AIの遺電子 Blue Age 3 少年チャンピオン・コミックス
作:山田胡瓜
出版社:秋田書店
電車が高架から脱線、落下する事故が発生し、ヒューマノイド科志望の研修医、須堂光の勤める東京共創医療センターにも怪我人が大量に運び込まれる。
人を超えた超AI「MIRAI」で管理されたセンターでは、手術はマシンが行っていた。
だが患者数が多く、マシンは肉体の交換が出来ない人の治療に回され、ヒューマノイドは後回しにされていた。
そんな状況に須堂は人の手による執刀を訴え……。
登場人物
小笠原ミチル(おがさわら みちる)
電車事故の被害者
25歳のヒューマノイドの女性。
肝臓からの出血に対応するため、須堂たちは緊急手術を行う。
滝川(たきがわ)
電車事故の被害者
四十代のヒューマノイドの男性。
ミチルと同様、須堂たちの手で手術され命を取り留めるが……。
島下浩(しました ひろし)
毒キノコを食べ中毒症状を起こしセンターに運び込まれる。
坊主頭のヒューマノイドの男性。
アニメのロボットヒーローに憧れを持ち、ロボット化願望を持つ。
ハカセ
島下の友人
ネットで島下と知り合い意気投合、「空想科学実現隊」というサークルを作り、自分たちのあこがれたロボットヒーローを作り出した。
リン
東京共創医療センターの生活支援ロボット
心のケアに加え生活の手伝いやコンサルティングなど、幅広い活動が許可されている。
彼の事を知ったある女性が、引きこもりの息子の事っでセンターを訪れ……。
水琴(みこと)
須堂の同期、朝倉が出会ったホステス
何やら訳ありらしくマシンボディを使い、テレイグジスタンス(遠隔操作)で働いている。
朝倉は彼女の考え方や言葉に魅かれていくが……。
あらすじ
電脳を頭脳としているヒューマノイドは、電脳さえ無事なら肉体の交換によって命をつなぐことが出来る。
だが、処置が遅れ電脳が壊れれば死は免れない。
AI「MIRAI」の提案の中にも最優先ではないが、人の手による執刀も含まれていた。
水野は部長に執刀の許可を願うが、リスク回避を考える部長は許可を与えなかった。
須堂は水野に緊急の手術だけでもと訴えるが、手術がマシンによって自動化された今、経験の乏しい水野には対処できる自信がなかった。
そんな水野に須堂は食い下がる。
AIの出す答えは人間が何を求めるかによって変化する。
MIRAIが人による執刀を最有力候補にしないのは、部長のような視点も加味しての事。
救命を最優先とするなら、人による執刀が最有力だとMIRAIは評価している。
「水野さん、僕らは今、問われてるんです。医師としての……人間としての哲学を」
須堂の言葉を聞いた水野は彼を厄介な後輩と評しながらも、部長に造反し患者を受け入れる事を決意した。
感想
今回は前巻から引き続き、電車事故の患者受け入れと、重傷者の人による執刀から始まり、AIによるマッチング、ロボットヒーローにあこがれた青年、引きこもりとケアロボット、朝倉の恋と違法AIなどが描かれました。
作品に登場するヒューマノイドは、人間と同様、有機体である肉体と機械である電脳で構成されています。
いわばヒューマノイドは人造人間ではありますが、彼らは感情を持ち人と同様、老化し衰えるように作られています。
作中、事故の被害者の一人は須堂たちに執刀により、新たな肉体が得られなかった事に不満を抱いていました。
また、ロボットヒーローに憧れた青年は生身の肉体を捨て、友人が作り上げたロボットの体に電脳を移植していました。
現状の医療では脳を他の肉体へと移し替える事は出来ないでしょうし、仮に可能であっても倫理や世論がそれを許さないように思えます。
時代が進みもしそれが可能になったら……。
自分自身や大事な人の命が救えるのなら、どんな選択をするんだろうか……。
収録されたエピソード読んでいて、そんな事を感じました。
まとめ
以前、このブログで書いた覚えがあるのですが、コンピューター上で動く人工知能であっても、思考プロセスが人と同じであれば、それは一つの生命のように感じます。
作中、人権を認められているヒューマノイドたち。
作品の中で彼らは既に新たな人類の一種として生活しています。
ただ、ヒューマノイドを狙ったテロなども存在していて……。
ヒューマノイドの黎明期の話も読んでみたいなと感じました。
こちらの作品はコミッククロスにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の山田胡瓜さんのTwitterアカウントはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。