漫画完結作品

トライガン・マキシマム 第十巻 あらすじ・見どころ・感想

投稿日:2019年3月7日 更新日:

紙吹雪
トライガン・マキシマム 10 YKコミックス

作:内藤泰弘
出版社:少年画報社

血界戦線の内藤泰弘さんの描く、SFガンアクション。
ラズロの力に膝を折ったウルフウッドに、マスターチャペルが銃口を向けるシーンからスタートします。

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#2 盟友

あらすじ
家族を守るためウルフウッドは、リヴィオと対決する。
だが、リヴィオの中にいたもう一つの人格、ラズロの前に膝を折る。
マスターチャペルは、弟子であったウルフウッドに引導を渡すべく、その銃口を彼に向ける。

辛うじて立ち上がったウルフウッドだったが、期待を裏切り続けるウルフウッドへのマスターチャペルの怒りは凄まじく、彼を撃ち、倒れたウルフウッドに、孤児院の人たちを一人ずつ惨殺すると宣言した。

ラズロはマスターチャペルが、ウルフウッドをいたぶる様子を冷静に見ていた。

マスターは、弟子に対して並々ならぬ執着を持つ。
それを裏切ったのだから、当然の報いだ。

何時だったか自分が暴走の末、ミカエルの眼の精鋭9人を廃人にした時、マスターはその才を惜しみ、自らを犠牲にして助命を訴えたことがある。

ラズロにとってそれ程、人から必要とされた事は無かった。

その後、マスターは孤児院の人々を表に並ばせた。
宣言通り、ウルフウッドの前で一人ずつ殺していくつもりなのだ。

孤児院を取り仕切る女性は、何の得がある?金もないし、子供だけだと訴えるが、マスターは得はなくても、意味はあると彼らを見下ろした。

女性は銃弾により舞い上がった砂煙に紛れて、子供たちを逃がそうとするが、誰も逃げる者はいなかった。

その様子を見て、マスターは仲の良い事だと笑いを漏らす。
それがこの男を歯向かわせる結果を生んだと、ウルフウッドの顔を孤児院の人々へ向ける。

識別できるかと女性たちに問いながら、ウルフウッドに起こった変化を彼らに語る。

ウルフウッドは、ミカエルの眼による身体改造で、人より早く年をとり、見た目が変化していた。
さらに殺し屋としての日々を彼らに知られる事を恐れていた。

しかし、女性は目の前に倒れている男が、かつて孤児院で暮らしていたウルフウッドである事に気付いた。
そのことにショックを受けるウルフウッド。
マスターはその反応に大声で笑い、望んだ反応が得られたと喜びを見せる。

だが女性はウルフウッドに「ばかだね」と声を掛けた。

「ニコラス
 あんた、また独りでやろうとしただろ
 
 全く、損な子だねえ

 あんた、理想が高いくせに、
 融通が効かなくて、傷付きやすいんだから、
 一人だと色々手にあまってきたじゃないか

 そんなに傷ついて…
 何年も帰ってこなかったくせに…

 いちばん居て欲しい時には、
 ちゃんと来てくれるんんだねえ
 あんたは」

涙をながしてそう話す女性にウルフウッドは、自分の事を心配しろ、自分は失敗したのだと心の中でつぶやく。

孤児院もリヴィオも救えなかった。
全部ひとりでやろうと、しすぎたのかもしれない。

女性の顔を見ながら、友達が出来たとウルフウッドは心のなかで報告する。
自分よりアホで……、でもあいつなら、一緒にやってくれたかも知れないなと彼は思った。

ウルフウッドの思いを他所に、マスターは感傷に浸れるのもここまでだと口にし、続けて言った。

「全てを奪わせて貰うぞ、ニコラス」

彼は銃口を孤児院の人々に向けた。
ウルフウッドは、薬を口に加える。
マスターとウルフウッド、その上をシップが横切る。

駄目か……全てが終わりか……
ウルフウッドがそう思う中、引き金が引かれ、轟音と共に薬莢が宙を舞った。

地面に薬莢が落ち、乾いた音を立てる。
誰も何も言わなかった。

大型の回転式拳銃。
放たれた銃弾は、それを手にした、赤いコートの男が広げた羽根に、全て受け止められていた。

ウルフウッドは心の中で呟いた。

友達 できてんで

今回の見どころ

・紙吹雪
今回は一巻丸々見どころだと思いますが、一つあげるなら孤児院の子供たちが、ウルフウッドのために作った紙吹雪を、船から撒いて彼の帰還を祝福した場面でしょうか。

迎えられた事に気付き、涙をながし叫ひを上げるウルフウッドを教会の鐘が静かに見送ります。
とても静かで、信じられないくらい美しいシーンでした。

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感想

今回は全て、ウルフウッドのためにあると言っていいでしょう。

ヴァッシュとウルフウッド、二人は旅を続ける中で、表面上では明るく振る舞い、しかし深い所では考え方の違いから反発し、更に深い所でお互いが似ている事に気付きます。

お互いがそれぞれを補い合い、強烈な個性を持ちながら、それが見事に融合している。
様々な物語を読み、たくさんコンビを見てきましたが、これほど息の合った二人は、いなかったように感じます。

終盤の彼の名前を冠したエピソードは、是非読んでいただきたいです。

この巻の最終エピソードを読み終えた後、本を閉じた後に分かる、カバーに描かれた無人のソファーの意味。
全てが素晴らしい1冊でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのGoldaによる画像です。
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