メダリスト 6 アフタヌーンKC
作:つるまいかだ
出版社:講談社
バッジテスト六級に合格し全日本選手権の予選に当たる、全日本ノービスA予選中部ブロック大会への出場したいのり。
上位五名が全日本選手権に出場という状況の中、オリンピック銀メダリスト、鴗鳥(そにとり)の教え子、八木夕凪(やぎ ゆうな)が三回転ルッツ+三回転ループという高難易度のジャンプを決め、高得点をたたき出す。
ノービスAの選手は強い。
プレッシャーを感じるいのりの手をコーチの司(つかさ)はそっと握る。
「今日、俺はあなたを金メダリストにする」
司はそう言っていのりを最終確認へと送り出した。
登場人物
古部多まいん(こぶた まいん)
名城クラウンFSC所属
全日本ノービスA予選中部ブロック大会の出場選手。
大会を四位で通過した。
いのりの姉、実叶(みか)に憧れスケートを始めた。
千羽輪太郎(ちわ りんたろう)
名城クラウンFSCのアシスタントコーチ
黒髪童顔の青年。
古部多まいんのコーチ。
王仁敦士(わに あつし)
愛西ライドFSCのアシスタントコーチ
炉場愛華(ろば まなか)のコーチ
雉多輝也(きじた しょうや)
名港ウィンドFSCアシスタントコーチ
申川りんな(さるかわ りんな)、八木夕凪(やぎ ゆうな)の担当。
千羽、王仁、雉多の三人は一年でいのりを強くした司に話を聞くため、試合後、ほぼ強制で食事に連れ出した。
あらすじ
いのりを滑走直前の最終確認に送り出した司は、戻ったいのりにどんな言葉を掛けるか選択を続けていた。
現状、いのりの飛べるジャンプでは他の選手には届かない。
ただ、疲れの出る後半に難易度の高いジャンプを集中させることで、得点を稼いだ炉場愛華の例もある。
観客席でいのりを応援していた耕一(こういち)と娘の羊(よう)、いのりを昔から知る瀬古間(せこま)の三人は司の采配に不安を感じつつ二人を見守った。
そんな風に心配されているとは知らない司は、最終確認を終えたいのりに最後の言葉を掛けていた。
「俺はあなたを勝たせる自信がある。でも俺だけじゃだめだ。いのりさんの覚悟が何より大事なんだ」
選手の誰もが努力の末、手に入れようとする金メダル。
それは人の上に立つ勇気のない者が偶然手にできるものではない。
司は自分の言葉の強さが、いのりの背を押す為だけの強さなるように祈り口を開く。
「信じて、今からあなたが獲りにいくのは金メダルだ!」
「……先生も信じてる? 金メダルが獲れるって……」
俯き、問いかけたいのりを司は真っすぐに見つめ返した。
「信じてるよ」
彼の言葉を聞いたいのりはおもむろに顔を上げる。
「任せて」
そう静かに力強く告げ、彼女は拳をかざした。
感想
今回は全日本ノービスA予選中部ブロック大会におけるいのりの滑走から始まり、金メダル獲得、コーチたちと焼き肉、夜鷹純(よだか じゅん)と司、腹筋と三回転などが描かれました。
今回はその中でも前半、いのりの大会における滑走が印象に残りました。
高難易度のジャンプをプログラムに組み込むライバルたち。
彼女たちに対抗するため、司が考えた作戦は今できる事の完成度を上げる事でした。
元はジャンプのないアイスダンスの選手だったコーチの司。
彼のレッスンは他のコーチと違い、ジャンプよりもスケーティングを主体としたものでした。
その事が滑りに安定感を出し、ジャンプの完成度も上げたようです。
作中、いのりは一度もミスする事なくプログラムを消化し、順調に得点を稼いでいきます。
ただ、それだけでは全日本出場の五枠に入る事は出来ても、金メダルは狙えません。
そこで司は最後のジャンプに、今、いのりが出来る最高のジャンプを組み込むのですが……
いのりを信じ勝利を目指した司。
司を信じ懸命に滑り飛んだいのり。
二人三脚の滑走は読んでいて、最高に気持ち良かったです。
まとめ
全日本選手権まで一か月。
時間のない中、司といのりはより高難易度な三回転ジャンプの習得を目指し動き始めます。
次巻ではジャンプの専門家が登場する模様。
その専門家の教えでいのりが三回転ルッツ、フリップを飛べるようになるのか。次も楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて第一話が無料でお読み頂けます。
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