赤ずきんの狼弟子 月への遺言 6
著:茂木清香
獣人、人間、狩人、三種の人が住む世界で、本来狩る側と狩られる側の二人が師弟になる物語。
この作品は同人誌として発表された物で、商業版の主人公ウルとマニが出会う前、ウルの毛皮の持ち主であった喧騒(スコル)という名の獣人のお話です。
登場人物
スコル/ウル
人狼族の少年
群れを離れ雷帝と呼ばれる狩人トールの弟子となる。
弓を使った事でそれまで振り回されて来た、視力や耳の良さを活かせる様になった。
赤い冬の猛威が人々を襲い、その冬を狩りに出かけたトールとシフの帰りを待っている。
冬の影響で集落を出た弟のハティ、幼馴染のソールと再会する。
ハティ
スコルの双子の弟
群れで落ちこぼれだったスコルとは違い、獣化も自在に出来る優等生。
冬から逃れる為に若い獣人は里を出た。彼もその一人。
ソールと番となり、新たな命を授かった。
ソール
スコルとハティの幼馴染
マニによく似た人狼族の少女。
狩りに成功し成人として認められ、ハティと番となった。
おなかにハティとの子を宿している。
人類(ヒューマニティ)
赤い髪と人形のような手をした女
願いと引き換えに人々から人間を構成する重要な要素、スペルを奪っている。
一節でもスペルを奪われた人間は自我と肉体が崩壊する。
冒頭あらすじ
弟のハティ、幼馴染のソールと再会した人狼族の少年、スコル。
彼は弟夫婦のため、吹雪の中、狩りに出かけるが獲物を見つける事は出来なかった。
出産を控えたソールには食べ物が必要だ。
降りしきる雪の中、獲物を求め歩き続けたスコルはいつしか人間の町へとたどり着く。
そこには聖女と呼ばれる女がいて、人々からスペルを奪う代わりに食料と癒しを与えていた。
スペル。
人を構成する要素であり、親にすら教えてはいけない秘密の物語。
傷ついた女はケガの治療のため、聖女に自身の物語の一節を語り伝えた。
その直後、女の体から光があふれ、傷ついた肉体も閉じられた目も傷跡一つなく癒される。
奇跡を目の当たりにした人間たちは、次々と聖女に癒しを求める。
その様子を物陰から見ていたスコルだったが、聖女に気づかれ護衛の一人の攻撃を受けた。
その一撃を何とか躱したスコルだったが、人間たちは手にした武器を彼に向ける。
正面突破で逃げる。
しかし、人々を傷つけたくはない。
「嘆かわしい」
葛藤するスコルの耳に聖女の声が響く。
彼女は群衆を下がらせると、スコルを伴い食糧庫へと向かった。
沢山の干し肉が吊るされた食糧庫。
聖女はその干し肉をスコルに分けてもいいと言う。
代償は彼のスペル。
スコルはその取引に強い忌避感を抱いた。
スペルを渡してはいけない。
それは誰にも奪われてはいけないモノだ。
だが、ソールには栄養が必要だ。
スコルは人類(ヒューマニティ)と名乗った赤い髪の女の提案を受け入れ、自分のスペルの一部を干し肉と引き換えに売り渡した。
感想
今回は食料を手に入れるため、赤い髪の女にスペルの一節を手渡したスコルから始まり、続く冬で食べ物が手に入らず、全てのスペルを奪われたスコルの変化、狩人ウルと人狼マニの誕生が描かれました。
商業版において、狩人と獣人は言葉の疎通が出来ないにも関わらず、ウルはごく自然にマニの名を呼んでいました。
ずっと不思議でしたが、それはウル(スコル)が彼女の名付け親だったからのようでした。
スペルを失い狩人として再誕したスコル。
人狼の記憶を赤い髪の女に消してもらった彼が、この後、どんな行動を取るのか。
ウルの生み出した赤い氷に囲まれたハティとソール、そして生まれたばかりのマニはどうなるのか。
次巻が楽しみです。
まとめ
この巻では赤い髪の狩人ウルの出自がようやく判明しました。
今後、商業版では描かれなかったマニとソール達のお話も語られるのでしょうか。
マニが独りぼっちになった理由や、ハティが記憶を無くしたわけなど、色々、気になります。
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作品はBOOTHのもぎ屋及びメロンブックスのもぎ屋からご購入いただけます。
こちらは同人誌ですので、在庫切れの場合は再販をお待ち下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。