スティグマ 3 ビッグコミックス
著者:井浦秀夫
出版社:小学館
無実の罪で刑務所に二十五年服役したヤクザ、鬼束与(おにづか たすく)。
信じていた親分の穴黒侠介(あなくろ きょうすけ)の晩年を聞いた鬼束は、自分の二十五年は何だったのかとガラスに映る自分の姿に虚しさを感じるのだった。
登場人物
金仁久健(きんにく たける)
生活保護ビジネス再生館寮長
オールバック無精髭おじさん。
ユキのボスであるママが行う生活保護ビジネスのアパート、再生館の寮長。
寮長といっても取り纏め役というだけで、彼も搾取される側。
鬼束はユキについて彼に尋ねるが……。
好井太助(すくい たすけ)
再生館を含めた地域の担当
救済さんと呼ばれる、生活保護受給者のスカウト。
鬼束の母
鬼束の実家は菓子工場を営んでおり彼女は最初、工場の職員だった。
社長だった鬼束の父は妻を亡くし、彼女を後妻として迎え入れる。
鬼束家では肩身が狭く、幼い鬼束が問題を起こすと先方に頭を下げ、鬼束を叱っていた。
奈美恵(なみえ)
鬼束が服役前に付き合っていた女性
穴黒が通っていた店のホステス。
彼女の部屋から拳銃が出た事で鬼束は強瀬殺害の実行犯とされた。
再生館の老人
鬼束の隣の部屋に住む老人
鬼束が語ったユキの事を、過去に聞いた話から化生ではないかと疑う。
あらすじ
鬼束はガラスに映る年老いた自分の姿に、自分の生きた五十年が無意味だったと落ち込んでいた。
憧れた親分、穴黒にしても自分が勝手に理想化していたに過ぎず、本当は強瀬も殺してはいない。
自分は偽物だ。
ただ間違って刑務所に入れられただけの間抜けな能無しだ。
そんな鬼束の心の声を読み取ったユキは、思わずそんな事ないと口にしてしまう。
心の声を口に出していたのか、そう慌てる鬼束にユキは
「25年も刑務所に入っていて……もしかして1人も人を殺してないの……?」
と尋ねた。
彼女の言葉に、鬼束はヤクザなのに1人の命も取れない役立たずだって言いたいのかと声を荒げる。
ユキは言葉を間違えたと気づくが、収まりのつかない鬼束は一人にしてくれとユキを追い払った。
ユキが立ち去ってすぐに、鬼束は自分の大人げなさを悔いた。
振り返り彼女を探すが、その姿はどこにもない。
そんな神出鬼没なユキに鬼束は故郷の雪山で出会った、雪女の姿を思い出していた。
“あいつ……いったいどこから来てるんだ”
スマホもない鬼束は簡単に連絡を取ることもできない。
その後、鬼束は生活保護ビジネスに噛んでいるなら、再生館の寮長が知っているかもと、ユキの事を尋ねるため、寮長金仁久も下を訪れるのだった。
感想
今回は自分の人生の無意味さに落ち込む鬼束から始まり、寮長たちも知らないユキの事、鬼束が人を殺していないことを喜ぶユキ、冤罪の証明への手がかり、ユキの恋と化生の掟、鬼束の過去の女などが描かれました。
今回はその中でも化生の掟のエピソードが印象に残りました。
掟は正体を知られたら殺せというものでした。
昔話で雪女が若者に言った、誰かに話したら殺すというアレで、ユキ達も正体がバレれば相手を殺す事を掟としているようです。
それは異形である彼らが迫害から逃れるため、自分と仲間を守るためのルールのようでした。
異類婚姻譚で見られる化生や獣の変化が夫の下を去る展開。
それは連れ添い愛した者を殺さない為の、苦渋の決断だったのかなとエピソードを読んでいて思いました。
まとめ
鬼束の元カノ奈美恵。彼女は誰かから拳銃の事を口止めされていたようです。
一体だれが彼女に口止めをしたのか、穴黒組を乗っ取った図利央会(とりおかい)が絡んでいるのか。
次巻も読むのが楽しみです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。