、先ほど検査したクラスの子供達が何してるの? と声を掛けて来た。
学校の水がきれいかどうか検査するんだよ。
そう言って、子供達と一緒に検査を始めた金平の姿に、やっぱり羨ましいなと葵は感じるのだった。
感想
今回は学校薬剤師、金平のエピソードから始まり、血が止まりにくい少年、燈真と過保護な父親、学術大会、イスラム教徒の患者ファジャル等が描かれました。
今回はその中でもイスラム教徒の少年ファジャルのお話が印象に残りました。
イスラム教は戒律でお酒を飲む事、豚を食べる事を禁止しています。
これは痩せた土地で暮らす際の知恵だと聞いた覚えがあります。
お酒は基本穀物や果実から作られます。
また豚は人が食べれる物を食べて飼育されます。
食料の乏しい地域に暮らす人々に広く信仰されるイスラム教では、お酒の様な嗜好品に食べられる物を回すより、そのまま食料にする事を民衆に促す目的があったようです。
同様に人間と同じ物を食べる豚よりは、鶏や牛等、人の食べない物を食べて育つ家畜を優先する意味があったようです。
そういう理由から考えれば、いかに教義とはいえ、現代でも頑なに豚やアルコールを拒絶するのはどうなのだろうと思ったりしました。
イスラム教についてそれ程、詳しい訳ではないのですが、生きる為に作られた物なら多少の揺らぎがあってもいいように、エピソードを読んでいて感じました。
まとめ
感想ではイスラム教について揺らぎがあってもいいと書きましたが、何世代にもわたり信仰され、生活に根付いた習慣は簡単に変えられないという事も分かる気がします。
次巻では、病を抱えているらしいファジャルの母のエピソードが描かる様です。
彼女が医者に掛かる事を拒絶する理由とは、次巻も読むのが楽しみです。
この作品はゼノン編集部で第一話が無料でお読みいただけます。
作者の荒井ママレさんのツイッターはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。