違国日記 9 フィールコミックス
著:ヤマシタトモコ
出版社:祥伝社
朝(あさ)が高校二年の夏。
槙生(まきお)は小説に行き詰っていた。
彼女との生活も二年目を迎え、そんな状況にも朝は慣れ始めていた。
登場人物
三森(みもり)
軽音楽部の女子
ショートボブの背の高い女の子。
大学では音楽はやらないと決めている様だ。
望月(もちづき)
軽音楽部の男子
ツンツン頭のノリのいい男の子。
三森と付き合っている。
ルビー
槙生の小説番外編の主人公
そばかす金髪な少年。
木星彗星(きほし すいせい)
槙生の友人の小説家
眼鏡でくせ毛の男性。
SNSの投稿の可愛さから女性だと思われている。
あらすじ
「何も思いつかなくて」
そう言った槙生に朝は「また――!?」と呆れた。
ぼんやりとしゃがみ込み、手から零れ溢れる言葉を見つめる叔母の姿に、朝は笠町(かさまち)に対処法を尋ねるが、帰って来た答えはわからん、だった。
笠町もスランプ時の槙生の対処は怖くて避けていたらしい。
こわい……こわい?
こわいかな? 今はちがうかも なんだろ?
ていうか、めんどくさいな。
クラスメイトの会話。
頭のいいグループに苦手意識を持ちつつ、近づき嫌われる事を恐れる人。
そんな会話を思い出した朝の脳裏に砂漠のオアシスにいる槙生を、遠く森から双眼鏡で覗く笠町の姿が浮かぶ。
触れられず、遠くからただ見守るだけ。
さみしくない?
そんな事を考えつつ、夕食の準備をしていた朝に気付き、槙生はよろつきながら「やります」とキッチンに歩み寄った。
朝は作れるようになりたいし、槙生ちゃん、なんかあれじゃんとスランプ中の槙生を気遣う。
「……わたし、あなたに自立を…………成長を……強要してない?」
「それは……トラックがぶつかってきたとき……された、から……いい……いいっていうか……いいよ」
朝の頭の中、砂漠で遠吠えを上げる自分の姿が浮かぶ。
遠吠えは槙生のいるオアシスにも届き、笠町のいる森にも木霊した。
朝の言葉に、槙生は彼女が自分が知らない間に大人になっている事に気付いた。
感想
今回はスランプ中の槙生と大人になった朝から始まり、好かれたいより嫌われたくない、才能とやめる人、やめない人、軽音と三森と続ける事、書けない槙生と何処にも行けないルビー、槙生が小説を書く理由等が描かれました。
今回はその中でも才能の話と小説を書く理由が印象に残りました。
才能のお話では、大学では音楽を止めると言った三森と、やめる人とやめない人の違い等が槙生の言葉で語られました。
槙生は自分の才能はやめられない事だと朝に語りました。
自分よりも面白いものを書く人にやめる理由が訪れて、自分にはないのかを、彼女は才能と思う事にした。
逃げられない。そう言った槙生の言葉で、水木しげる先生が言っていたやらずにはいられない事をやりなさいという言葉を思い出しました。
もう一つの小説を書く理由。
槙生の場合は戦いたかったからのようでした。
彼女は魔法使い、竜、剣と魔法、そして誰かが誰かの為に勇気を振りじぼって戦う事が大好きだったみたいです。
好きでしょうがないもの、書かずにいられないもの。
続ける事。
そんな事をエピソードを読んでいて考えました。
まとめ
今回は槙生との暮らしにも慣れ、彼女との距離感を理解した様子の朝の成長? というか思考の変化を読んでいて感じました。
全ての道筋を示していた朝の母、実里(みのり)、彼女とは真逆に自分で考え自分で進む道を選ばせる槙生。
砂漠での遠吠えは、孤独に愛される槙生に適度な距離で繋がりたい朝のアプローチなのかなと思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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