ダーウィン事変 4 アフタヌーンKC
作:うめざわしゅん
出版社:講談社
人とチンパンジーの間に生まれた交雑種(ハイブリッド)。
HUMANZEE(ヒューマンジー)のチャーリー。
彼の友人ルーシーがヴィーガンの過激派組織ANIMAL LIBERATION ALLIANCE(動物解放同盟:ALA)の幹部、ファイヤアーベント達に誘拐され、チャーリーは彼女を救うため武装したレスリー率いるALA達を無力化しファイヤアーベントと対面、彼から遺伝子上の父親であるデイヴィッド・グロスマン博士について聞かされる。
ただ、ファイヤアーベントの目的は別にあり、それはチャーリーの現在の保護者であるギルバートとハンナからチャーリーを引き離す事だった。
ファイヤアーベントの真意に気付いたルーシーの言葉で、チャーリーは現場に現れた保安官補のフィルにルーシーを任せ、家へと急いだ。
チャーリーが戻った時、家は炎に包まれていた。
チャーリーは躊躇なく燃え盛る家の中に飛び込み、ギルバートとハンナを担ぎ出した。
捜査を担当するだろうFBI捜査官にチャーリーはよく調べてと言う。
二人は火が回る前に死んでた。
登場人物
グレイス
保安官補フィルの奥さん
赤毛ボブの快活な女性。
法律上、物扱いなチャーリーを守る為、フィルは彼を家に迎え入れる事を決め、彼女もそれに賛成する。
ロニー
フィルの同僚
髯テンガロンおじさん。
チャーリーを保護し停職処分となったフィルの身を案じる。
ジハン
チャーリーがスーパーマーケットで出会った少年
ANARCHY BOYZ(アナーキーボーイズ)というチームに所属している。
幼い為かチャーリーの事は知らない模様。
あらすじ
保護者であり養父母だったギルバートとハンナの死後、チャーリーは姿を消していた。
司法解剖では二人は確かにチャーリーが言った様に、鋭利な刃物で殺されていた。
その手際は鮮やかで、放火で捕まった周辺住民の仕業とは考えられなかった。
FBIはALAの犯行だと考えたが、逃亡したファイヤアーベントの他、捕らえたレスリーとその部下にはチャーリーと交戦していた為、アリバイがある。
逃亡したファイヤアーベント、チャーリー共に行方は知れず、民間団体と篤志家が「ヒューマンジー捕獲」に懸賞金をかけた事で街には懸賞金目的の人間が多く入り込む事になった。
チャーリーと接触する可能性の高いルーシーには監視が付けられてはいたが、彼女にもチャーリーが今、どこにいるのか分からなかった。
そんなある日、保安官補のフィルが密かに監視の刑事二人をルーシーから引き離す。
その後、そんな事があったとは知らないルーシーは、学校の敷地内に作られた森の中のベンチへと向かった。
ベンチで一人、行方の分からないチャーリーの事を考えていると、不意にチャーリーの気配を感じた。
ルーシーは姿の見えないチャーリーに語り掛ける。
「いるなら聞いて。ハンナとバートは……私がもっと早く気づけていたら……違うっ。二人は……二人はきみを愛してた……心から……」
二人を想い、ルーシーは涙を零しながら一人言葉を紡ぐ。
「知ってる」
事件以来姿を消していたチャーリーは、そう言って木の影から姿を見せた。
感想
今回は放火とは別の犯人によって殺害された、チャーリーの養父母、ギルバートとハンナの葬儀から始まり、チャーリーの法律上の扱い、保安官補フィルの提案、思春期を迎え体が成長し更に強くなったチャーリー、ルーシーの秘密、スーパーマーケットとチャーリー、ALAによる人を家畜に見立てた残忍なテロ、チャーリーの生物学上の母親、エヴァの死等が描かれました。
今回はその中でもスーパーマーケットでの一幕が印象に残りました。
ルーシー、フィルの妻グレイスとスーパーマーケットを訪れたチャーリー。
チャーリーを連れて来たルーシーとグレイスに店長はペットお断りだと、チャーリーを店から出す様に促しますが、グレイスはヒューマンジーお断りの張り紙を見落としていたかしらと、ジョークで受け流します。
一方でチャーリーはマーケットを訪れていた少年、ジハンと知り合い……。
ジハンの兄カイはALAと繋がりのあるチャーリーに怯え、それを見た一部の人間の扇動により、チャーリーは店から出て行けと責め立てられました。
そんな中、ジハンの兄カイは手にしたライトセーバー(プラ製)でチャーリーに殴りかかります。
ルーシーは過去にチャーリーが起こした事件(プールでのいじめからの反撃)を思い出し、肝を冷やしますがチャーリーはカイの一撃(効果音はポコ)を受け、危害は加えたりしない、友達になろうと手を差し出しました。
その手を握ったのはカイでは無くジハンでした。
「いい宇宙人もいるよ、兄ちゃん。ミスター・スポックとか」
そんなジハンの言葉で、客達に笑いが起き、店員のシーモアが気転を効かせ声を上げます。
「OK、ここまで! みんな解散だ! ここはスーパーだ。買い物を楽しんだら駐車券をもらって家に帰る。それさえ守りゃ、この店は誰だろうと差別はしねぇ ですよね店長?」
店長も場の雰囲気に圧され渋々それを認め、集まっていた客は去って行きました。
ルーシーとグレイスはもとより、ジハンやシモーヌ等、チャーリーが違う事で差別しない人間もいる。
前巻でギルバートがフィルに語った人間に絶望していないという言葉。
百人の人間がいれば、少数でもチャーリーを受け入れる人間は必ずいる。
ギルバートはそれを信じていたのではないかな。
エピソードを読んでいてそんな事を思いました。
まとめ
更に凶悪なテロを起こすALA。
そしてギルバートとハンナを殺害した犯人。
やった事の代償は支払わせる、作中そう言っていたチャーリーは犯人にどんな対価を求めるのか。
次回も楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読み頂けます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。