妻、小学生になる。 13 芳文社コミックス
作:村田椰融
出版社:芳文社
妻、貴恵(たかえ)が生まれ変わりではなく、小学生、万理華(まりか)の体に憑依しこの世に存在していると気づいた圭介(けいすけ)。
自分が貴恵に依存し頼る事で、彼女の成仏を妨げていると感じた圭介は貴恵と距離を取る事を決めた。
一方、貴恵も万理華の人生を奪っていると考え、心残りを無くしこの世を去ろうと思い始めていた。
あらすじ
小学生、白石万理華として貴恵がこの世に戻って以来、ずっと圭介に作っていたお弁当を作らなくなってしばらく経った頃、彼女は自分と同じ境遇の中学生の小説家、出雲凛音(いずも りおん)が新作を手掛けていることを知る。
凛音の新作、それは夫婦をテーマとしたもので、モデルは自分たちのようだった。
自分の経験を物語として書いたことで売れっ子小説家となった凛音。
そんな彼の心残りは前世で小説家として芽が出なかったことではなく、一人の女性の存在だった。
しかし彼はSNSで彼女の現在を知りながら、連絡を取ることはしなかった。
貴恵はそんな凛音に連絡を取り、新作についての話を聞くことにした。
レストランの個室で凛音と向かい合った貴恵は、さっそく新作について自分たちの事ですよねと切り出した。
凛音は特に悪びれた様子もなく、あっさりとそうだと認めた。
彼は自分の小説が大事な人を亡くした人たちに希望を与えていると語り、いずれ自分に起きた事を公表すれば、同様の現象が増える可能性まで考えていた。
「死にたいとか、自分の命をみすみす捨てようとするような弱い人間が生き続けるよりは、よっぽど合理的だと思わないかい?」
そんな凛音の言葉に貴恵は小さく笑い、彼に会いに来て良かったとつづけた。
「私、あなたみたいになりたくない。私はこの体、やっぱり絶対に元の主に返そうって思った」
そう言って貴恵は凛音に視線を向けた。
感想
今回は冒頭、凛音の新作の事を知った貴恵と凛音の対話から始まり、圭介から貴恵の状態が憑依だと聞いた守屋(もりや)、麻衣(まい)と蓮司(れんじ)と結婚式の準備、守屋と結婚する事を決めた圭介とそれを受け入れられない麻衣などが描かれました。
今回はその中でも、貴恵と同様に他人に憑依しこの世に戻ってきた凛音のエピソードが印象に残りました。
凛音は小説家として成功を掴み、それを失う事を恐れ、愛する女性と会う事を避けていました。
彼女と会えば自分は消えてしまうかもしれない。
それは彼にとって二度目の死を意味します。
それを回避するため、自ら死を選ぶ弱い人間よりは、自分がその体を使った方が有意義だと言い訳していました。
そんな凛音に貴恵は有名な小説家として長く生きるよりも、愛した人と再会し消える方が意味があると話します。
凛音に憑依した男は、生前、小説家を夢見ていました。
しかし、実際に小説家として売れても彼が消える事が無かったということは、彼の本当の望みは小説家になる事ではなかったということに他なりません。
自分の本当の心残り、それを抱えたまま生きていくことが幸せなのか。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
この巻の終盤、守屋との結婚と貴恵が生まれ変わりではなく、憑依であると圭介に説明された麻衣はひどく取り乱します。
大好きな母親が消えてしまう。
麻衣はそれを受け入れられるのか。
次巻が気になります。
こちらの作品はピッコマでも一部無料で閲覧できます。
作者の村田椰融さんのTwitterはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。