薫る花は凛と咲く 1 講談社コミックス
著:三香見サカ
出版社:講談社
いかつい見た目で誤解されがちな少年、紬凛太郎(つむぎ りんたろう)。
底辺高校として知られる千鳥高等学校に通う彼は、実家のケーキ屋を手伝っていた際、千鳥高校の隣にある名門お嬢様学校の生徒、和栗薫子(わぐり かおるこ)と知り合い……。
登場人物
紬凛太郎(つむぎ りんたろう)
底辺男子校として知られる都立千鳥高等学校の生徒
金髪ピアスで背の高い、いかつい見た目の少年。
その見た目で子供の頃から怖がられる事が多く、人付き合い、特に恋愛などは諦めている。
和栗薫子(わぐり かおるこ)
名門お嬢様学校私立桔梗学園女子高等学校に通う女の子
ユルフワロングの美少女。
食べる事が大好きで凛太郎の実家のケーキ屋の常連。
桔梗の生徒はほとんどが千鳥の生徒を毛嫌いしているが、彼女はそんな事を気にせず、凛太郎の見た目にも怯えた様子を見せなかった。
彼女の家はお金持ちな訳でなく、成績を評価され特待生として桔梗に入学した。
現在も努力を続け、学年一位をキープしている。
紬杏子(つむぎ きょうこ)
凛太郎の母
金髪でサバサバした性格の女性。
見た目で怖がられ、すべてを諦め気味な凛太郎のことを心配している。
宇佐美翔平(うさみ しょうへい)
凛太郎の友人
赤髪の賑やかでお調子者の男の子。
自分たちを見下し毛嫌いする桔梗の女子達にげんなりしている。
夏沢朔(なつさわ さく)
凛太郎の友人
黒髪で眠たげな眼のイケメン。
勉強は出来るが天才ゆえ教え方は下手。
依田絢斗(よりた あやと)
凛太郎の友人
黒髪で小柄な男の子。
平和主義だが喧嘩最強。
保科昴(ほしな すばる)
薫子の親友
銀髪ロングのクール系美少女。
千鳥の生徒である凛太郎と薫子が近づくのを危険視している。
あらすじ
都立千鳥高等学校と私立桔梗学園女子高等学校。
隣り合う二つの学校だが、お嬢様学校の桔梗と底辺校である千鳥との間には壁があり、桔梗は千鳥を見下し忌避。
そんな桔梗の生徒達を千鳥に通う男子たちも嫌っていた。
千鳥高校に通う二年生の紬凛太郎も、ただ学校が隣り合っているだけで桔梗の女子は卒業したら一生関係のない人種だと思っていた。
そんなある日、凛太郎が実家のケーキ屋で店番をしていると、小柄で髪の長い女の子が大量のケーキを食べているのを目撃する。
彼女は凛太郎の視線に気づくと、口元を抑え声にならない叫び声を上げた。
むせ返った少女に慌てて水を渡し、凛太郎はこんなによく食べる女の子がいるのかと、改めて少女を見つめた。
少女はそんな凛太郎の視線に耐えかねたのか、ご馳走様でしたと逃げるように店を立ち去った。
……ビビらせた?
母の杏子に聞けば、彼女の名は和栗。
月に一、二度来てくれ、話して仲良くなったらしい。
凛太郎は自分の容姿が怖い事を自覚していた。
きっと彼女も自分の見た目に怯え、逃げ出したのだ。
もう来ないかもしれない。
常連が一人減った事を杏子に凛太郎は詫びた。
「店来なくなったら俺のせいだよ……ごめん」
「なんで凛太郎のせいになんのよ。和栗さんはそんな子じゃないわ」
何でも自分のせいにしすぎ、悪い癖だ。
杏子はそう言ってくれたが、凛太郎は彼女を怯えさせた事を気に病んでいた。
後日、店を訪れた和栗は凛太郎を呼び出し、ケーキをおごると言い出した。
テーブルに対面で座り、置かれたケーキの前で困惑する凛太郎。
どういう事だ。彼女は自分を見て怯えたのではなかったのか?
「この前はいきなり飛び出してしまってすみませんでした……そのケーキはお詫びなので食べてください」
「いや、そういう訳には……」
凛太郎が視線をケーキから和栗に向けると、彼女は物欲しそうにケーキを凝視していた。
「…………どうぞ」
「えっ!? いえっ、それはあなたに……」
「いーんすよ。これ美味いんでよかったら」
「でも……っ」
そう言いながらも、和栗はケーキの魅力に勝てず、結局赤面しながら、ケーキを口に運んだ。
ケーキ……もだけど、食べる事が好きなんだな、この子。
「驚かせてしまいましたね」
「ん?」
「この間の……あまり見ない量だと思って」
「~~~~~~~…………っ…………はい」
困惑し顔を顰める凛太郎にあははと笑うと、和栗はあの日はお客さんがいなくて、家まで我慢出来なくて沢山頼んでしまったと告げた。
その後、互いに名前を言い合い、話してみると、和栗薫子と名乗った少女は以前から店を手伝っている凛太郎を知っていたようだ。
「あん時、俺が怖くて飛び出したんじゃないんすか!?」
「えっ!? 違いますよ。何回も見てますし……」
「じゃあ何で!?」
「そ……それは……男の人にあんなにじっと見られたの、初めてで……ドキドキしただけです……」
……ドキドキ? 俺に? 何で?
ふつー俺みたいなのにガン見されたら怖がるだろ!?
今まで会った人は全員……。
そう思い凛太郎は薫子の顔に視線を向ける。
彼女は頬を染めながらこちらを見返していた。
そんな薫子の反応の意味が分からないながらも、凛太郎の顔にも朱が刺した。
感想
底辺男子校に通う背が高くいかつい見た目の男子、紬凛太郎。
お嬢様学校に通う小柄な美少女、和栗薫子。
過去のトラウマから他人対して距離を置いていた凛太郎は、外見ではなく中身を見て自分に笑顔を見せる薫子と出会った事で、少しずつ変わっていきます。
進学校である事、底辺校である事。
外見から受ける印象。
そういった物でレッテルを張られ一括りにされ判断される評価。
そんなものは余りに大雑把で、意味のない事だ。
この巻に収録されたエピソードを読んでいて、改めてそんな事を思いました。
まとめ
見た目は完全なヤンキー少年ですが、内面はナイーブで優しく、他者を思い気遣いの出来る凛太郎。
薫子はそんな凛太郎だから好きになったんだろうなと思います。
底辺校の千鳥とお嬢様学校の桔梗。
水と油な高校に通う二人の恋がどうなるのか、続きが楽しみです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。