ラストカルテ ―法獣医学者 当麻健匠の記憶― 3 少年サンデーコミックス
著:浅山わかび
出版社:小学館
動物の死因を探る法獣医学医を目指す二人の少年の物語。
今回は交通事故で死んだエゾシカのエピソードからスタートします。
登場人物
滝瀬露子(たきせ つゆこ)
美森大学四年生
肩口ショートの柔らかい雰囲気の女性。
進化の謎に迫る為、内臓の形に強い興味を持つ解剖好き。
カステラ
健匠(けんしょう)の家で昔飼われていた柴犬
迷い犬として保護され、その後、当麻家で飼われる事になった。
海崎林平(かいざき りんぺい)
健匠の幼馴染でクラスメイト
黒髪ストレートの少年。
パピーウォーカー(盲導犬候補の子犬を、一歳くらいに成長するまで面倒を見る)として、ゴールデンリトリバーの子犬、ザラメを育てていた。
具合の悪い現在の飼い犬、コクトーを連れ、動物病院を訪れる。
あらすじ
冬のある日、爽介(そうすけ)のバイクで大型書店に出向いた健匠は、その帰り道、エゾシカが車に轢かれ倒れている場面に遭遇する。
現場に来ていた警察の調べではシカは森沿いの道路で車と接触。
それにより死亡したようだ。
爽介は自分の姉が美森大学の獣医師である事を警察に告げ、研究材料としてシカを引き取る事を提案。
流れるような爽介の説明に少し引きつつも、警官は上司の指示を仰ぐ。
爽介が警官と話している間、健匠は道路に横たわるシカのそばで膝をつく。
覗き込んだシカの目からは涙が流れていた。
死んだら涙は出ない。
健匠の言葉を聞いた爽介は、シカの亡骸に手を合わせビニール袋越しにシカの体温を確認した。
亡骸はまだ温かく、直前まで生きていたことが伺われた。
その後、爽介の姉、雷火(らいか)の車で動物病院までシカは運ばれ、解剖が行われた。
その解剖の結果、シカは現場の状況から考えられる車と接触しただろう左側ではなく、右側の前足を骨折している事が判明。
また左後ろ足の骨も折れていた。
そこから導き出された答え。
それはこのシカが二度轢かれたというものだった。
感想
今回は冒頭、交通事故で死亡したらしいエゾシカのエピソードから始まり、健匠の家のシマリス、キョウちゃんの脱走とヒマワリの種、雷火の寄生虫好きの始まり、キタキツネの親子、カステラとザラメと海崎、過去のカルテと海崎の愛犬、コクトーの病などが描かれました。
その中でも今回は冒頭のエゾシカのエピソードが印象に残りました。
作中、死亡したエゾシカは右前肢、左後肢の骨を骨折。
そのほか、肋骨、鼻骨、脱臼に皮膚損傷、脾臓、肝臓破裂で直接の死因は失血死。
全身が傷つき、激しい痛みの中、死を迎えたことは想像に難くありません。
何故、シカはそんな不幸に見舞われたのか。
それは事故の当事者である者がたくらんだ保険金詐欺の為でした。
保険金詐欺といえば、人間相手の犯罪の印象が強かったのですが、野生動物相手の物損事故でも保険金は降りるようです。
野生動物が被害者であれば、おそらく警察もそれほど熱心に捜査をしないでしょうし、現実でもそういった詐欺は行われているんだろうと感じました。
狼などの天敵がおらず、時に農作物に被害をもたらすシカ。
人間にとって害獣であっても、彼らは彼らで生きているだけ。
理不尽に殺され、金儲けに利用されるのは、読んでいて憤りを感じました。
まとめ
今回はシカのお話の他、キタキツネの親子の話がなんだかホンワカしました。
エキノコックスは怖いですが……。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品はサンデーうぇぶりにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の浅山わかびさんのTwitterアカウントはこちら。