あかね噺(ばなし) 1 ジャンプコミックス
原作:末永祐樹
作画:馬上鷹将
出版社:集英社
子供の頃、朱音は落語家である父親の噺を覗き見るのが大好きだった。
集合住宅の狭い和室の中、朱音は父の語る落語に魅せられ、胸を躍らせる。
登場人物
桜咲朱音(おうさき あかね)
十七歳の女子高生
黒髪メッシュにピアスの女の子。
父親の落語が間違っていなかった事を証明するため、父の師匠だった阿良川志ぐま(あらかわ しぐま)に教えを乞う。
阿良川志ん太(あらかわ しんた)/桜咲徹(おうさき とおる)
朱音の父
黒髪くせ毛の男。
才能はあったがプレッシャーに弱く、自分の落語が中々出来ず長く真打に上がる事が出来なかった。
人物を演じる事に秀でている。
桜咲真幸(おうさか まさき)
朱音の母
ショートカットにピアスの女性
芽の出ない夫の志ん太を長く支え続けた。
阿良川志ぐま(あらかわ しぐま)
志ん太の師匠
白髪メッシュのおじさん。
実力主義の阿良川一門のNo.2。
人情噺を得意とする。
阿良川一生(あらかわ いっしょう)
当代一と呼び声も高い落語家
白髪顎鬚で目つきの鋭いおじさん。
天才落語家であるが、価値基準は厳しくその行動は横暴。
阿良川ぐりこ(あらかわ ぐりこ)
志ぐまの弟子の一人
黒髪眉傷の青年。
師匠の志ぐまが若いギャルと付き合っているという噂を聞き、志ぐまをつける。
吉乃(よしの)
落語喫茶のオーナー
白髪眼鏡の老婦人。
あかねは彼女の店で初高座に上がる。
阿良川魁生(あらかわ かいせい)
阿良川一生の弟子
入門して二年、19歳で二つ目になったイケメン。
色っぽい演技と三枚目のギャップで客を沸かせる新進気鋭の落語家。
阿良川享二(あらかわ きょうじ)
志ぐまの弟子の一人
坊主頭に短眉の青年。
嫌がる兄弟弟子に代わり、朱音の教育係を引き受ける。
その真面目過ぎる性格で、弟子たちをまとめあげた。
御来屋守(みくりや まもる)
居酒屋”海”の店長
太眉髭で巨漢でオネエっぽい男性。
享二の指示で海で働くことになった朱音に、客の要望に応える気遣い(気働き)について助言を送る。
あらすじ
落語の二つ目として長い下積み生活を送る落語家、阿良川志ん太。
彼は落語家としての光るものは持っていたが、プレッシャーに弱くここ一番でその力を発揮する事が出来ず、長く辛い時代を送っていた。
そんな志ん太に真打昇進の機会が巡ってくる。
阿良川一門が企画した真打昇進試験。
それに合格すれば収入も上がり、妻の真幸に頼らずとも暮らしていけるようになる。
何より、娘の朱音に父親として胸を張れる。
そんな思いを抱き臨んだ昇進試験。
当初、志ん太は気負いすぎ空回り気味だった。
しかし、ふいに聞こえた朱音のくしゃみが流れを変えた。
志ん太は妻の真幸から朱音が彼の落語を真似している事を聞いていた。
あかねは志ん太の落語が好きで、自分の父親を自慢したくてしょうがないのだ。
“せめて朱音の前ではカッコイイお父さんでいてよね”
そんな真幸の言葉を思い出した志ん太の雰囲気が変わる。
演目は芝浜。
飲んだくれの亭主が浜で大金が入った財布を拾うところから始まる、江戸落語を代表する人情噺だ。
志ん太は演題にもなっている芝の浜でのシーンをバッサリと切り捨て、自分が得意とする人物描写で勝負をかけた。
志ん太はこれまでの全てを賭けて、客の心をつかみ喝采を浴びた。
そして結果発表。
審査委員長である阿良川一生は、昇進試験に挑んだ五人の二つ目、全員の破門を告げた。
感想
阿良川一門を率いる落語家、阿良川一生の一声で落語家人生を奪われた阿良川志ん太。
この作品はその志ん太の娘である朱音が、父の落語は正しかったと証明するため、落語家として人として成長していく姿を描いた作品です。
作中、朱音が父親、志ん太の噺で風景を見たように、私もテレビで見た桂米朝師匠の落語で同様の体験をした事があります。
噺のリズム、語りの巧みさ、客の呼吸、すべてが合致し目の前に景色が広がる。
小説等で同じような感覚は何度も味わった事があるのですが、落語という話芸でそんな風になったのは初めてだったので、とても感動したことを覚えています。
今後、噺家のあかねがどんな風になっていくのか。
先が楽しみです。
まとめ
特に落語好きという訳ではないのですが、感想に書いた米朝師匠の件があったので、朱音が父親、志ん太の噺で登場人物達の姿が見えたというエピソードはすごく共感出来ました。
次巻は気働きが何か掴んだあかねが”子ほめ”を演る模様。
どんな高座になるのか、読むのが楽しみです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品は週刊少年ジャンプ公式サイトにて第一話が無料でお読みいただけます。