19番目のカルテ 徳重晃の問診 5 ゼノンコミックス
著:富士屋カツヒト
医療原案:川下剛史
出版社:コアコミックス
専門の科と患者を繋ぐ医師、総合診療医の活躍を描いた作品、第五巻。
今回は内装工事の仕事をしている青年が総合診療科を訪れる所から物語はスタートします。
登場人物
荒子慶太郎(あらこ けいたろう)
内装工として働く三十歳の青年
金髪無精ひげの青年。
体の痛みを訴え総合診療科を訪れる。
身重の妻と暮らしており金銭的に余裕が無い。
ヤスコ
荒子の奥さん
セミロングの女性。
妊娠中でもうすぐ出産予定。
体調の悪い荒子の体の事、生まれてくる子供の事を考え、将来に不安を感じている。
大坪イチロウ(おおつぼ いちろう)
検察官を目指し司法試験に挑戦中の男性
黒髪眼鏡のやせた青年。
左目の痛みで魚虎総合病院を受診する。
司法試験の受験資格、法科大学院卒業後、五年間という期限が迫り焦りを感じている。
美浜圭(みはま けい)
19歳の女子大学生
ショートカットで背の高い女性。
コンビニでのバイト中、失神し倒れそれを案じた同僚の女性に付き添われ総合病院を受診する。
美浜はそんなお節介な同僚の事を煩わしく思っているようだ。
あらすじ
内装工の契約社員として働く荒子慶太郎。
彼はおなかの大きな妻、ヤスコと二人アパートで暮らしていた。
ヤスコはお金のことを心配していたが、それまでバイトで収入を得ていた慶太郎は契約とはいえ、社員になり収入も上がったことで子供が生まれても余裕だと楽天的に考えていた。
そんな中、慶太郎の体は原因不明の痛みに襲われる。
彼は総合病院を受診し、診察を受け持ったの滝野だった。
滝野は首元と腰回りの痛みを訴える慶太郎を診察し、違和感を覚えるが病の特定は出来ず徳重に助けを求めた。
徳重は一通り診察し、慶太郎の手に出来た皮疹と歯の治療痕について尋ねた。
徳重の診察を横で見ていた滝野は、慶太郎の病について思い当たる。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)。
掌蹠膿疱症の原因は人それぞれで、それを突き止めるのに時間のかかる病気だ。
戸惑う慶太郎に徳重は当てはまりそうな可能性、歯肉炎、根尖性歯周炎または歯の治療に使われた銀歯による金属アレルギーを上げた。
病気の原因を地道に一つ一つ潰していきましょう。
そう言った徳重に慶太郎は「地道に……ですか」と覇気無く答えた。
感想
今回は治療費によって生活が圧迫された慶太郎のエピソードから始まり、司法試験の受験資格である五年間の期限が迫り、焦りで自分を追い込み睡眠不足とストレスにより眼部帯状疱疹(がんぶたいじょうほうしん)を発症した大坪、バイト中失神して倒れた大学生、美浜の三つのエピソードが収録されました。
その中でも今回は三人に共通する、治療の継続を望まないという事が印象に残りました。
慶太郎は金銭的問題から、大坪は迫る司法試験への焦りから、美浜は厳しい両親への反発と抱えた秘密から、それぞれ治療は無理だと諦めたり退院を希望したり、一人で抱え込んでしまっている印象を受けました。
他者を頼らず、すべて自分一人でどうにかしようとしても、やはり個人の力には限界があります。
時に他人を頼る事、その事で開ける道もあるんじゃないかな。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
今回の終盤、いつも穏やかな徳重が声を荒げました。
命について、その扱い方について語る徳重の姿が心に残りました。
次回は訪問診療について描かれるみたいです。
どんな人たちが登場するのか、次巻も楽しみです。
この作品はゼノン編集部で一部無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。