白蛇様の花嫁 3 ガンガンコミックスONLINE
著:佐保里
出版社:スクエアエニックス
あの世とこの世の境にある島。
そこであの世へ渡る渡し舟の事務所兼めしやで働く、女将の依子(よりこ)とその料理指南役の辰彦(たつひこ)。
辰彦は島の神である志龍(しろう):しろの従者となる事で、戦争で失った指を取り戻した。
自ら包丁を握り腕を振るえる様になった辰彦の元、依子は修行を続ける。
一方、二人は島の奥、森の中で暮らすしろの嫁だという少女、紗代(さよ)、そしてその下男、竜次と出会う。
紗代は手と足を、竜次は全身が島に留まり続けた者と同様、黒く汚れていた。
依子たちは二人も留まり続けた者達同様、温泉で洗い清め、食事をご馳走していくが……。
不思議な島での穏やかで少しミステリアスな生活を描いた作品、その完結巻。
登場人物
親方
辰彦の師匠
辰彦が生前、修行していた店の店主。
戦争で指を無くした辰彦を気にかけていた。
島の飯屋で辰彦と再会した。
ヨリコ
依子の家の女中だった妙(たえ)の娘。
島にやって来たが他の子の様に乗船札は持っていない。
あらすじ
真っ黒に汚れていた紗代の家の下男、竜次。
温泉の湯で身を清め、依子の作った差し入れを食べる事で、彼は声を取り戻し、汚れも少しづつ剥がれていった。
ただ、体が真っ黒になり喋れなくなった事を、しろが下した罰だと考えていた竜次は、自分達を助けた辰彦と依子に咎めが行くのではと不安に思っていた。
「己が願った罰は己で始末をつけよ」
かつてしろに言われた言葉と共に、竜次は過去を思い出す。
彼は島の顔役である爺様の遠縁で、9つの頃、下働きとして奉公に出された。
当時、爺様は川沿いの小さな村の村長で、年の近い竜次に孫娘の紗代の遊び相手役を任せた。
両親を亡くし、兄弟姉妹もなかった紗代は竜次を気に入り、とても仲良くしてくれた。
家族として爺様と三人、楽しい日々を送っていた竜次だったが、ある年、川が氾濫して家や畑が流され、疫病が流行り村人が大勢亡くなった。
川を鎮める為、呼ばれた祈祷師は川の主である白蛇様に花嫁を捧げれば厄災は収まると力説。
藁にも縋りたい村人もその言葉に賛同した。
選ばれた花嫁は村長の家の娘、紗代だった。
花嫁は木箱に入れられ、生きたまま川に沈められるのだという。
「最後の日までいっぱい遊ぼう」
笑顔を浮かべそう言った紗代を見て、竜次は耐えられなくなった。
雨の夜、紗代を連れて家を抜け出す。
抜け出した先には爺様がいた。
止められるかと思ったが、爺様も竜次と同じ気持ちだった。
彼は竜次に紗代を任せ、自分は村に戻るつもりで案内を買ってでた。
爺様の案内で三人は隣村へ抜ける山道に入る。
しかし、土砂崩れで道は崩れ、それに足を取られた紗代は川に滑落、助けようとした竜次も川に飲まれ、気が付けば三人とも島に流れ着いていた。
爺様は村長だった過去を買われ、島の行政を任され、紗代は森の中に家を与えられた。
竜次だけは島の領主だという長瀬(ながせ)から札を渡され島を出る様促される。
しかし、こうなった事に責任を感じた竜次は島に残り、紗代の面倒を見る事を決めた。
だが、島に残った竜次の体は少しづつ黒くなっていき声を失い、それに伴って紗代も口が利けなくなっていった。
感想
今回は紗代の世話役、竜次の過去から始まり、黒く汚れた者達の救助と汚れる訳、地鎮祭、親方との再会、依子と辰彦の選択等が収録されました。
その中でも人々が黒く汚れる理由についてが印象に残りました。
作中、竜次が語った話では、島では何でも願いが叶うようで、それは良い事も悪い事も分け隔てなくのようでした。
体が黒く汚れた者は、自らの後悔によってその身を黒く染めたという事のみたいです。
この作品では、人々は島の力によって黒ずみやがて石の様になっていました。
それは現実でも心におき得る事の様に、エピソードを読んでいて感じました。
為した事への後悔で、心が暗く沈み自らを攻め続ける事、それは更に自分自身を追い詰める。
過去を見るのでは無く、未来に目を向ける事。
生きる為に必要なのはそれなんじゃないかなと、思いました。
まとめ
生と死の狭間にある島での日々もこの巻で完結。
依子たちの穏やかな暮らしぶりは、読んでいてとてもホッコリしました。
この作品はガンガンオンラインにて一部無料で読む事が可能です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。