相続探偵 5 イブニングKC
原作:西萩弓枝
漫画:幾田羊
出版社:講談社
老舗和菓子店「鳳凰」の主人、百万遍紘一(ひゃくまんべん こういち)の残した遺言、鳳凰の名前は紘一の正妻の子、正臣(まさおみ)に、店は妾の子、野心(やしん)にというもので、鳳凰は真っ二つに割れる事となった。
それにより、正臣が出した「鳳凰別棟」は価格の割に味が悪いと名を落とし、店を引き継いだ野心も「鳳凰」というブランドを失い苦戦する事となった。
このままではどちらも、遅かれ早かれ立ち行かなくなる。
灰江(はいえ)は友人の朝永(ともなが)に二人の持つ権利の売却を示唆させるが……。
登場人物
福田真央(ふくだ まお)
美大生(22)
くせ毛ショートの女性。
灰江もなじみの老舗の銭湯「笑福湯」の孫娘。
笑福湯は銭湯だけでなく甘味処も併設しており、近所の人々の憩いの場所となっている。
祖父、健治の跡を継ぎ「笑福湯」を存続させることを望む。
福田健治(ふくだ けんじ)
笑福湯の主
白髪くせ毛の老人。
まだまだ元気ではあるが、自分が死んだあとの笑福湯や、手持ちの不動産の相続を灰江の言葉で考え、彼に相続について相談する。
福田明子(ふくだ あきこ)
健治の娘、真央の母
くせ毛ショートの女性。
健治は銭湯の他にもアパート等も所有している。
ただ、老朽化により空き室が多く、税金の支払いで儲けにはなっていない。
銭湯を存続させることに彼女と夫は反対しているようだ。
飯山聡(いいやま さとし)
笑福湯の常連
黒髪の好青年。
不動産会社に勤めており、相続税対策で手持ちの土地を売ろうとした健治の相談に乗る。
内田美穂(うちだ みほ)
飯山が務める三友不動産の営業
黒髪眼鏡の女性。
健治の依頼を受けた飯山とともに、土地の調査を行うが……。
あらすじ
朝永が提案した中国の資産家による買収話。
正臣と野心は共にその話に首を横に振った。
「にゃるほど、じゃあ二人ともこのまま『鳳凰』が潰れるのを待つだけってわけだね」
灰江の言葉に野心は気まずそうに目を伏せ、正臣は目を閉じ首を反らした。
そんな二人の様子に、正臣の正妻、雅(みやび)と妾の多津子(たつこ)は言い合いを始める。
二人をなだめつつ、灰江は正臣たちに問いかける。
「正臣さんと野心さんは、今まで二人っきりで腹を割って話したことある?」
灰江の問いに正臣は鼻で笑い、母が嫌な顔をすると否定した。
彼の父の紘一は和菓子職人としての腕以外はからきしで、金関係は母の雅が頭を下げ回してきた。
そんな母が嫌う多津子の息子、野心と仲良くするのは彼女を裏切るように正臣には思えた。
同様に、店で陰口をたたかれ泣いていた母を見ていた野心も、跡取りである正臣と仲良くする気は起きなかった。
その後、正臣は野心に傘下に入るよう告げ、野心は「鳳凰」というブランドを安売りする正臣に反発した。
緊迫した空気が流れ、対話は決裂しそうになる。
そんな状況の中、灰江は二人に一番大事なモノは何か尋ねた。
「「『鳳凰』という伝統です」」
反発する二人の声は重なっていた。
感想
今回は前回から引き続き、老舗和菓子店「鳳凰」の相続をめぐる二人の跡継ぎの対立から始まり、「鳳凰」の今後、灰江の馴染みである銭湯の相続問題について等が描かれました。
その中でも今回は銭湯についてが印象に残りました。
昔はお風呂のない家も珍しくなく、銭湯はそんな人たちが日々の汚れを落とし、疲れを洗い流す施設として生活に溶け込んでいました。
しかし、時代が進み家に風呂がある事が当たり前になると、銭湯に行くことは逆に特別なモノへと変わっていったように思います。
現在の入浴施設は日常ではなく、娯楽の一つになっている気がします。
作中、銭湯を継ぐと宣言した孫娘の真央。
健治から銭湯を引き継いだ彼女が、店をどんなものにしていくのか。
作品の主眼はそこではありませんが、なんだか気になりました。
まとめ
昔、存在していた古き良きもの。
銭湯もその一つではないでしょうか。
生活が便利になるに従い、消えていったものや商売。
時代の流れというものなのでしょうが、少し寂しく感じました。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。