魔もりびと 3 ヤングキングコミックス
著:東裏友希
出版社:少年画報社
国一つ飲み込んだという伝説のドラゴンの腹の中に広がるダンジョン。
そのダンジョンに挑んだ冒険者の一人、ハーフエルフのレンジャーのアリアリスはマンティコアの毒に倒れ、仲間に置き去りにされた。
ドラゴンの腹の中で暮らす魔もりびと、髯の老人ルモンに拾われた彼女は、ルモンが地上に買い出しに行く日まで居候させてもらう代わりに、魔物の子を預かる魔もりびとの仕事を手伝いながら、日々を過ごす事になる。
登場人物・登場モンスター
クラーケン
巨大なタコの魔物。
産卵後、雌は卵が孵化するまでの一か月、餌も取らず卵を守る。
その独特の匂いは魚を引き寄せる力を持ち、ルモンは産卵場所近くを優良な漁場として活用している。
ザラタン
巨大な蟹の魔物。
大きい個体は船乗りが島と間違えて上陸することも。
ゾニス
人の倍ほどの体躯を持つガオガブ族の女性
赤髪鼻輪の女戦士。
集落を出て自由に暮らすため、クラーケンの持つ真玉(未消化の餌と分泌物が体内で結晶化したもの。クラーケンの持つ独特な芳香のもと)を求め、竜の腹を訪れる。
三つ首ウツボ
三つの頭を持つ巨大なウツボ。
好物はクラーケンだが、産卵時期のクラーケンは非常に危険なため、通常、襲うことはしない。
ラミア
人間の女の上半身と蛇の下半身を持つ魔物
森や洞窟に生息し、人間の生き血を主食とする。
食人木
人や動物をからめとり養分を吸い取る植物型の魔物。
マイコニド
死体に寄生するキノコ型の魔物。
漢方の材料として高値で売れる。
獏(ばく)
象の鼻、サイの目、虎の足に牛の尾を持つ魔物。
性格は温厚で人懐っこい。
悪夢を食べることが有名だが、この作品の獏の主食は鉱物や魔石など。
夢馬(むま)
悪夢を見せることが大好きな魔物。
別名、ナイトメア。
イケメンな黒い馬の魔物。
ヴィヴィ・グプティル
魔法使いの女性
赤毛ロングで黒いドレスと尖がり帽子の女の子。
アリアリスの所属したパーティの一員。
行方不明となったアリアリスを探し、蘇生屋のカズボーンのキャラバンに潜り込み、竜の腹の中のダンジョンに入り込む。
シショー
地中に住み、住処に財宝を隠していると噂のあるノームの一人。
つぶらな瞳で髭の小人。
ノームは手先が器用で魔石や鉱物を使い、見事な細工品を作りそれを家具としている。
住処に財宝を隠す噂はそこから出たもの。
長い寿命(五百年)を持つためか物に執着がなく、仲良くなった者に求められれば全て与えてしまう。
宝飾師のシグルは彼らノームの技を学ぼうと、シショーとの付き合いを十年ほど続けている。
長く森で暮らしていたためか、強い対毒性を持つ。
あらすじ
海の滝にほど近い、ザラタン入り江。
そこに居を構えるクラーケンは産卵時期を迎えていた。
クラーケンは体から独特の芳香を放ち、その香りは魚を呼び寄せる。
魔もりびとのルモンと居候のアリアリスは、香りに呼び寄せられた魚を獲るため、ザラタン入り江を訪れていた。
産卵後のクラーケンの雌は食事も取らず、住処から動くことなく、かいがいしく卵の世話を焼く。
つまり、孵化までの一か月、ルモン達は労せずして大量の魚を得ることが出来るのだ。
そんなわけで漁と保存食づくりを続けていたアリアリスとルモンだったが、真玉を狙ったガオガブ族の女、ゾニスがクラーケンを倒してしまい貴重な漁場を失うことになってしまった。
また、母親を失った卵はいずれカビが生え、遅かれ早かれ魚の餌になってしまうだろう。
そうなれば、クラーケンが入り江を産卵場所に選ぶことはなくなるかもしれない。
そんな無法を犯したゾニスにルモンは激しい怒りを見せる。
ルモンの言葉に責任を感じたゾニスは、真玉の返還という事もあり、一か月の間、クラーケンの卵の世話をアリアリス達と行う事を決めた。
感想
今回は冒頭、クラーケンとガオガブ族(巨人族?)のゾニスのエピソードから始まり、アリアリスがルモンに拾われた経緯、獏の子供と悪夢、魔法使いのヴィヴィとマイコニド、宝飾師のシグルとノームのシショーなどが描かれました。
今回はその中でも終盤、ノームのシショーのエピソードが印象に残りました。
作中、シショーは凶暴な毒蟲(蜂)の巣のある、木の洞の地下に住んでいました。
ノームに毒は効かないので、その事で強欲な商人も近づけないようで、アリアリス達も完全防備(スズメバチ用の防具的なアレ)でシショーの家に出入りしていました。
シグルはノームのシショーから技術を学ぼうと、彼らとの付き合いを続けています。
アリアリスはシグルから依頼され、メソタケ(きのこ?)の収穫の間、ノームの子どもを見てほしいと頼まれていました。
ノームの子の面倒をシグルと共に見ていたアリアリスですが、ノームの子の一人がいたずらでシグルの帽子(網付きの虫よけ)を奪ってしまい、彼は毒蟲に刺され……。
シショーはシグルを救うため、商人から毒消しをもらい、代わりに何年もかけ作り上げた家具を全て手放してしまいました。
シグルはそんなシショーの行動に憤り、声を荒げるのですが……。
細工物はまた作ればいいが、失われた命は取り戻す事が出来ない。
シショーは美しい家具よりも、シグルとの時間を選んだのだろうとエピソードを読んでいて感じました。
まとめ
今回は感想に書いたノームのシショーの話の他、悪夢を食う獏のエピソードが印象に残りました。
エピソードのラスト、宝飾師のシグルを悪夢の苗床にしようとするアリアリス達の笑顔、そしてそんな事とは全く気付いていないシグルの微笑みがとても良かったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらの作品は少年画報社の公式サイトにて冒頭部分がお読み頂けます。
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