AIの遺電子 Blue Age 2 少年チャンピオン・コミックス
作:山田胡瓜
出版社:秋田書店
2175年、人とヒューマノイドが共存する社会。
東京共創医療センターの研修医、須堂(すどう)は懇親を目的とした飲み会で出会ったグッドライフ科のヒューマノイドの女性、浜崎(はまざき)に部屋に誘われる。
彼女の誘いに乗り部屋についた須堂は、浜崎が改造されていると告げ……。
登場人物
小西(こにし)
健康福祉士の中野(なかの)の同僚
黒髪くせ毛セミロングの女性
噂好きのムードメーカー。
超AIのMIRAIに管理されている東京共創医療センターに窮屈さを感じている。
朝倉(あさくら)
須堂(すどう)の同僚
くせ毛のヒューマノイドの青年。
亮太(りょうた)
ヒューマノイドの少年
父親からエリートになれと勉強を強要されていたが、フリスビーを取ろうと木登りをし落下、記憶を失う。
亜紀(あき)
女流棋士
有名な女流棋士として活躍していたが、脳内出血により32歳の若さで亡くなった。
生前、ビヨンドと呼ばれるユーザーのライフログから個性を学習したAIを使いタレント活動を行っていた。
圭介(けいすけ)
亜紀の夫
亜紀の事は愛していたが、囲碁に忙しい本人よりもアバターであるビヨンドと過ごす時間に癒されていたようだ。
亜紀の父
亜紀の疑似人格であるビヨンドには否定的。
亜紀の死後、接触してきた記者に協力しビヨンドを認めない証言をする。
太田
東京共創医療センターの医師
糸目で天パの中年男性。
穏やかでマイペースな性格。
あらすじ
旧式のボンベ(ヒューマノイドの電脳に直結し疑似空間を現実と同じように体感する装置。ハッキングやウィルス感染など使用には危険を伴う)の使用。
瞳孔の不自然な動きから、須堂は浜崎が人格の不正操作もしくはウイルスに感染していると結論づけた。
須堂が飲み会の後、彼女と二軒目に行ったのもその事に気付いたからだった。
須堂と話した浜崎は検査を受けることに同意。
その後、東京共創医療センターに戻った浜崎は須堂により検査を受けた。
結果として彼女はウイルスに感染していた。
飲み会での「AIに負けないようヒトもヒューマノイドも改造すればいい」という発言。
それもウイルスの影響によるものだったようだ。
汚染の程度は限定的で影響は少なく、それが救いだった。
勉強のためセンターに戻っていた水野(みずの)にそう話しながら、須堂は浜崎の履歴エリアを表示していたタブレットに目を落とす。
Q 3b26 Train coming
Q 3b26 Train coming
Q 3b26 Train coming
Q 3b26 Train coming
そこには延々とそんな文字列が並んでいた。
感想
今回は電脳ウイルスに侵された浜崎のエピソードから始まり、中野の同僚、小西とAIの監視、勉強漬けの少年亮太と記憶喪失、女流棋士、亜紀の死と疑似人格、大規模事故と人の手による執刀などが描かれました。
今回はその中でも疑似人格のエピソードが印象に残りました。
生前、囲碁の棋士として活動していた女性、亜紀。
彼女はライフログ、生活の記録や発言を疑似人格AI「ビヨンド」に送り、自分を模倣したアバターを作り上げていました。
コミックスに収録されたコラムで作者の山田さんが書かれていましたが、現在の技術でも残された情報から故人を再現したAIを作る試みはなされています。
今後、テクノロジーが進歩し本人が死んだ後もAIとして残りつづけるなら。
そうなったら作家やアーティスト、俳優など、多くのファンを持つ人々が永遠に生き続ける世界になるのだろうか。
権力者も疑似人格として、ずっと支配者の椅子に座り続けるんじゃないか。
そう考えると少し怖くなりました。
まとめ
この巻の終盤、大規模な事故が発生し東京共創医療センターに多くの怪我人が運び込まれました。
AIによる自動手術が実現しているとはいえ装置の数には限りがあり、須堂は電脳が生きていれば、肉体の取り換えが可能なヒューマノイドが後回しにされている状況に人の手での執刀を訴えます。
失敗のリスクもある人の手での施術。
彼の提案がどんな結果になるのか、読むのが楽しみです。
こちらの作品はコミッククロスにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の山田胡瓜さんのTwitterアカウントはこちら。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。