宙に参る(そらにまいる) 3 torch comics
著:肋骨凹介
出版社:リイド社
フリーエンジニアの鵯ソラ(ひよどり そら)の持つ呪文(音声によりコンピューターに介入、操作出来る)を狙うダウチテクノ技研局長、又肩(またかた)。
彼が送り込んだゲーマー、ウォンとの勝負でイラついたソラは、ハッカーの墓石(はかいし)が監視しているのもお構いなしに呪文を使用。
バグ技を用いウォンと戦うが、テクニックで押し切られ敗北。
大人げなく卑怯な方法を取ったにも関わらず負けたソラは、くやしさで泣きそうになるのを歯を食いしばり耐えたのだった。
登場人物紹介
ローラン・フィジョー
ジヒ航運社長
サングラスに髭のおじさん。
声がでかくて話が長い。
ソラにコロニー連結の仕事を依頼する。
ヒノウ・ギヤフ・サン
マヤの母、ユニバーサル航宙機関部所属の2等機関士
白髪で褐色の肌の女性。
マダンと同じく、ソラとは元同僚。
実家のサン家は代々、工業部門で顕著な実績を挙げてきた名家。
彼女もその例にもれず、文武両道な優等生。
技術者として稀有な才能を持つソラに好意を抱いていた。
池場秀駆
コロニー都市、ジヒ市の市長
白髪眼鏡の壮年男性。
又肩からソラ関係で何やら依頼を受ける。
ジヒ市のバスガイドリンジン、アディの決断を後押しする。
アディ
ジヒ市の私バスのバスガイドリンジン
金髪で青い目の青年姿のリンジン。
明るく親切でよくしゃべる。
ジヒ市のアピールの為、歌手としてデビューしたりと人気を得ていた。
多くの人々と触れ合ったことで、ほかのリンジンよりも遥かに早く判断摩耗限界(記憶の増幅による処理速度の低下、いわゆる寿命)を迎える。
鳩目ユリシラ(はとめ ゆりしら)
市長室広報技術職員
金髪ロングで眼鏡の女性。
アディのメンテナンスを担当していた。
大門橋金十
広報部長
黒髪短髪ジト目のおじさん。
アディの楽曲デビューを市長に提案する。
カンダ
マヤの通う船内学校の生徒の一人
金髪でノリのいい少年。
成績はそれほどいいわけではないが、愛嬌があり人との距離を縮めるのが上手い。
シャンタル
マヤの通う船内学校の生徒の一人
金髪ポニテの少女。
マヤと仲のいい宙二郎(ちゅうじろう)に仲介を頼むが……
あらすじ
夫の遺骨を彼の両親の下へ届けるため、街を内包した巨大宇宙船で旅を続けるフリーエンジニアの鵯ソラとその息子、リンジン(AIロボット)の宙二郎。
その日、宙二郎は落とし物(手のひらほどのケース)を拾い警察に届ける。
受け取った婦警はそれを公安のリー警部に預けた。
ケースの中身はかなり古いリンジン開放点検工具だった。
ただ、工具は「開け閉め」が出来るだけで、整備の為には圧倒的に工具が足りていなかった。
その後、プルー副所長から情報をもらったリーは、ケースの持ち主である男と接触するが……。
感想
今回はリンジンのボディ内に密輸品を隠した男のエピソードから始まり、マヤの母、ヒノウの登場、リンクコロニー(ドーナツ状のユニットが連なって出来たコロニー。構造強度に優れ増設が可能であるが、コストが大きい)ジヒ市への寄港、リンジンバスガイド、アディの日々とその最後、宙二郎と学校と恋などが描かれました。
その中でも今回はバスガイド、アディのエピソードが印象に残りました。
この作品に登場するリンジン、AI制御のアンドロイド及びコンピュータ上で活動する人工知能は、記憶量の増加により反応速度が低下し、やがて限界を迎えます。
その限界を引き延ばすため、リンジンには不要な記憶を削除するプログラムが設定されています。
しかし、アディはプログラムの不具合からか記憶の削除が出来ず、またその活動の性格上、多くの人との出会いで記憶量が一般的なリンジンより膨大となってしまい、想定より早く活動限界を迎えました。
プログラムを改修し、不要な記憶を消去すればまだしばらく活動出来る選択肢もありましたが、アディはそれを選ぶことはしませんでした。
どの記憶も彼にとって大切なモノで、それを捨てることは出来なかったのです。
別れの前、アディはこれまで名前を交わした全ての人に個別にメッセージを送ります。
その数、1972万5112名。
アディは最後まで明るく優しくおしゃべりで、とても素敵でした。
まとめ
呪文を使いイリーガルな事をしているソラですが、やっている事は疑問の解消など犯罪とはかけ離れたことばかり。
そんなソラの技術の高さだけが独り歩きし、周囲に警戒されている印象を読んでいると感じます。
この巻の終盤、ソラの技術(呪文)を入手したい又肩は、手五島大学の教授、アリアネにあるものの制作を依頼します。
リンジンに関係するらしい、その何かがソラたちにどんな影響を与えるのか。
次回も楽しみです。
こちらの作品はトーチwebにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の肋骨凹介(あばらぼね へこすけ)さんのアカウントはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。