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先生、今月どうですか 3 ハルタコミックス
作:高江洲弥
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
デビュー作である「夕立」を超える作品が書けない事に悩む小説家、四十万万里(しじま ばんり)。
彼に恋をした、人に触れるとその人との未来を視る力を持つ少女、佐久間紫(さくま むらさき)。
紫は万里との未来を本当にすべく、彼を支えられるよう強くなろうと決意するが……。
触れると未来が視る力を持つ、素直になれない少女、紫と一見、お調子者だけどナイーブな小説家の恋物語、第三巻。
登場人物
不破(ふわ)
101号室の住人
和装の凛とした雰囲気の老人。
穏やかで様々な事に興味を持ち挑戦している。
桜庭丞(さくらば じょう)
万里の元担当編集
黒髪黒子で牙な男性。
学生時代、孤独を抱えていた万里を部屋に上げ、共にデビュー作となった「夕立」を書き上げる。
それから十三年、再び書き始めた万里の下を訪れる。
あらすじ
以前、夕立を読めば紫と付き合えるという噂を信じ、彼女に近づいた少年、熊野。
万里一筋な紫は当然、彼の告白を断るがその後、熊野は読書にハマったらしく図書室に顔を出していた。
そんな熊野との会話で、紫は自分が本を好きになったきっかけを思い出す。
五年前、紫が13歳の頃。
新たな入居者として万里がコーポさくまにやってきた。
作家だというその物静かな青年は、どこか寂しそうな眼をしていた。
大家代理として彼を理解したいと、紫は彼の代表作である夕立を手に取った。
中学生の紫には難しい内容であったが、何とか読み切った。
読み終えた後、独りぼっちで寂しさを感じていた主人公と万里が重なる。
主人公は幸せになったのだろうか。
幸せにしてあげたい。
そんな感想を万里に伝え、紫は今その子は幸せか尋ねた。
「初めて言われたな」
紫の問いかけにそう返し、万里は優しい笑みを浮かべた。
その微笑みに紫の胸は訳もわからず高鳴った。
「……握手していただけませんか。読んだ記念に」
頭を掻き差し出された手を紫は手袋を外し握る。
視えた未来では、成長した自分が真っ白なドレスを着て微笑んでいた。
感想
今回は冒頭の紫と万里との出会いのエピソードから始まり、住人の一人、不破とその過去、進級と進路、編集者の桜庭と夕立、働き始め小説から距離を置いた万里、新たな火種と植物園等が描かれました。
今回はその中でも小説から距離を置いた万里の姿が印象に残りました。
作中、彼は夕立を書いた時の楽しさを求め、再びペンを取りました。
しかし、そこには吐き出したい感情は無く、書きたいという情熱も失っていました。
そんな状態で無理やりひねり出そうとしても、物語やアイデアが出るはずもなく……。
人により何かを作り出す方法は違うのでしょうが、自分の中に表現したい事の核が無ければ、モノを生み出す事は出来ないように思います。
万里は今、その核を失っている。
作中の彼の姿を見ていてそんな事を感じました。
紫が彼の核、火種になれるのか。
先が楽しみです。
まとめ
小説から距離を置いた万里。
紫は、深夜の交通整理の仕事に打ち込む事で創作を忘れようとする万里に寄り添い、彼の中に新たな火を灯そうと奔走します。
紫の頑張りは実を結ぶのか。
次の展開が気になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品はComicWalkerにて第一話が無料でお読みいただけます。