虚妄の女王 ~辺境警備外伝~ 3 ボニータ・コミックス
著:紫堂恭子
出版社:秋田書店
ルウム復活暦1005年、北方辺境国のエアドロム王国。
襲撃を受け死亡した王女セオドラの代役を務める事になった、代々王族の護衛を務めて来たバンブラス一族の少女フィアンナ。
そしてやってきた戴冠式の日。南の大国ルウムが国境の南、美枝森(ファグルリミ)へ人を移住させていると連絡が入り……。
登場人物
タイン夫妻
セオドラ姫の両親
謀反の疑いがかけられ僻地へと飛ばされた。
フィアンナが女王になり、その疑いも晴れ公爵に返り咲いた。
あらすじ
女王セオドラとして侵入してきたルウムの軍団長、サウル・カダフと対峙したフィアンナ。
しかし百戦錬磨のサウルはフィアンナにも、同行した王子トライドにも国の代表としての決定権がないことを見抜いた。
国を背負って立つ覚悟が感じられない。
そんなサウルの言葉に、フィアンナは返す言葉もなかった。
赤面するフィアンナにサウルは言う。
「俺は職業軍人だが、それでもはっきり言おう。無意味な戦いなんざまっぴらごめんだ! お互いの国になんの得もない!」
そう言い切ったサウルにフィアンナは、一方的に不利な条件は飲まない事を前提に改めて話を聞くことを承諾した。
サウルの提案は現在無人地帯となっている美枝森(ファグルリミ)を含んだ緩衝地域、その北をエアドロムが、南をルウムが支配地域とするというものだった。
話だけなら国土が増える事になるが、ルウム側が取り決めを守るかは不明だ。
移住が始まれば暫定国境で衝突が起こる事も考えられる。
トライドとの相談でフィアンナは国境警備をお互いに置く事が有効だと考えた。
その後、真面目に国について話す二人の様子に、サウルはフィアンナ達を信用する事を伝え、捕虜となり解放されただろうカルライグ伯に会うため南に戻るとフィアンナ達に告げた。
それを聞いたフィアンナはサウルに同行し、カルライグ伯と落ち合う事を望む。
トライドは危険だと反対するが、フィアンナは心配してくれるのと彼をからかう。
ポンポンと言い合いをする二人に、見かねたサウルは一緒に来るかと声をかけた。
彼は二人に見せたいモノもあるらしい。
そうしてたどり着いた先、サウルが見せたのはエアドロムの基礎を築いた英雄、モディグ王の功績を称えた壁画だった。
その壁画をトライドが説明する。
モディグ王は部族の首長ではなく、部下の一人だった。
ある日、彼が闘いから戻ると首長の様子がいつもと違っていた。
首長はすでに殺され、よく似た従弟が首長に化けていたのだ。
それを見抜いたモディグは偽物を斬首して、自らが首長になったらしい。
だが、ルウムに伝わる歴史書では領地や権力を望んだモディグが、謀反によって首長の座を得たのだという。
モディグはその後、都合の悪い真実を嘘の逸話で覆い隠したのだ。
「今となってはどっちが真実か確かめようもないがね」
そう話すサウルに、どうして自分たちにこれを見せたのか。言いたいことが分からないとフィアンナは声を荒げる。
サウルは若く純粋な二人に、政治や権力の正体を見せたかったと語った。
感想
女王の影武者として生きる事になった少女、フィアンナの物語もこの巻で完結。
作品はどうも打ち切りらしく、期待していた隊長さんやカイルの活躍は描かれず、フィアンナがトライドと共に国を去るシーンで終わっていました。
久しぶりに隊長さんの顔が見れたので、カイルや前作の主人公セスとの絡みも楽しみにしていたのですが、そういった展開はなくエアドロム内の政治闘争に終始していたのが、少し残念でした。
ただ、辺境警備のファンの一人として、隊長さんが相変わらず飄々としていてスケベだったのがすごくよかったです。
まとめ
三巻は読んでいてとても駆け足な印象を受けました。
出来るなら全五巻ぐらいで、主人公フィアンナがもっと活躍する物語を読んでみたかったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。