紛争でしたら八田まで 9 モーニングKC
著:田素弘
出版社:講談社
S.P.Iの定例会の為にイギリスに戻った八田。
彼女はそこで立ち寄った知り合いの店、P.M.Desjardinsでオーナーのパトリシアから、彼氏の浮気調査を頼まれる。
その浮気調査を完了した八田は、民族紛争で疲弊する国、マリ共和国へと飛んだ。
登場人物
パトリシア・デジャルダン
P.M.Desjardinsのデザイナー兼オーナー
ドレッドヘアーの黒人女性。
父の立ち上げたブランドを引き継ぎデザイナーとして活躍している。
八田に恋人の調査を依頼する。
ザック・ギルガン
パトリシアの恋人
赤髪くせ毛の青年。
ヒモ気質。
バカリ・ケイタ
マリ共和国出身の元プロサッカー選手
黒髪髯の黒人男性。
現在は引退し息子と二人、マリで暮らしている。
父親は閣僚で、彼の家族はバカリに後を継いで欲しいと考えている。
バカリ自身は政治利用される事を嫌い、またその事で息子に危険が及ぶ事を恐れ、政治家として立つ気はない。
ジョンケ
バカリの息子
バカリとフランスのワインメーカー、ブラッサンズ家の娘、エロディとの間に出来た男の子。
現在、バカリはエロディと別れ、ジョンケと二人、マリで暮らしている。
アビディン
人気バンド「サヘル・ターマンデン」のリーダー
ドレッドヘアの黒人青年。
サヘル・ターマンデンは独立運動を起こした際、中核だったトゥアレグ人で結成されたバンド。
アビディンの話ではトゥアレグ人の大半は融和派が大半。
バカリの凱旋イベントに参加予定。
メリク・ベン・アミン
イスラム・マグリブ諸国のアルカイダ機構(AQIM)
そのAQIMから離脱した幹部が結成したテロ組織の中心人物。
穏健派のサヘル・ターマンデンと融和志向のバカリの協力で、穏健派の勢力が拡大する事を嫌っている。
エロディ・ブラッサンス
バカリの元妻
有名ワインメーカー、ブラッサンス家の娘。
親の七光りでファッションモデルやC級映画の主演を務める他、有名人相手の交友で世間を賑わす、おバカセレブ嬢。
フィリップ・ブラッサンス
エロディの父親
禿で口髭のおじさん。
ワイン事業の傍ら経済紙へ寄稿やテレビのコメンテータも務める、右派。
同性愛と移民を嫌悪している。
ユセフ
エロディが知り合ったタクシードライバー
アルジェリアからの移民三世で貧しい生活を送っている。
あらすじ
民族紛争の続くマリ共和国。
今回、八田への依頼は元プロサッカー選手で、フランスでも活躍したマリの英雄、バカリ・ケイタの政策補佐。
バカリの家族は現役時代、政治的発言も多かったバカリに政治家として立ってもらい、融和策によって国を立て直して貰いたいと考えていた。
その為の凱旋イベントも企画され、イベントではバカリのスピーチが大詰めとなっていた。
しかし、バカリは政治利用される事を嫌っていた。
さらに、政治家になる事で息子、ジョンケに危険が及ぶ事を危惧していた。
やる気のないバカリを八田は現役時代に浴びただろう声援を持ち出し、英雄を演じてみてはと説得。
イベントに参加予定の大物アーティスト、人気バンド「サヘル・ターマンデン」とも引き合わせる。
顔合わせは無事終わったものの、八田はバンドリーダーのアビディンの様子、そしてメンバーに知らない顔が混ざっていた事が気になっていた。
感想
今回はイギリスでの浮気調査から始まり、マリ共和国での元プロサッカー選手、バカリの政策補佐と過激派との対決、バカリの離婚交渉の為、フランスで元妻、エロディと接触等が描かれました。
その中でも今回は国という統治機構の、システム不全というテーマが印象に残りました。
どんなに考えられたシステムであっても、人が考えた以上、完璧な物はありません。
また、出来た時はよいシステムであっても、時代の変化によって様々な物が追加された結果歪んでしまう事もままある筈です。
更に、そこに人の意思や欲望が介入すれば、簡単に機能不全を起こす気がします。
国とはそこに生きる人が幸せに暮らす為、出来た物だと思います。
ですが、最近のニュース、暴力による国境線の変更等を見ていると、そう思えない事が横行しているように感じます。
作中、良い方向に向かい始めたマリ共和国。
現実もそうであって欲しいとエピソードを読んでいて感じました。
まとめ
今回のラストで描かれたフランスでの移民によるテロの現状。
八田はどんな方法で解決するのか。
次巻も楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。