あかね噺(ばなし) 3 ジャンプコミックス
原作:末永祐樹
作画:馬上鷹将
出版社:集英社
当代一と呼び声の高い落語家、阿良川一生(あらかわ いっしょう)。
父、志ん太(しんた)を破門したその一生と可楽杯で優勝すれば対談出来る。
なぜ父を破門したのか、一生が現役のうちにその理由を知りたい朱音(あかね)は志ぐま(しぐま)に師事する事が決まっていながら、アマチュア大会に参加するのは不義理と分かりつつも、志ぐまに許しを得て大会への参加を決める。
その大会への参加について、志ぐまは朱音に一つ条件をつけた。
演目は”寿限無”である事。
寿限無は落語初心者が始めて覚える噺だ。
可楽杯の客は元落研等、落語経験者がほとんど。
つまり、客のほとんどが寿限無を演れ、耳も肥えている。
そんな客相手に寿限無でどう戦うのか。
朱音は兄弟子こぐまのアドバイスを受け、可楽杯予選に挑む。
登場人物
阿良川一剣(あらかわ いっけん)
阿良川四天王の一人
黒髪刈り上げで口髭のおじさん。
落語だけでなく映画、ドラマなどでも活躍している。
学生落語選手権、可楽杯の審査委員の一人。
榊龍若(さかき りゅうじゃく)
上方落語界のスター
黒髪癖毛の男性。
ラーメン好き。
学生落語選手権、可楽杯の審査委員の一人。
あらすじ
可楽杯予選。
高座に上がった朱音に緊張の色は見えなかった。
滑り出しは順調。
客席で舞台を見ていた兄弟子ぐりこも、朱音が参加者の中では頭一つ抜けていると感じていた。
それでも客たちが聞き飽きた寿限無で勝つのは難しいだろう。
“寿限無がやっと言葉になりました”
大会前、朱音はそう語っていたが……。
言い立てをどう変えてくる。
そんなぐりこが見守る中、朱音は言い立ての速度を以前、兄弟子こぐまに見せた時より上げていた。
寿限無寿限無五劫のすり切れず海砂利水魚の水行末雲行末風来末くうねる所に住むところ、やぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長介。
息継ぎ二回で長台詞を言った朱音はその後、さらに息継ぎを減らし一回でしゃべり切った。
可楽杯は予選と本選、都合二回同じ噺をしなければならない。
本選を勝ち抜くため、朱音はあえて予選は言い立て一本に縛ったのだった。
右ストレート(言い立て)一本で勝ち切るっ!!
そんな思いを胸に朱音はサゲまで語り切り、見事予選を勝ち抜いた。
感想
今回は冒頭、予選での朱音の寿限無から始まり、本選、優勝候補の一人、練磨家からし(ねりまや からし)による天失気(てんしき:医者に言われた天失気が何かわからない和尚が、小僧に探らせ嘘を教えられるお話)の現代風アレンジ落語、人気声優、高良木ひかる(こうらぎ ひかる)による劇場型落語、芝浜、そして朱音の寿限無と可楽杯の様子が描かれました。
その中でも、今回は朱音の本選での寿限無が印象に残りました。
寿限無は何度か聞いたことがあり、内容も知っていたのですが、和尚が出す名前の候補の意味までは知りませんでした。
朱音は兄弟子こぐまの助言を受け、噺の中にその由来を盛り込みました。
またそんな長い名前を付けた親の気持ち、登場人物たちの心まで考え演じ切りました。
作中、審査員の一人、榊龍若が感じたように演者が消え景色が見える。
一巻の感想に書いたように演者が消えて景色が浮かぶという事を、私は米朝師匠の落語を聞いていた時、体験しました。
その時は師匠の語りが心地よく、作中語られたようにとても自然で、全く労力無く景色と登場人物を想像することが出来ました。
恐らく落語という芸での極みだろう、それを演り切った朱音の姿がとても心地よかったです。
まとめ
朱音の師匠、阿良川志ぐまとは確執がある様子の阿良川一生。
その志ぐまの芸風を色濃く引き継ぐ朱音に審査委員長、一生がどんな評価を下すのか。先が楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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